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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
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49 4人とまったり時間

 あいみんの家で『VDPプロジェクト』の4人とくつろいでいた。


「じゃあ、もう一回いくよ」

「うん・・・」

 あいみんがスマホで再生ボタンを押す。

『おはよう。琴美ちゃん、起きて。今日も一日頑張ろうね』

「・・・・・・・・」

 アイドルグループXOXOのハルの声・・・これは琴美も悶えるだろうな。


「どう?」

 あいみんが、確認のためと言って、2回くらい音声を流してくれていた。

 琴美についた嘘から頼んだものだった。こんなにクオリティの高いものを用意してくれるとは思わなかったな。


「ありがとう。かなり喜ぶと思うよ。ハルにもお礼を言っておいて」

「よかったー。伝えておくね」

 ハルとあいみんが話しているところを想像したくなかったが・・・。

 こればかりは仕方ない。


「じゃあ、XOXOのシークレットダウンロードサイトにパスワードかけて載せておくね」

 りこたんがパソコンを操作しながら言う。


「え、そんなのあるの?」

「セントバラ学園の勉強で載せるときに使ってるサイトがあるんだよ。それをシークレットって言ってるの」

 画面を切り替えながら、キーボードを打っていた。


「へぇ・・・・・」

「今パスワードをさとるくんのツイッターのDMに送っておくから」

「・・・ありがとう」

 こんなに本格的にやってくれるとは・・・。

 琴美、相当喜ぶだろうな。


「さとるくん、私の目覚ましボイスもほしい?」

「えっ?」

「ほしいんでしょう。わかってるんだから」

「・・・・・・」

 あいみんがにこにこしながら覗き込んでくる。

 そりゃ・・・ほしいけど。

 ほしいって言っていいのか・・?


