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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
33/183

32 ヤキモチはバレる?

『あ、お兄ちゃん、コラボカフェのグッズと画像ありがとう』

「うん・・・よかったよ」

 妹の琴美と電話で話していた。

 かなり上機嫌で会話するのは、もう何年ぶりだろうか。


『ツイッターに載せたら、ファボもたくさん貰えたよ。インスタも好評だった』

「へぇ・・・」

『どうだったの? コラボカフェってどんな感じ?』

「どんな? って画像の通りだよ。アクキーはランダムだったから、コラボカフェで交換してもらったんだけどな」

 マウスをクリックして、パソコンの画面を切り替えていく。


『え? 周りの人と話したりするの?』

「そうそう。俺は全然わからないけど、盛り上がってたよ」

『そうなの。いいな、私も次こそ行きたいな』


 あいみんの配信をチェックしながら話していた。

 いつもなら、舌打ちして電話を切るくせに、推しの情報だとなかなか切らせてくれない。


 早く切って、あいみんの配信に集中したいんだけど、仕方ない・・・。

『ねぇ、缶バッチも付いてたよね? これはどうしたの?』

「隣の人に貰ったんだよ」


『限定でほしかったの、ハル君とアキ君。やっぱりイベント行きたい』

「受験生だろ?」

『そうだけど・・・息抜きも必要なの、あ、あと・・・』

 ペットボトルの蓋を開ける。


 琴美が一方的にテンション高く話していた。

 聞いていると、ハルアキの腐女子になったってことで間違いなさそうだ。

 二人の仲がいいところとか、絵がいいところとか、声のハモりが綺麗なところとか、いらない情報を延々と聞かされた。


 俺があいみんの話をしたら、キモいの一言で終わりそうだけどな。


 あいみんの配信が終わった頃だ。

 約束通り、グッズをこっちに送り返してくれると約束して、やっと切ってくれた。


 受け取ったのは琴美らしく、弟にも両親にもバレていないと言っていた。

 借りらしいが、正直、そこまでやってくれるとは思わなかった。


 俺が家に居たときの琴美じゃ考えられないんだけど・・・・。

 これがイケメンアイドルグループXOXOの力なのか。





 バーン


 いきなり、家のドアが開く。


「じゃーん、久しぶりにあいみん登場」

「おじゃまします」

 あいみんとゆいちゃが入ってきた。

 ゆいちゃも珍しく、ゴリラの被り物を取っていた。


「あいみん、出れたんだ」

 嬉しさのあまり、思わず立ち上がってしまった。

 あいみんが勢いよく、こちらに駆け寄ってくる。


「やっと出れた、やっぱこっちの世界の空気は楽しいね。さとるくん、今日の配信は見てくれた?」

「え・・・と、今まで妹と電話してて・・・・」


「見てくれなかったの? でも・・・妹さんならしょうがないか・・・」

 あいみんが目の前にいる。


 やっぱり、近くで見るとものすごく可愛いな・・・。

 ちょっと、前髪に寝癖が付いていた。


 二人とも、配信用のもこもこ部屋着を着ている。 


「よかったですね、さとるくん。あいみさんが出てこれて」

 ゆいちゃがにやにやしながらこちらを見てくる。


「すごく心配してたんですよね?」

「ま・・・まぁ・・・」

 ペンを回す。


「でも、さとるくん、私の家に来たことあっ・・・・・」 

 あいみんが何か思い出したような顔をして、戸惑っていた。

 ふっと、あいみんの部屋での出来事を思い出す。


「違・・・あ、あれは誤解で」

「わかってる。わかってるってば」

 ゆいちゃに強引に引っ張られて、モニターからあいみんの部屋に入った時に、勢い余ってあいみんを押し倒してしまったことがあった。


 本当に、あれは事故だった。


「ん? どうしたんですか? 二人とも・・・・」

「な、何でもなくて・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「なんか気になるんですけどー」

 ゆいちゃが俺とあいみんを見ながら言う。

 もう、触れられたくない。


 えっと、何か他の話題を・・・。


「あっ、そういえばコラボカフェ行ってきたんだよ。XOXOの」

「XOXOってみらーじゅ都市にいる?」


「そうそう」

「ハル、ナツ、アキ、フユですか?」


「あぁ、妹がファンでね。さっきも、妹とその話をしてたんだよ」

