22 みんなの反応は?
りこたんの手を借りつつ、無事、予定通りあいみんのHPを実装できた。
新しくなったあいみんのHPの時間ごとのアクセス数を見る。
ツイッターで宣伝してくれたのもあったからか、一気に伸びてきているな。
レッドブル飲み続けたけど、やってよかったと思えた。
まだ、1日目だけどな。
結城さんにツイッターのDMを送る。
『アクセス数かなり伸びてるよ。今のところ不具合もない』
『よかったね(*^-^*)』
結城さんは絵文字を使うことが多い。
配信の時間まで、あと3分。
右側のモニターの電源を点けて準備をしていた。
マウスパッドはあいみんから貰った、あいみんの絵柄の付いたものだ。
推しから、推しグッズを貰うっていうのも、変な話だけどさ。家宝にしようと思ってる。
『そろそろ、あいみんの配信始まるんじゃない? 準備してる?(^o^)v』
『もちろん、あとは待つだけだよ』
文字を打っていく。
すぐにハートのスタンプが付いた。
『浅水あいみこと、あいみんだよ。みんなこんばんは。来てくれてありがとう。今日はいつもとちょっと違う配信をするよー』
にこにこしながら両手を振っていた。
『今日から、私は20時から毎週月水金に配信するよ。りこたんは21時半から22時半まで、ゆいちゃは22時半から23時半までだよ。みんな要チェックね。覚えられない人は、私のツイッターアカウントに書いてあるからよろしく』
コメントを見ていると、HPリニューアルのことが書いてあった。
『あ、HP。そうなの、みんな、見てくれた? よくできてるでしょ。へへへ』
「・・・・・・・」
今日の配信は神回として、後でアーカイブを見よう。つか、もうHPの話が出たところでうるっときてしまった。
『コメントありがとう。そう、この発表は今日発表する重大ニュースに関係しているのです』
ピンクの頬を上げて言う。
だぼっとしたシャツの裾をいじっていた。
応援コメントとスパチャがたくさん投げられている。
『たろいもさん、のっじさん、ゆうさん、スパチャと応援ありがとう。期待してて、ビッグニュースだから』
チャット欄に、『あいみん頑張れ』と書く。
すぐに流れてしまったから、あいみんには見えていないだろうな。
『今日は重大、重大、重大なニュースがあるので、ゲストを呼んでいます』
水色で統一された部屋のドアがちょっと動いた。
『Vtuberの神楽耶りこ、こと、りこたんです』
『Vtuberの高坂ゆい、こと、ゆいちゃ・・・です』
ゴリラの被り物をしていた。
誰なんだ? あの子はというコメントで埋め尽くされていた。
『美少女に連行される美ゴリラ』ってコメントで噴き出しそうになった。たまに、コメントって職業じゃないかってくらい笑いのツボをついてくる人がいるんだよな。
コメントの中には、みらーじゅプロジェクトのメンバーだとリンクを貼って説明している人もいた。
『ごほん、私たちが、集まったのには理由があります』
あいみんがちょっともったいぶっていると、りこたんにツンツンされていた。
『くすぐったいなーもうっ・・・』
『あいみん、みんな待ってるから、早く』
『いざ、言うとなると上がっちゃって』
三人がじゃれあいながら、緊張しているのが伝わってきた。
コメント欄も少しざわついている。
あいみん頑張れ、とスパチャが投げられていた。
『本日からなんと、『みんなのVちゅーばー、異世界からピースを届けるプロジェクト』、略して『VDPプロジェクト』を始動します』
『いぇーい』
三人で右手を勢いよく上げた。
画面にクラッカーが鳴っていた。
『具体的には、私たち、武道館ライブを目指します』
りこたんがカメラに顔を近づけた。
まつ毛がくるんとしてて、じっと見つめられているようで、ドキッとした。
啓介さん、リアタイしてたらやばいだろうな。
『わーコメントいっぱい。みんな、ありがとう』
ゆいちゃがコメント欄を見ていて、びっくりしていた。
『ゆいちゃも、被り物取って』
『・・・・はい・・・』
ゴリラの被り物を取ると、コメント欄がさらに盛り上がった。ゆいちゃ、可愛いもんな。
