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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
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62 配信お疲れ飲み会

「うぅっ、なんか緊張してきた」

 結城さんがアパートの前でぶるっとした。

 18時55分、あいみんたちとの約束の時間まであと少しだ。


「結城さんが緊張すると、俺まで緊張してくるんだけど」

「磯崎君はいつも行ってるじゃん」

「そうだけど・・・」

 あいみんの家で配信の打ち上げをすることになっていた。

 結城さんが珍しく化粧したり、服装もりこたんが着ているようなワンピースを着て、気合が入っていた。

 飲み会って、そんなに気合い入れることなのか?

 考えてみれば、こうゆうの初めてなんだよな。


高校のときも、塾で合格お祝いパーティーはあったみたいだけど行かなかったし。




「いらっしゃーい。あ、結城さん可愛いね。今日はコンタクト?」

「うん・・・」

「似合ってる、似合ってる。アイシャドウもすごく可愛い」

「あ、ありがとう」

 りこたんが迎えてくれると、結城さんがいきなり照れていた。


「おじゃまします」

「さとるくんと結城さん、適当に座って」


 あいみんとゆいちゃがにこにこしながら並んでいる。

 大皿にパスタと、サラダ、スペアリブがあった。


「すごい」

「のんのんの作るおつまみ美味しいの」

「あいみ、つまみ食いしちゃ駄目だからね」

「はーい」

 もぐもぐしながら返事をしていた。

 のんのんが冷蔵庫からアルコール類の缶とペットボトルのお茶を出してくる。


「さとるくんと、結城さんと、ゆいはこっちね。ノンアルだから」

「ありがとう」

 てきぱきと動いて、ふぅっと横に座ってきた。

 のんのんは本当にいい奥さんになりそうだよな。


「今日はナツも来たがってたんですけどね、無理やり止めたんです。のんのんの手料理食べたいって言ってましたよ」

「あいつにわざわざ言ったの? いいのに、面倒なんだから」

「そんなこと言ったら、ナツ、泣いちゃいますよ」

「泣かせておけばいいのよ。何度断っても、懲りないんだから。それより・・・」

 のんのんが隣に腰を下ろして、くっついてくる。


「私はさとるくんの隣。もし酔ったら介抱してね」

 にこっと上目遣いをしてくる。


「私も、私も、さとるくんの隣っ」

 あいみんがお酒と皿を持って、左隣に座ってきた。

 小さな口をきゅっとして、のんのんを睨んでいる。


「あいみは酒癖悪いんだから、駄目よ。さとるくんに迷惑かかっちゃうじゃない」

「お酒強いから、のんのんみたいに潰れたりしないもん」

「まぁまぁ」

 りこたんが止めに入ると、結城さんがくすっと笑ってた。

 結城さん、『VDPプロジェクト』のこの雰囲気が楽しいって言ってたな。



「では、6時間配信お疲れ様のカンパーイ」

「かんぱい」

 あいみんが声をかけ声で乾杯してから、ノンアルコールビールを飲んでみる。

 全然、美味しくない・・・。

 みんなこれが美味しいって言ってるのか? よくわからないな。


「ふはぁ、美味しいね。久々のアルコール」

「ずっと禁酒してたもんね」

「飲みすぎには注意しないと」

 お酒を飲んでると、急に3人が年上に見えてくるな。

 いつもは同い年って感じなのに。



「このドレッシング美味しい。市販の?」

 結城さんがサラダを食べながら聞いていた。


「私の手作り。いいレシピ見つけちゃって、それからずっと手作りしてるの」

「へぇ、すごいね」

「アンチョビペーストを入れたから、ちょっと変わってるでしょ? 気に入ってるの」

 のんのんが得意げに話していた。


「デザートは私がプリン作ったから、食べて行ってね。お腹いっぱいだったら、持って帰って」

「りこたんが・・・?」

「ふふ、のんのんには負けるけど、私も一通りはできるのよ」

 りこたんが両手で缶を置いた。


「料理か・・・私もやっぱりできるようにならないとな」

「結城さん、大丈夫です。私は料理も勉強もできません」

「そこ自慢できないでしょ?」

「へへへ、そうでした。食べる専門なので」

 ゆいちゃがスペアリブを切って、かぶりついていた。



「それにしても、配信の反響すごかったね」

「そうそう。ロゴの人気投票もぐぐっと母数が上がっちゃって」

「AIロボットくんたちがてんやわんやなんですよ」

 ゆいちゃが口を拭きながら話す。


「そっか、ロゴは今のところ誰のになりそうなんだ?」

「僅差過ぎてわからないのよ」

