表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
178/183

178 ツイキャス、ファンの集い

『磯崎君、連絡取れないから生きてるか心配で』

「年末年始はバイトで忙しくてさ。やっと落ち着いて、泥のように寝てたんだよ。気持ち的にはどん底だけどね」

 ななほしⅥのカウントダウンライブ、正月特番が終わって1週間くらい経った頃、結城さんからLINEが来ていた。結城さんも『VDPプロジェクト』のみんながこっちに来れないことを聞いて、ショックで眠れなくなってしまったらしい。


『最近はツイッターも更新ないし。私もツイッターどころじゃなかったけど・・・』

「だよな。俺は呟くことなかっただけで、あいみんの配信はちゃんと追ってるよ」

『そっか。どう? みんな、まだ、こっちに来れる見込みないんでしょう?』

「・・・うん。さっき、のんのんからDM来たけど、まだ全然進展なし」


 ソファーに座って『VDPプロジェクト』のクッションを眺める。

 あいみんとりこたんとは動画配信ツールで会話していた。

 俺のほうからも、あいみんの部屋から何度かパソコンを落としたりしてみたけど、全く繋がらない。

 あいみんたちがみらーじゅ都市から画面に手を伸ばすと弾かれてしまうらしい。


 りこたんとAIロボットくんが色々操作していたけど、なぜみらーじゅ都市からこっちの世界に来れていたのかわからない以上、俺にはどうすることもできなかった。


『りこたんも相当焦ってた。私もどうすればいいかわからなくて』

「もどかしいけど、俺たちにはどうすることもできないよな」

『うん・・・もう、不安でしょうがないよ。配信ではりこたんと会えるんだけど、直接話したり、リアルイベントで会えないかもしれないと思ったら・・・』

「だよな」

『ネガティブに考えちゃうよね。りこたんはあんなに頑張ってくれてるのに。私、何もできないから・・・』

 結城さんも落ち着かなかった。

 推しとリアルに会えることがどれだけ贅沢だったか思い知らされる。


「何をしてても、落ち込むよな。俺も全然食事が喉を通らないよ」

『そうだ。りこたんファンのフォロワーがファンの集いってツイキャスやってるんだ。そうゆうの見ると、気が紛れるよ。みんな推しのファンだから』

「ツイキャスか・・・前はよく見てたな」

『一人でいると、悪いほうばかり考えちゃうから、自分と同じファンの配信とか会話を見るといいよ。切り抜きとか結構面白いし。ファンだから、ちゃんとりこたんの可愛いツボをついてるし』

 忙しくて見れなかったのもあるけど、久々に覗いてみるか。



 結城さんとの通話を切った後、ツイッターを起動する。

 ファン同士で繋がるアカウントと、あいみんたちと会話する鍵アカがあった。

 表のアカウントは相互フォロワー400人くらいだ。


 あいみんを推し始めたころなんて、20人くらいだったのに・・・いつの間にか400人になっていた。推しの力ってすごいんだよな。

 追っていくと、今日の『VDPプロジェクト』の配信が終わった後、0時くらいから『VDPプロジェクト』ファンの集いをツイキャスで予定している人がいた。

 スパチャではよく見たけど、ツイキャス配信では初めて見る人だな・・・。見てみるか。




『今日のあいみんは神がかっていましたね。いやーこの、後ろ向いたところの体の線が美しい。笑顔も可愛いし、あいみん最強ですね』

 同時接続70人、25歳~30歳くらいの男で、画面は『VDPプロジェクト』のグッズで埋め尽くされていた。同人販売のフィギュアなんて、15体くらい並べられていて、今にも何か召喚しそうだった。

