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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
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6 推しのHP作成は難しい

 あいみんが出てきたこと自体、かなりファンタジーなのに・・・。

 HPはあいみん自身で作成するとか、いきなり現実的なんだな。


 画面の向こうの世界で作ったんだろうか。

 あいみんの話し方から察すると、こちらの世界で作っていそうだけどな。

 パソコンの前で頭を抱えながら作っているあいみんの様子が浮かんできた。


 それはそれで、見てみたい気もするんだけど・・・。

 動画でほしい。


 次こそは、ちゃんと落ち着いて聞いてみよう。

 一番肝心な、なぜパソコンの中と現実世界を行き来できているのかということが全く聞けていない。





 講義が始まる10分前から、頭を悩ませていた。

 あいみんのHP作成のことだ。


 うーん。


 あいみんにはHP作るっていったものの、HP作成って難しいんだな。知識というよりセンスだ。


 まず、おそらくだけど、一番間違っているのはスタイルシートという拡張子cssの部分だ。

 このせいで、謎の白い部分ができたりしているっぽい。


 ふと、同じみらーじゅプロジェクトのVtuber神楽耶りこのHPはどうなっているんだろう、と気になった。

 検索して、公式WEBサイトを開いてみる。


 ロード画面から、興味を引くようなアイコンが出てきた。

 ものすごい差だ。


 神楽耶りこが動いていて、ツイッターなどの情報は右側、新着情報は左下に寄せられていてとても見やすい。

 初見でも、神楽耶りこの良さがわかるようになっていた。


 これが、神楽耶りこか・・・。

 長い黒髪を後ろにやって、腕を組んでいた。

 数秒に1回しかない笑顔が魅力的だった。


 胸はあいみんよりもないけど、ちょっとミステリアスで、女子人気だというのも頷ける。


「あれ? 神楽耶りこのHP・・・」

「あ・・・これは」


 慌てて顔を上げると、この前の女子がリュックを背負って見ていた。

 メガネをくいっと持ち上げる。


「あ、この前の・・・神楽耶りこに興味を持ちましたか?」

「えっと・・そうですね。このVtuberいいなって思って」

「ですよね! りこたん最高ですよね。嬉しいです」

「!」

 隣の席に座って、パソコンを起動していた。

 リュックからルーズリーフと教科書を出す。


 ルーズリーフにみらーじゅプロジェクトのロゴと、りこたんの鍵マークが付いたステッカーが貼ってあった。

 ボールペンにもシールが貼られている。 


 堂々と自分の趣味を晒せるなんて・・・。

 かなり、羨ましいと思っていた。

 俺は、まだ勇気がないな。大学入ったばかりで、周囲の様子とか探りながらだし。


「りこたんの配信もぜひ見てみてください。知的で頭脳明晰なのに、どこか抜けてて魅力的なんですよ」

「・・・・・・」

「あ、今も、りこたんの音楽聞きながら来ました。推しは健康にいいってやつです」


 イヤホンを外して、リュックに入れる。


「そうだ。この前、名前聞きそびれてしまいまして。お名前なんて言うんですか?」

「あぁ、磯崎悟です」

「磯崎君ですね。私、結城みいなって言います」


「結城みいな・・・・・さん」

「はい」


 みいな、という名前に、思いっきり反応してしまった。


「みいなって、最近結婚したアイドルの佐倉みいなと同じ平仮名なんですよ。自分の名前、今はちょっとだけ苦手になってしまって」

 手が急に汗ばんでいた。


「・・・へ、へぇ、そうなんですね・・・・・・」

「私もツイッターアカウントあるんですけど、Vtuber推しのフォロワーの中に佐倉みいな推しからりこたん推しになった人とかいて・・・。ほら、2次元推しって3次元推しのショックから来ることもあるじゃないですか」

「あー、そうなんですかー・・・」


「だから、ツイッターアカウントの名前変えたんです。完全に自己満足なんですけど、りこたん推しアカウントは平和でいたいっていうか・・・。りこたんに本名呼んでもらえないのは辛いけど、りこたんのためって思って」

「・・・・・・」

 的確に抉ってきたけど、なんとか耐えた。



 俺じゃん。

 俺のフォロワーの中に、結城さんいるんじゃね?



 そっと画面を閉じると、結城さんがHTMLのソースを開いていた。


「あれ? 結城さんもHPとか作ってるんですか?」

「ちょっと、勉強がてらってエンジニアの兄に聞いたりして・・・やっぱり、何も知らないまま授業を受けるのは不安で、勉強しようと思って」


「真面目ですね」

「そんなことないですよ。私、推薦で入ってきたんですけど、元々基礎知識がないから・・・単位落としたらどうしようって思ってます。この学校、単位取れなくて留年してる人も聞きますし、何といっても夢のために頑張らないと」

 真剣な表情で画面を眺めている。


「いつか、りこたんに認識してもらえるように」

「・・・・・・・」

 わかる。

 推しに認識されるって嬉しいよな。



「あの、俺も、HPとか修正したりしなきゃいけないんですけど、いざ作ろうとしたら色々わからなくて・・・。最初ってどうしてましたか?」

「ベースはあるんですか?」


 急に真面目になった。


「あるんですけど・・・ベースが使えないっていうか・・・・」

「そうなんですね、珍しいですね。ベースちゃんとしていたら修正も楽なんですけどね」


 ベースをなかったものにしたいんだよな。


「HP作るツールとかもあるんですけど、私は他HPで書き方とか試しながら作ってます。一つ反映して確認するってのを繰り返します。あと、わからない部分はGoogleで検索するとすぐに出てきますよ」


「なるほど」


 確かに、公開している他HPのソースから動きを見て調べながらやったほうが効率的だな。

 java scriptを呼ぶ方法とか、教科書読んでもさっぱりわからなかったし。


 まず、わかることを一つずつ作っていかなきゃな。

  あいみんの喜ぶ顔が見たい。頑張ろうと思う。


「ありがとうございます。そうですよね。参考になりました」

「いえいえ、役に立ててよかったです」


 すごい有益な情報だった。

 Vtuberの推し仲間って重要だな。



「俺、実は最近、浅水あいみにはまってるんですよ。よかったら・・・」

 結城さんがぴくっと反応した。


「浅水あいみってみらーじゅプロジェクトのVtuberですか?」

「もちろん。可愛いなって思っ・・・」


 突然、手を止めてこちらを向いてきた。急に様子が変わった。


「りこたんよりも人気のVtuberですよね?」

「そうだったかな」

「あいみん推しとりこたん推しは仲が悪いって言いますよね」

 マジで? 初耳なんだけど。

 確かに俺のフォロワーにりこたん推しがいない気がする。


「でも、うちらは仲良くしましょうね。私はりこたん単推しですけど、りこたんはファン同士が争うとか望まないと思うんで」

「え・・・あぁ、うん・・・・」

「そういえば、あいみんってどこか佐倉みいなに似ていますね? 雰囲気とか」

「いや、全然似てないと思うけど。ど・・・どうだろ。はは・・・」

 ひきつったような笑みを浮かべた後、すぐに課題のEXCELを開いていた。

 そんなこと、思ったこともなかったんだけど。 

 似てるか・・・・・。

 いや、あいみんはあいみんだろ。

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