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遊星迎撃隊―Starship Breakers 【リメイク版】  作者: 暗黒星雲
第三章 英雄の魂
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第25話 世界信仰協会

「WFA。世界信仰協会と名乗っていますが宗教ではありません」

「そうだったな。紀里香もそう言っていた」

「分類するならカルト思想です。広義にはカルト宗教も含みますが、これをカルトとは言え宗教と同列に論ずるのは気が引けます。宗教とは切り離して考えるべきだと思います。思想があまりにも独善的で醜いからです」


 由紀子さんは淡々と説明してくれた。


 元々は先進国で生まれた反科学的な思想であった。平面地球や天動説など、過去においていくつか存在した思想が元になっているらしい。伝統的と言えば聞こえはいいが、事実を捻じ曲げ独善的な科学理論を振りかざす。そして反体制的な活動をする。そしてその根底には、貧困層の苦悩があるのだと言う。

 宇宙開発をするよりは貧困層の解消を成すべきだ。高額の予算を必要とする系外惑星探査計画などもってのほか。小惑星破壊作戦も同様なのだという。座していれば共に滅びるのだが、まずその事実を認めない。そして、仮に滅びるとしてもその運命を受け入れるのだという。いや、彼らの思想からすればその滅びすら世界の幻影に過ぎない。


 その幻影とは何か?

 諸法無我の思想だという。


 全てのものは実体性がないという古の仏教思想である。彼らは仏教系の思想集団なのか?


 そうではなかった。

 仏教では固く殺生を禁じている。


 ならばそれは何か?


「結局は世界を滅ぼしたいという思想だと思うのです。アセンションで次元昇華できるから現世は滅びても良い。そう理由づけています。他から見れば自殺願望となります」

「理解できんな。いや、魂という永遠の生命を信じているのか?」

「そう受け取れますが、そもそも霊体、魂の存在も認めていないのですよ」

「ますます理解できん。この肉体生命が丸ごと霊界に昇華するみたいな思想なのか?」

「そうですね。他にも不可解なことがあります。この宇宙すら影だと信じています。自分たちが望まない世界に対して、その世界の方が間違っていると結論付けたのですよ。更にその認識を拡大して宇宙の構造すら否定しています。宇宙の中心はここ地球であり、全ては幻影であると。天動説の新しい解釈かもしれません。それによれば、地球と小惑星の衝突すら幻影なのですから」

「困った奴らだな。犯罪組織より性質が悪い」

「そう。お金では動かないのです。狂信者を理解するのは難しい。しかし、その思考パターンは案外読みやすいのですよ」

「つまり、英雄を殺すのか?」

「21回目のジンクスってありましたよね」

「ああ」

「それ、WFAの仕業だと思います」

「今まで起こった事故はWFAが仕組んでいたと?」

「はい。そうです」

「それで今回は、生き残った秋山を殺す……と」

「それで21回目のジンクスは続くのです」


 なんてこった。

 秋山の殺害がこんな意味を持っていたとは。


「大体ご理解いただけましたか?」

「ああ、分かったよ。危険だって事はよく分かった。とても容認できんな」

「そうです。思想信条は自由ですが、これを認める事はできません。本来はその本拠地を叩くべきなのですが、私達には不可能です。迫り来る脅威を排除するしかありません。私は情報と戦術を提供できますが戦うことはできません」

「狂信者が相手。しかも自爆テロも辞さない訳だ。これは心してかからないとな」

「はい。危険だと思います。しかし、頼れる方は大尉だけなのです。お願いします」

「分かった。任せろ」

「ありがとうございます」


 正に無理難題。しかし、やるしかないだろう。


「ところで大尉殿」

「ん。どうした」

「一つだけ疑問点があるのですよ。WFAは、いわゆる暗殺という手段を用いないことなのです。大規模なテロ攻撃を好みます」

「そういえばそうだな」

「時限爆弾なども好みません。この傾向の分析は出来ていないのですが、一応注意しておいてください。兄さまの身の回りは私が受け持ちます」


 本当にしっかりした高校三年生だ。警察などの専門家にも劣らない思考をする。

 俺達は階段を降り秋山の病室へ向かう。ノックして中に入ると、何と、玲香があーんして秋山にカットした梨を食べさせてもらっていた! 


「おまえ、病人に何させてるんだ。この馬鹿者!」


 シャリシャリと梨をかじりながらニヤニヤしている玲香だった。梨をゴクンと飲みこんで話し始める。


「あ、大尉殿。美少女様とのデートはいかがでしたか? ボクは此処でイケメン様との逢瀬を……」


 ゴツン。


 また拳骨を食らわせた。このお馬鹿な部下には手を焼く。


「痛いじゃないですか。ボク、何か悪い事しましたか?」

「逢瀬とか、デートとか言ってるうちは馬鹿者だ」

「ボクだって遊んでばかりじゃないです。怪しいの3人見つけましたから」

「本当か?」

「本当ですよ。あ、秋山さんの前でしゃべっちゃった。今の聞かなかったことにして……」

「ええ大丈夫ですよ。兄には私から言っておきます。玲香さんは気になさらないで、ご自身の任務を全うしてください」

「了解です。じゃあ、今ここで話した方が良いですか?」

「そうですね」


 玲香と由紀子さんは秋山に聞こえないように小声で話している。蚊帳の外になっている秋山は呆然としていたが、何やら納得したようだ。


「そうだったんですね。この情報の信頼度は?」

「100パーセント! と言いたいところですが、心に闇を持っている人をかぎ分けているだけなので、それが本当にテロリストなのかどうかは尋問しないと分かりません。それと、高度に訓練された人なら、そういうマイナスのオーラを出さないで潜伏できると思いますからね。ただし、今日見つけたのは自爆テロをやりたくてウズウズしてる心境のヤツです。それだけは確実ですよ」

「なるほど、ありがとうございます。参考にさせていただきます」

「じゃあ、俺達はこれで戻るよ」

「斉藤大尉。ありがとうございます。何やら巻き込んでしまったようですね」

「気にしない気にしない。イケメン様はボクが責任もって守りますから!」

「喋るなと言っただろ」

「もうバレてるって」

「ええ、そうですね」


 秋山も頷く。まあ、普通は気付くだろうな。

 オレ達は病室を出て玄関へと向かった。

 

 そこで待っていたのは、パワードスーツ部隊の指揮官であるアンジェラ・ニコル中尉だった。


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