「あはは、彼ら、ファンの子多いですもんね」

 あいみんとゆいちゃがなるほど、という顔をしていた。


「誰推しなんですか? 妹さん」

「ハルとアキって言ってたよ」


「あっハル君、ゲート管理者の」

「っ・・・・・」

 あいみんの口からハルの名前を聞くとダメージがでかい。

 自分から話を振っておきながら、墓穴を掘ってしまった。


「今回はなかなか開けてもらえず大変でしたね」

「うんうん、本当、困ったよ。りこたんが、強引に連絡してくれてよかった」


「そ・・・そうなんだ・・・・」

 あいみんがうんうんと頷きながらソファーに座る。

 コラボカフェでうんざりするほど流れていた・・・さわやかイケメンとイケメンボイスがあいみんの近くにあると思うだけで落ち込む。


 自分が傷つく話を振ってしまった。

 さらっと流して、話題を変えたい・・・。


「結城さんとも話してたんだけど、これが『VDPプロジェクト』のコラボカフェだったらいいねって・・・・」

「確かに。私たちもコラボカフェやりたいですね。のんのんとか料理上手ですし」

「ん? さとるくん、結城さんとコラボカフェに行ったの?」

 あいみんが眉をぴくっと動かして、前のめりになった。


「うん・・・まぁ・・・結城さんはXOXOのファンじゃないけど」

「二人きりで?」


「他に大学で友達いないし・・・」


「それはデートということじゃ、ありませんか?」

 ゆいちゃがぐぐっと迫ってきた。


「さとるくんデートしたのですね?」

「いや、デートとかそうゆうつもりじゃ・・・」

「デート? 行ったの? むぅ・・・さとるくん、私推しじゃないの?」

 あいみんが足を組んで膨れていた。


「推しも出られるようになった・・・でも誘ったのは結城さん・・・つまり、結城さんのほうが推しよりも大事ってことですね?」

「いやいや・・・・」

「どうなんですか? 私には関係ありませんがー?」

 ゆいちゃが畳みかけるように言ってきた。なんでゆいちゃまで怒ってるんだ?


「全然、そうゆうんじゃなくて」

「じゃあ、私を誘ってもよかったでしょ? XOXOなら私のほうが詳しいんだから」

 あいみんがむきになって言ってくる。


 ”詳しい”って言われたことで、HPが0に近い状態になっていた。


「・・・Vtuberが秋葉原とか出ると・・・知ってる人も多いと思うし、ほら、変な人もいるかもしれないから危ないじゃん」

「帽子とかメガネとか、変装するグッズはたくさんあるもん」

 ぷいっとそっぽを向かれてしまった。




「ん? でも、もしかして、あえて私たちに声をかけなかったってことですか?」

 ゆいちゃがぽんと思い出したような表情をした。


「どうゆうこと?」

「だから・・・ごしょごしょ・・・・・」

「ふむふむ・・・・」

 ゆいちゃがあいみんの耳元に近づいて、何かを話していた。

 あいみんの表情がどんどん緩んでいく。

 ちょっと、こっちを見てにやけてから、咳ばらいをした。


「なるほど・・・・・」

 何が?


「え?」

「まぁそうゆうことなら、しょうがないかな? うん。今回だけね」

「あ・・・何? 何の話を?」

 あいみんがちょっと目をそらしながら立ち上がる。


「私、りこたんの配信の準備あるから、じゃあね」

「あ、私も戻ります」

 あいみんが、先に出て行ってしまった。


 後ろから付いていこうとするゆいちゃを引き留める。


「ゆいちゃ、何て言ったんだ?」

「あ、それはですね」

 軽く参考書を跨いで、こちらに戻ってくる。


「XOXOのメンバーはかっこいいから、コラボカフェ行ったら、さとるくん、やきもち焼いちゃうからじゃないかな? って言ったんですよ」

 こそっと言ってくる。


「へ・・・?」

 顔が熱くなっていく。なんつー考えを。


「この場を切り抜けるために助け船だしたのに。本当に推しにやきもちですか? じゃあ私と行ってもよかったのに・・・」

 じと目で睨んでくる。


「え・・・・なんでゆいちゃと?」

「・・・さっきのは貸しですから」

「・・・・・・」

 すぐに玄関のほうへ出て行った。 

 ゆいちゃって、何考えてるかわからないというか、変なところ鋭いんだよな・・・年下なのに・・・。



 やきもちか。んなつもりなかったんだけど、無意識だった。

 推しを推すのも難しい。

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