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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
30/183

29 男性アイドルグループってなんだよ

「今日もあいみん出れないのか・・・」

「そうなの」

 あいみんの家でりこたんと話していた。

 いつもワイワイしてるのに、人がいないと殺風景な感じがするな。


「のんのんとゆいちゃは? いつも付いてくるのに珍しいな」

「ゆいちゃは勉強、点数やばいの。のんのんは私たちの新しい服を選んでる。『VDPプロジェクト』の動画でみんなで撮るときに、着ているものを合わせたいんだって」


「へぇ・・・」

「大丈夫、のんのんセンスいいから」

 少し派手目な服装になりそうだけど、紹介動画は目立ったほうがいいか。


「・・・・あいみんどうしてる?」

「ん? 昨日配信あったでしょ?」

「もちろん配信は変わらなかったけど。そうじゃなくて、オフのとき。ほら、この前、結城さんの家に行ったとき、一人だけ参加できなかったし、大丈夫かな? って」 

 さりげなく、様子を聞いてみる。


「あっ、別にこの前の公開告白が恥ずかしくて出てこれないわけじゃないから」

「告白じゃないって。からかうなよ」

「わかってるって、冗談よ」

 りこたんがふふっと笑ってた。

 結構、気にしてたんだよな。


 りこたんが言うなら、問題ないんだろう。


「どこと繋ごうとしてるの?」

 いつもと違う画面を開いて、IPアドレスを入力していた。


「ゲート管理者から全く返事がないからこっちから問い合わせるのよ」

「向こうの世界じゃなきゃできないの?」


「こっちの世界のほうが繋がりやすいの。向こうの人ってみんなこっちに興味を持ってるから」

「へぇ・・・そうゆうもんなんだ」


「これで・・・っと」


 Enterキーを押す。

 何個かログインとパスワード画面を抜けて、呼び出し画面になった。

 10秒くらいで画面が切り替わる。


 どこかの学園の情報管理室のような・・・・。



『はい、こちらゲート管理室』


「ハル、問い合わせた件、こうなってるの?」 


「・・・・・・・・!?」

 お、お、お、お、男!? ゲート管理者って男!?!?

 そこはAIロボットくんとかじゃないのかよ。


 学ランを着た男が出てきた。

 しかも茶髪で流し目のイケメン・・・・・マジか。

 恐れていたことが起こってしまった。



『あぁ、あいみちゃんが出られない件ね?』

「そう、どうなってるの?」


 あいみちゃん・・・・。今、あいみちゃんって呼んだ?

 どうして、そんなに馴れ馴れしいんだ。


『あ、そっちの人は?』

 さわやかな笑顔で話しかけられた。


「・・・・・さとるです」


『君がさとるくん、みらーじゅ都市に来たこともあるんだってね。今度、この学園内も案内してあげるよ』

「あ、ありがとうございます」


 しかも、なんか性格よさそうだし。

 こいつがあいみんと一緒の空間にいるのか?


 全く受け入れたくないんだが・・・・。


「私の話聞いてる?」

『わかってるって。あいみちゃんはゲートの通過時にロックがかかってるんだよ』


「どうして?」

『ほら、『VDPプロジェクト』ってやつ始めてから、急に閲覧数と動画登録者数が増えただろ? 不正を疑って、ゲートに自動ロックがかかったんだよ。もちろん、不正じゃないってわかってるから、すぐに戻すよ』


