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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
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5 HPを作ったのは・・・。

 明日までの課題を終わらせて、パソコンの前に座っていた。


 あいみんの配信待機だ。


『みなさん、こんばんはー。浅水あいみことあいみんだよ』

 もこもこパジャマのあいみんが手を振ってきた。一挙一動が最高に可愛い。

『今日もたくさんの人が来てくれたーありがとう。嬉しいよ。このパジャマはね、この前のツイッターアンケートで一番順位が高かったんだ』


 似合う? と言って画面に顔を近づけてくる。


 やっぱり、いい。スクショして、フォルダに入れていく。


 スパチャがたくさん投げられて、名前を呼ばれていた。

 貧乏学生はグッズ購入に貢献するよ、と思いながらいつも見ている。


 どうして、こんな人気のVtuberの子のHPがダサかったんだろうな。

 ま、忘れたほうがいいな。


『わーパジャマってすごい人気だね。そそそんなにいい?』

 あいみんが照れながらチャット欄を覗いていた。


 あいみんが隣の家で配信を・・・。

 あれから、会うこともないし。夢だったような気がした。

 疲れていたしな。変な夢でも見ていたんだろう。


『今日はー、みなさんとーじゃじゃーん。人生ゲームをやるんで見てもらいたいと思います』


 一人で? と、チャット欄に総ツッコミが入る。

『アシスタントのAIロボットくんと対戦です』 

 背景だったと思っていたロボットが、急に動き出してあいみんの前に座っていた。


 あいみんの配信って、不意を突かれたりするんだよな。

 あ、背景じゃなかったのかよ、というコメントと共に、赤スパチャが投げられていた。

『あれ? AIロボットくん初めてだった? プー太郎さん』


 優しいよな。あいみん・・・。

 ナイスパとコメントを打っていく。


 AIロボットとコメント欄との掛け合いをしている間に、人生ゲームをほとんどやらずに配信時間終了間際になっていた。

『もうこんな時間。やっぱりタイムコントロール苦手だなー。ごめんね、ゲームほとんどできなかったよ。こんな私でも、またみんな来てね』


 頭を下げてから、手を振った。

 あいみんの配信慣れしてないところも、なんか可愛かった。コメント欄を読み上げてくれるから、遅くなっちゃったんだよな。


 配信時間が過ぎてもスパチャが投げられていた。チャット欄も止まらずに流れている。

 ふうっと一息ついて、お茶を飲む。


 推しを見てると、癒されるな。

 課題の疲れとか、授業への不安とか、吹っ飛ぶよ。




 さぁ、スクショの整理をしてから、風呂入って・・・。

「こんばんはー」


 茶を噴き出す。


「ごほっごほっ・・・・・」

 あいみんがコンビニの袋を振りながら入ってきた。


「配信見てくれた? あ、見てくれてたんだね」

「待って待って」

 むせながら、キッチンペーパーでテーブルを拭いていた。

 深呼吸をして、心を落ち着ける。


「え・・・・と、なんで家に入ってきてるの?」

 本当に聞きたいのはそこじゃないけど、質問が上手く出てこなかった。


「だって、鍵空いてたから」

「・・・・・・・」

 実家にいたときは田舎すぎてほとんど鍵かける習慣なんてなかったんだ。

 都会に住んでるからには直していかないとな。

「気を付けるよ」


 て、そうじゃなくて。


「え・・・えと、あいみん、その服は?」

「さっき配信で来てたものだよ」


 ここは俺の家。

 配信を見るまでは確かに課題もやっていたし、頭は正気だ。

 一応、パソコンで作成したEXCELの資料を確認してみる。


「何してるの?」

「・・・・・・」


 うん、俺は正気だ。

 家に何かを仕掛けられた可能性・・・も、無いな。

 出るときは鍵をかけていたし・・・。

 まさか、この安アパート全体が何か組織めいたものであるという可能性もゼロではないな。


 2次元の人間が出てくるはずないんだから。

 でも、どう考えても、今目の前にあいみんがいるし。

 配信の時と、同じパジャマを着ている。


「ねぇねぇ、聞いてる?」

 あいみんが後ろから覗き込んでくる。


「わっと・・・・」


「あれ? 何か難しそうなもの開いてる」

「え? これ? 学校の課題だよ」

 EXCELの課題シートを閉じた。


「なんかプログラミング関係の本がいっぱいだね。情報処理? あ、実は私もプログラミング? みたいなのが得意だったりするんだ」

「へぇ・・・そうなんだ」


 さすがVtuberだな。

 パソコンやインターネットに関する知識は、自分以上にあるに違いない。


 お茶に口を付けようとする。


「なんてったって、私、自分のHPも自分で作成したんだからね」

「ごほっごほ・・・・」


 もう一度、茶を噴きそうになった。


 まさか、あのダサいHPをあいみんが・・・・?

 いや、よく考えたらURLでなんとなく公式だと思っただけだし。

 思い込みしているのかもしれない。


「ん? さとるくん風邪か何か?」

「いやいや、全然。それよりもHPって、どんな?」

「ふふん。しょうがないな。パソコンいい?」

 キーボードを渡すと、URLを直接打ち込んでいた。

 完全に見覚えのあるものだ。


 超高速で『ようこそ』という文字が流れていった。

 ヤツだ。あの引くほどダサいHPだ。

 家のパソコンだと、若干左に寄っちゃってるし、右側の白い空白なんだよっていう・・・。


「なぜか、公式って作ってるのに検索上位に上がらないんだ。本当はツイッターにリンクも張りたかったんだけど、みらーじゅプロジェクトのみんなに止めたほうがいいって言われてー」

「・・・・・・・・」


 だろうな。わかるよ。


「見て見て、すごいでしょ。1から作っていったんだー」

「え、あ、うん・・・すごいね」


 ひきつりながら頷く。あいみんの声に反応しただけだった。


「だから、プログラミングのことなら、私に聞いてもいいよ」

「そうだー。じゃあ・・・・」


 推しのHPがダサいなんて我慢ならない。

 りこたん推しの女子が言っていたように、推しのために勉強することも必要だと思った。 


「俺にこのあいみんのHP作らせてほしいなって・・・」

「え?」

「あー、ほらこのHPを消すとかじゃなくて。俺も大学で勉強しなきゃいけないことがあって、もちろん、あいみん監修の元、HP作ってみたいなって」

「ふむ」

 息を呑む。返答がすごく長く感じられた。


「もちろん、いいよ。いつも応援してくれてるんだもん、私もさとるくんを応援するよ」

 両手を握りしめて頷いていた。


 あいみん、尊い。俺、頑張れる。


「じゃ、じゃあ、俺は勉強するから・・・この辺で家のほうに」

「わかった、頑張ってね」


 コンビニの袋を持ち直して、さくさくとドアを開けて帰っていった。

 やっと、落ち着いて呼吸ができる。

 さすがに、あいみんが近いと心臓に悪いな。


「・・・・・・・・」


 HPに映ったあいみんの静止画を見ながらため息を付く。


 授業もそうだけど、あいみんのために勉強、頑張らなきゃな。

 HTMLとPHPの本を開きながら、開発者ツールでソースを覗いていた。 

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