 琴美に散々キモいだとか言われて、積極的になれないんだけど。


「あいみんさんいつもさとるくんのところ行ってるじゃないですか。わざわざ目覚ましボイスなんていらないですよ」

「それもそうだね。もし目覚ましが必要だったら、直接、起こしに行けばいいんだもんね」

 あいみんがゆいちゃの横のソファーに座っていた。


「さとるくんの家いつでも鍵が開いてますからね」

 ゆいちゃはゴリラの被り物を被って、足をぱたぱたさせている。


「あいみは寝坊ばかりするからダメよ。私が直接起こしに行ってあげる」

「のんのんっ・・・」

 のんのんが腕を絡めてくる。


「のんのん、随分大胆ですね」

「ピピー、のんのんさとるくんに近づきすぎ。離れて」

「だってさとるくんと会うの久しぶりなんだもん」

 あいみんが少し怒りながらゆいちゃのほうを向く。


「ごほん。ゆいちゃ、お願い」

「了解です」


「何よ?」

 ゆいちゃがのんのんの背後に回って、両手で腰をちょんと触った。


「きゃっ・・・・」

 のんのんがびくんとする。


「のんのんの弱点は腰と胸なのです。さとるくんの前だから、胸は遠慮しておきました」

「もう、ゆいちゃってば。誰からそんなこと聞いたの?」

「XOXOのナツですよ。配信でAIロボットくんが触っちゃったときの反応を何パターンか分析して、導き出した結論らしいです」


 知識の使う方向性がすごいな。

 ナツだけは気が合うような感じがする。


「あの変態ストーカー・・・ゆいちゃも、あんな奴の言うこと聞くなんて」

 のんのんがゆいちゃの被り物を取って、頬をつねっていた。

「あーそんなことしたら、またやっちゃいますよ。えい」

「あっ・・・・・もう、止めてってば」

 ゆいちゃがにへらーと笑っていた。

 のんのんの声がエロいんだけど・・・。


 絨毯に座って胡坐をかく。

 やるなら、あいみんにも・・・・って。


 俺、今推し目の前にして、すごく穢れた心を持ってしまった。


「さとるくん?」

「え・・・・?」

 あいみんがソファーからするっと降りてきて、隣に座る。


「ちゃんと、私たちのコラボ配信見てくれた?」

「あぁ・・・・もちろん。4人で将来について話すのも、ゆいちゃのダンスレッスンも、最後にみんなでいくつかボカロのカバーをうたったのもすごくよかったよ」

「やったー」

 あいみんが座ったまま体をぴょんぴょんさせる。

 AIロボットくんが2体、いろんな方向からライトをあてたりしていて、すごく濃い内容だった。

 1日前なのにもう再生回数が5万回になっていた。


「昨日、XOXOのライブに行ってきたから琴美がすぐ寝ちゃってさ。俺一人で見たんだけどね。琴美も見たいって言ってたから、また見るよ」

 XOXOのライブを見てから、俺への視線が柔らかくなった気がした。

 クッションとかあいみんグッズは見せられないけどな。


「本当? 歌もすごく練習したの。よかったでしょ?」

「うん。もちろん。すごくよかったよ。初見の人もファンになった人たくさんいると思う」

 みんなが照れながら嬉しそうにしていた。



「そっか、さとるくんXOXOのライブに行ってきたんだもんね」

 りこたんが髪を耳にかけていた。

「どうでしたか?」

「すごかったよ。みんなペンライト持って熱狂してたし。あれって、3Dホログラムで映してるんだろ? 琴美なんて、ハルと目が合ったって騒いでたよ」

 ペンライトを振らされて、腕が筋肉痛だった。


「『VDPプロジェクト』でも、あんなところでライブできるといいなって思ったよ」

「んー」

 あいみんが体をきゅっとして目を閉じていた。


「どうした?」

「さとるくんにそう思ってもらえて嬉しいなって」

 へへっと笑う。可愛い。周りに花が見える。


「私たちもライブしたいですね。まずはZEPP」

「でも、XOXOも全部が3Dホログラムじゃないと思うわ。ちょこちょこ本当に出てきて踊ってたんじゃないかしら」

 りこたんがパソコンの椅子を回しながら言う。


「え、そんなのできるの?」

「アキがそうゆう演出得意なのよ。実物見たわけじゃないからわからないけど」

「あー確かに、アキならそうゆうマニアックなことやりそうね」

「・・・・・・・・・」

 マジで、何から何までハイスペックな集団だな。


「でも、いいじゃない。私たちだってどんどん人気が出てきてるし、いつかXOXOの知名度を抜いちゃうかもしれないわ」

「うん。そうだよね。今日も練習頑張ろうね」

 のんのんの言葉に、ゆいちゃが嬉しそうに手を上げていた。




 突然、着信音が鳴り響く。琴美からだ。

「ごめん、琴美から電話。ちょっと・・・・」

「どぞどぞ」

 電話に出ると、電車のホームの音が聞こえた。


『もしもし、お兄ちゃん?』

「どうした?」

『私、あと1日長く泊まりたいんだけどいい?』

「・・・・・・・・・・・」

 咄嗟に何か嘘つこうと思ったけど・・・。

 出てこなかった。


「・・・いいよ。どうして?」

『舞花が仕事で東京に来てるんだって。あいみんのことを話したら、会ってみたいって言っててさ』

「は?」

 あいみんのほうを見る。首を傾げていた。


「いやいやいや、それは無理だって」

『でも、Vtuber目指してるんだもん。会えないかな?』

「今度、聞いてみるよ。でも、今回は無理」

 言い切る。あいみんにこれ以上、迷惑をかけられない。


『そっか。あいみんは人気Vtuberだから難しいよね。無理言ってごめん。じゃあ、お兄ちゃんにの家に連れてくるのはいいよね?』


 それは、俺が嫌だ。


「え? 外で遊んできたらいいじゃん」

『舞花はVtuberのこと聞きたいんだよ。私たちの周りでVtuberに詳しい子なんていないから、舞花も不安なんだよ。ほら、お兄ちゃんそうゆうの詳しいじゃん。Vtuber推しなんだから』

「・・・・・・・・・・」


 舞花ちゃんか・・・まぁ、部屋に来るくらいなら良しとするか。

 あいみんたちみたいに、夢に向かって頑張ってるんだもんな。


「・・・わかったよ・・・」

『ありがとう。じゃあ、そう言っておくから』

 ぷつん。すぐに切られた。


 肩を落とす。一日、あいみんのグッズや配信だけに囲まれた時間がほしい。

「どうしたの? さとるくん。元気がないね」

「・・・琴美が1日長く泊ってくことになったんだよ・・・」

「ん? 琴美ちゃん、あんなにいい子なのに、そんなに落ち込むこと?」

 あいみんが不思議そうな顔をしていた。


「えっと・・・まぁ・・・俺も勉強とかあるし・・・」

 言葉を濁す。


 Vtuberになろうとしている琴美の友達が家に来るって言ったら、あいみんは無理して来ちゃいそうだから黙っておこうと思った。

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