「そうだったの。よかった」


 りこたんが背もたれに寄りかかってほっとしていた。

 ハルが画面の向こうで、パソコンを操作していた。


『解除申請は明日通るから、ちゃんと通れるようになるのは明後日。よろしく』

「意外と遅いのね」


『休暇に入ってるんだよ』

 りこたんとも仲良さげに話してる。

 結城さんはともかく、啓介さんが見たら血の涙を流すやつだ。コレ。



『じゃ、俺はそろそろアキのところに行ってくるから』

「うん。なんかあったら問い合わせるわ」

 画面越しに手を振っていた。


『さとるくんも、こっち来るの待ってるよ』

「はぁ・・・・・・」


 きらりとした笑顔で言われた。

 しばらく固まっていると、りこたんが振り向いた。


「よかったね。あいみんこっち来れるって」

「あぁ・・・うん・・・」


「ん? どうしたの?」

 不思議そうにこちらを見上げた。

 少し、いろいろ考えてぼうっとしていた。


「その、みらーじゅ都市にも男っているんだね・・・?」

「そうね。私たちはほとんど会わないんだけど」


「会わないの?」

「まぁ、私は情報処理関連の作業したりしてるから会うことあるけど・・・・。彼ら、セントバラ学園・・・って男子校の生徒だし。寮も女子禁制の男子寮だし・・・・」


「そうなんだ・・・・・・」

 ほっとする反面、それはそれで可哀そうな気がした。


「アイドルグループXOXOとして、こっちの世界の女子から人気なのよ」

「アイドルなの?」


「知らない? 曲も出してるし、結構人気なんだけど」

 男性アイドルグループなんて興味ないし・・・。


「うーん、聞いたことなかった。みらーじゅプロジェクトの公式HPには彼らの情報載ってなかったけど・・・」

「非公式にしてあるの。日常が謎に包まれてる、が、コンセプトなのよ。だから、限定グッズも売り出せばすぐに完売しちゃうの」


 なるほど。

 女子にとっても、アイドルグループがあいみんみたいな可愛い子と一緒にいるなんて思いたくないよな。

 あいみんとイケメンのカップリン同人誌とか、存在するだけで傷つく。




 突然、LINEの電話が鳴り響いた。


 妹の琴美からだ。

 大分、珍しい。


「ごめん、妹から電話」

「どうぞ、気にしないで」

 スライドして、電話に出る。


「もしもし」

『もしもし、お兄ちゃん?』

「どうしたの?」


『なんかVtuberの浅水あいみのグッズが実家に届いてるんだけど・・・・・』

「え・・・・・・・」

 血の気が引いた。


 嘘だろ。

 Amizonの住所、ちゃんと変更したはずなのに。

 もしかして・・・チェックの入れ間違えか?


 実家に、あいみんグッズが届くとか恐ろしすぎるんだけど・・・。

 まさか開けたりしてないよな?


『マジで? 自分の兄が独り暮らしでバイトしてこんなの買ってるなんて引くわ』

「開けたのか・・・・・・?」

『そりゃ、そうでしょ。うちに届いた荷物だし。これはなかなかきてるね・・・』

 見下したように話す。


 終わった・・・・。

  啓介さん、俺、妹からゴミを見るような目で見られそうです。


 でも、普通だよ。結城さんとかから言わせると普通だよ。

 ただのクッションとタペストリーじゃないか。


『へぇ・・・佐倉みいなが結婚したから、Vtuberに走ったってことね。賢明な選択だと思うよ』


 鼻で笑っていた。

 誰がこんな意地悪い女子に育てたんだよ。俺の親だけどさ。


「話はそれだけかよ。親に正直に言ってこっちに送って・・・」

『私が送ってあげるよ』


「え?」

『その代わり、アイドルグループXOXOのアクキーとアクスタ、缶バッチ買ってきてくれない? ハル君とアキ君の。秋葉原のコラボカフェでしか販売されないの』

「は?」

 急に、甘えるような声を出してきた。


「アクキー? アクスタ? 缶バッチ?」

 聞き間違えかと思った。


『そう、だって東京にいるんだから行けるでしょ? 秋葉原』

「い・・・いいいいけど・・・何に使うの?」

『部屋に飾るの』

「そっか」


『よろしくね。限定なの、絶対買ってきて』

「・・・・・・・」

 ハルって、今、俺が話しいた奴だよな。 


 妹が、そんなものにはまるなんてあり得るのか?

 しかも、急に優しくなったし・・・。ちょっと、いろんなことが一気にきて頭が追い付かない。


『じゃあ、あとで地図送っておくから』

「あ、ちょ・・・」

 一方的にプツンと切られた。

 普段だったら面倒だし、断るんだけど・・・。

 あいみんグッズが人質になってるから買わないわけにはいかない。




「どうしたの? 大丈夫?」

「うん・・・ちょっと妹と取引があって・・・」


「取引? 妹さんと?」

「あぁ、別に大したことないんだけど」

 俺にとっては大事だけどな。

 りこたんに話しながら、リア充を満喫していた琴美がXOXOのハル君、アキ君? だか、にはまった事実を受け入れられずにいた。

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