 スパチャもしてこのグッズの量・・・これが社会人の力か。


『お、金魚鉢さん上がってきます? どうぞどうぞ』

『こんばんはー、ぜっとさん、ライブの時はありがとうございました』

『いやいや、こちらこそ。 ポストカードありがとうございます。あ、金魚鉢さんはね、このタペストリーの絵師なんですよ』

「!!」

 ものすごく細やかな背景の『VDPプロジェクト』のライブの絵だ。

 俺もタイムラインに流れてきて、確かいいねした覚えがある。タペストリーになってたのか。

 神絵師の登場に、コメントの流れも速くなっていった。


 金魚鉢さんは俺と年齢が近そうな眼鏡をかけた男性だった。

 この人が描いてたのか。

『そうでしょう。この人、すごい絵師さんなんですよ。バズりまくってますよね』

『そんなことないですよ。Vtuberが好きすぎて絵を描くようにまでなってしまっただけです』

『専門学生だっけ?』

『はい、2年になります』

 『VDPプロジェクト』のファンにはいろんな人がいる。

 紙粘土アートの人も、ラテアートの人もいたし、ケーキで表現する人もいた。

 そうゆう才能っていいよな。バズるし、推しの目にも止まる。

 あいみんもよく嬉しそうに話していた。


『ところでぜっとさん、最近のゆいちゃの様子、どう思います?』

『どうって・・・』

『何か元気がないというか、配信中ちょっとため息が漏れたり、上の空だったりするんですよ。珍しくないですか?』

『あぁ・・・そっか、金魚鉢さんゆいちゃ推しですもんね?』

『はい、ゆいちゃ寄りの箱推しです。そうですよね、おかしいですよね。あ、みんなも俺と同じ意見らしいです』

 金魚鉢さんがコメントを拾っていた。

 箱推しって言ってるけど、ゆいちゃ推しだろうな。

 この人のツイッターのアイコンゆいちゃになってるし・・・。

 プロフィール欄もリアコを匂わせている。別にいいけどさ。


『そういえば、あいみんも元気がないときあるなー。みんな疲れてるんですかね。年末年始も『VDPプロジェクト』で配信枠取ってましたし』

『他のVtuberと比べて、配信も多いですからね。推しの精神状態が心配ですよ』

『推しには健康一番でやってほしいですね。あ、りゅうぐうのつかいさん、久しぶりだね。じゃあ話そうか』

「・・・・・・・・」

 ファンは気づくよな。

 俺だって、配信だけ見てても、元気なときか元気がないかくらいわかる。

 ツイッターでもこの数日間で、かなりざわついていたことだった。


『こんばんはー』

『こんばんは。りゅうぐうのつかいさん久しぶりですね。スパチャではよく見かけてましたが』

『あははは、しばらくロムってたんで。いやぁ、話を聞いてたらりこたんへの愛を伝えないといけない気がしてね。りこたんも元気ないから、俺たちがついてるよって』

 40代くらいの男性で、部屋の中はりこたん一色だった。


『やっぱり、何かあったのか?』

『Vtuberの事務所って色々あるのかもしれないですね。『VDPプロジェクト』自体、かなり謎に包まれてますし。このツイキャスをご本人が見てるわけないですけど、『VDPプロジェクト』には何があっても俺たちファンがいつも味方だって信じてほしいですね』

『りこたん! 愛してるぞー!』

 りゅうぐうのつかいさんが画面に向かって叫んでいた。


 たぶん、ファンじゃない人から見ると、Vtuberに愛してるって叫ぶとか異常な光景なんだろうけど、『VDPプロジェクト』ファンのツイキャスでは日常だった。

 推し方はそれぞれだよな。素直に愛を叫べるだけ羨ましいと思う。


『ん、コメントで誰かが中の人バレしたとかってあるけど?』

『そういや『VDPプロジェクト』って中の人の前世、わからないんですよね。一時期、ゆいちゃに元ゲーム配信者の名前が挙がってましたけど、否定されてましたし。画像は出回ってませんし』

『俺、ライブで中の人見たよ』

『え!?』

『りゅうぐうのつかいさん、見たんですか?』

『あぁ、ライブで前のほうの席だったから、ちらっとね。二次元そのままって感じで驚いたけど。ほら、初リアルイベントのとき・・・』

「・・・・・・」

 コメント欄でもライブの話が出ていた。

 そりゃ、画面から出てきたんだから、二次元そのままだよな。


 結城さんはツイキャス聞いてると気が紛れるって言ってたけど・・・全然、紛れないな。

 ファン同士の話を聞いていると、さらに会いたい気持ちが募っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