ツイッターのハッシュタグ#VDPプロジェクト始動、でさっそくコメントが書かれていた。
スパチャもどんどん投げられている。
すごいな。さすが人気のVtuberだ。
トレンドに載るんじゃないかと期待していた。
三人のゲリラ配信が終わった後、しばらく余韻に浸っていた。
結城さんから連絡が来たけど、登録者が一気に1000人以上増えたらしい。
『磯崎君! (^^♪(#^.^#)(#^.^#)(#^.^#)(*^▽^*)!!!!!』
と書いてあって、ものすごい興奮しているのが伝わってきた。
結城さんのデータ分析が目に見えるのは、早くて2週間後と言っていたけど、純粋に嬉しいんだろうな。
ツイッターのコメントは止まらなかった。
最後にゆいちゃが歌った『脳漿炸裂ガール』が話題になっていた。
ドアのほうを見つめる。
もうそろそろ、あいみんが家にきてもいいはずなんだけどな。
今日だけはお酒飲むって言ってたから、お酒買ってきてるのかもしれない。
ピンポーン
チャイムが鳴る。
珍しいな、いつもだったら勝手に入ってくるのに。
「はーい」
ドアを開けるとりこたんが立っていた。
「お疲れ、さっきのよかったね。反響がもう・・・あれ? あいみんは?」
「あいみんがこっちに来れなくなっちゃって・・・・」
「え? どうゆうこと?」
「私は通れるんですけど、あいみんは弾かれちゃって。壁みたいなのに」
りこたんが焦りながらこちらを見上げていた。
「と・・・とりあえず、中へ」
「失礼します・・・」
靴をそろえながら、落ち着きがない様子だった。
「配信が終わったからこっちに来ようと思ったのに。なぜか、あいみんだけ来れなくて・・・」
「どうして?」
「全然わからないも。ちょっとパソコン借りてもいい?」
どうぞ、と椅子を明け渡すと、りこたんがすごい勢いで設定を追加してリモートをつないでいた。
画面いっぱいに、あいみんが映る。
「あいみん、聞こえる? あいみん」
『え? これ繋がってるのかな? おーい、聞こえないよー。さとるくん、りこたん、そこにいるの?』
「さとるくんの家から繋いでるよー」
『あれ? やっぱり聞こえない』
あいみんが不安そうに首を傾げていた。
「どうして? ちゃんと繋がってるはずなのに・・・」
「マイクがオンになって無いから聞こえないんだよ」
「そっか。ごめん、ちょっと焦っちゃって」
りこたんが慌てて、マイクをオンにした。
「あーあー聞こえる? あいみん」
『聞こえるよ。いつも行ってる場所から、そっちの世界に行こうとしてるんだけど、どうしても、行けないの。さとるくんに会ってからりこたんの配信行こうと思ったのに・・・』
「どうしたのかしら、急に・・・」
「一時的な接続不備とかじゃないの? パソコン再起動したら直るとか・・・」
「私もそう思うんだけど・・・・あ」
りこたんが時計を見て、立ち上がる。
「もうすぐ配信時間だから行かなきゃ」
「あぁ・・・うん」
「ごめんね、バタバタしちゃって。明日には元に戻ると思うから」
りこたんが髪を整えて、家を出て行った。
別に、今日、無理して来る必要なかった気がするんだけど・・・。
あまりの速さに呆然としていると、あいみんがへらへら笑っていた。
「笑い事じゃないって。あいみんが出れないんだから」
『へへ、さとるくん、私がそばにいないと寂しい?』
「そりゃ・・・・」
屈むようにして、画面を覗き込んでいた。
配信後の、あいみんを独り占めにするって・・・・変な感じだな。
『こっちから、さとるくんの顔は見れないんだけどね。さとるくんの声聞いたら安心した。じゃ、りこたんの配信のゲストだから行ってきます』
「え? あぁ・・・うん」
『ちゃんと、りこたんの配信もゆいちゃの配信も、私が出るんだから見なきゃだめだよ』
「もちろん」
『あとでね』
あいみんが満面の笑みで手を振ると、画面がバチっと切れた。
尊いな。
ここ2日の睡眠時間4時間だけど、一気に疲れが吹っ飛んだ。あいみんが来れないって非常事態なのに、さっきの笑顔で、なんかどうにかなる気がしてしまった。
今の動画撮っておけばよかったな。
キャプチャでもいいから欲しかった。