「ロゴを書いた人の名前は伏せてるのにね。このロゴは誰が書いたって予想するスレッドまで立ってるのよ」

 のんのんが皿にトマトソースパスタをとりわけていた。


「へぇ・・・チェックしてなかったな」

「私とのんのんのが予想と外れてるんだよ。面白いから見てみて」

「あいみと被ってると思われてるなんて意外だったわ。りこならわかるんだけど」


 掲示板は最近見ていなかった。

 中には『VDPプロジェクト』について、適当なことを言う人もいて、注目されている分、ネガティブな意見も書いてあるあるし・・・。

 あまり見たくないって思っちゃうんだよな。


「みんなエゴサするんだね。俺、最近見ないようにしてたよ」

「私も・・・いいものだけ見たいから、ツイッターとかコメントとかしか見てなくて」

 結城さんが続いて話す。


「あ、私たち、閲覧情報をAIロボットくんにフィルターかけてもらってるんだよ」

「え?」

「『VDPプロジェクト』についての、ネガティブな意見は完全シャットアウトしてもらってるの」

 あいみんが自慢げに話していた。


「すごいね・・・」

 結城さんと顔を見合わせた。


「あぁ・・・AIロボットくん・・・何から何まで、すごすぎるな」

「最近、取り入れてもらったんだけどね。ネガティブな意見って、精神的に落ち込んじゃうから」

 りこたんが少し赤くなった頬を触っていた。


「みらーじゅ都市はAIロボットくんによって、いつも平和なの」

「あいみ、ほら、こぼれてるから」

「嘘? あ、ホントだ。ありがと、のんのん」

 のんのんが腕を伸ばして、あいみんのテーブルを拭いていた。



「さとるくんには今日もう一つミッションがあるんだよね?」

 ギクッとする。

「え、何々?」

「バイト先の飲み会で先輩の恋を協力するように言われたんだって」

 あいみんが楽しそうに話す。


「それはなんだか楽しそうですね」

「さとるくん、そんな大役できるの?」

「だ、大丈夫だよ」

 女子って本当、コイバナになると食いつきがいいよな。

 チーズスティックを食べながら誤魔化す。


「私がその聞き出す先輩役やってあげるよ。自然に自然に聞いてきて」

「えっ・・・・」

 あいみんに好きな人がいるかどうかなんて・・・。

 演技でも聞きたくない。てか、いるって言われたら立ち直れないし。

 万が一XOXOのハルとか言われたら・・・いや、ハルなんて全然関係ないんだけど。


「ん? どうしたの?」

 くりっとした目で覗き込んでくる。


「いや、飲み会の雰囲気はわかったし、その場の空気で聞くから大丈夫。それより、せっかくなんだから、『VDPプロジェクト』の話しようよ」

「むぅ・・・・・」

 あいみんがぷくっと頬を膨らませる。


「そんなこと言って、さとるくん飲み会に行ったら酔っぱらって他の女の子に何するかわからないもん」

「俺、未成年で酒飲めないから・・・」

「そだった。じゃあ安心安心・・・」

 へらへらしながら、機嫌よく寄りかかってきた。

 ドキッとする。完全に、酔ってるな。


「あ・・・あいみん・・・?」

「あいみんさん、もう酔っぱらっちゃいましたね」

「早いわね。いつも、強かったのに」

「しばらく禁酒してたからじゃない? しょうがないわね」

 のんのんが慣れた手つきであいみんを引きずって、クッションを置いて寝かせる。


「まだ、起きてるぅ」

「ちょっと寝て、酔いを醒ましなさい」

「じゃあ・・・そうする」

 ふぅっと息をついて座りなおしていた。


「あいみんって酔っぱらうといつもこんな感じなの?」

「そう、機嫌よくなってすぐ寝ちゃうの」

 むにゃむにゃしながらくたーっとしていた。

 無防備すぎて・・・こんな推しの姿を近くで見れるなんて、幸せすぎる。


「今なら、あいみんのおっぱい揉み放題ですね。こんなに無防備で可愛いなら、襲っちゃいたいです。襲っちゃいます」


「!?」


 ゆいちゃが勢いよく立ち上がって、手を動かしていた。

「ゆいちゃ、さとるくんがいるから駄目よ」

「はっ、そうでした。止めておきます」

「・・・・・・・」

 触りたそうにしているのを、りこたんが止めていた。


 すとんと、その場に座る。

「わ、わ、話題を変えましょう」

「うん・・・えっと・・・」

 結城さんまで動揺して、俯いてしまった。

 普通そうゆう反応になるよな・・・。


 あいみんのおっぱい・・・って。

 4人って、警戒心が無くなると、いつもこんな感じなんだな。

 ノンアルコールカクテルを飲みながら、顔が熱くなりそうなのを必死に隠していた。

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