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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
170/183

170 クリスマスは特別な・・・。⑤

「あの子すごくない?」

「やっば。神業じゃん。プロのゲーマーとか?」

 どよめきの声が聞こえる。

「すみません! 他のお客様の動画撮影は禁止となっているので」

「あ・・・・・」

「っ・・・・・」

 はっとして、カメラを向けられていることに気づいた。

 間一髪、係員に言われて撮影はされていないようでほっとした。ミクが握手会に行かずに、お台場でゲームをしていることをネットで流されたら、さすがにまずい。


 動画撮影しようとするのも無理はないんだけどな。

 もちろん、ミクがななほしⅥのミクだってバレたからカメラを向けられたわけじゃない。

「あの・・・ミク?」

「え? 何? 今、忙しいの。あとちょっと、あとちょっと、ここ難しいんだよね」

「・・・・・・」

「よし!」

 ミクが2つの機械を同時に使って、音ゲーをクリアーしていた。

 かなり難易度の高い曲を、1つも間違っていない。

 俺がクリアすべきものまで、ミクが1人でフルスコアをたたき出していく。呆然としていた。

 Youtubeでも、こんな動きをしている子、見たことがない。


「あはは、楽しい!」

「・・・・・・・」

 別人を見ているようで呆然としていた。これがミクなのか?

 信じられなかった。いや、俺はミクのことなんてほとんどわかっていないけどさ。

 楽しそうに手を動かしていた。こうゆう一面もあるのか。


『あなたの音楽力は神レベルです』


 ゲームのモニターにありえないスコアが載っていた。全国で1位レベルらしい。

「マジか・・・・・」

「やったー!!!」

 いつの間にか終わっていて、周りからは拍手が溢れていた。


「すごすぎるだろ」

「何者なんだ? あの子」

「いぇい。ありがとうございます」

 拍手する人たちに向かってピースをしていた。

「ミク!」

「あ、つい」 

 アイドルの癖が出てしまっていた。慌てて、マスクを直して髪で顔を隠す。

 ものすごく目立ってしまい、我に返ったのか、気まずそうにしていた。


「おめでとうございます。はい、これ、こっこちゃんのキーホルダーと、観覧車券です。彼氏さんといい思い出を作ってくださいね」

「ありがとうございます」

 サンタの格好をした係員のお姉さんから賞品を受け取っていた。

 彼氏じゃない・・・ってツッコミは、とりあえず置いておこう。

 白いふわふわのキーホルダーだ。女子ってこうゆう機能性のなさそうなものが好きなんだよな。


「クリスマスツリーにプレゼントは置きましたか?」

「まだです」

「では、是非足を運んでみてください。お二人の願い事がきっと叶いますよ」

 お姉さんがにこにこしながら、ツリーを案内してくれた。

 SNSの撮影スポットになっているらしい。

 肝心のミクはこっこちゃんに見惚れて、あまり聞いていないようだった。

「ありがとうございます。じゃ」

「あ、磯崎君・・・・」

 周囲の人がミクに注目していた。慌てて、ミクを連れて駆け足でその場から去っていく。




「はぁ、危なかった。すごく楽しかったね。目立っちゃいけないってこと、すっかり忘れてた」

「まさか、ミクがあんなに音ゲー得意だとは。全国レベルだったじゃん。やってたの?」

「そうそう、ストレス発散に、よく一人でゲーセンに行って遊んでたの。もう5年くらいは通ってるかな。音ゲーだけじゃなく、シューティングゲームとかもフルスコア出せるよ。みんなには内緒だけどね」

 嬉しそうに伸びをしながら歩いていた。


「どうして内緒なんだ?」

「一応、アイドルのミクなの。ゲーム音痴で、おしゃれが大好きなキャラで通ってるんだから、誰にも言わないでね!」

「別に言ってもいいけどな。アイドルが・・・って言ったって、ルカだってゲーム得意なんだろ?」

「ルカはそうゆうキャラだからいいの。私はダメ。絶対、他のメンバーにも言わないでね。ミクのイメージが崩れちゃう」

「わかったって。言わないから」

 ゲーム好きなアイドルって結構モテる気がするんだけどな。

 鬼塚さんとしても、ゲーム関係の仕事を受けやすいだろうし。

 まぁ、ミクが言いたくないならいいか。


「クリスマスツリー行くんだろ?」

「あ、こっこちゃん嬉しくて忘れてた」

 カバンにつけたこっこちゃんのキーホルダーから手を離す。


「そんなに嬉しいんだ。そのこっこちゃんとやら」

「うん。いい思い出になった。ありがとう」

 こっこちゃんの頭を指で撫でていた。

「いや、俺はマジで何もしていないし」

「でも、私、こんなに外で伸び伸びと遊べてるの、初めてだから。きっと磯崎君のおかげだよ」

「俺の?」

「そうそう。磯崎君のおかげ」

 クリスマスツリーのほうへ歩きながら言う。


「私、誰の前でも、常にアイドルのミクじゃなきゃって思うの。そう望まれてるから、みんなもミクでいたほうが喜んでくれるし」

「別に、好きにしたらいいと思うけどな。だって、さっきのゲームで自然と拍手起きたりしてたのも、素のミクだっただろ? ななほしⅥのミクじゃなかったんだから」

「それは、ただゲームができただけだし・・・」

「ミクが思う理想的なミクを演じ続けなくても、ミクはスポットライトを浴びるってことだと思うよ。もし、あのとき俺がミクと同じようにフルスコア出したって、あんなに拍手は怒らなかっただろうしな」

「そうかな・・・・・」

 ミクと半日過ごして思ったのは、やっぱりアイドルだなってことだ。

 一般人として歩いていても、オーラがある。

 可愛いだけじゃなく、しぐさとか話し方とか、そうゆうものからにじみ出てくるのか、はっきりは定義できないけどさ。


「うー、でも! やっぱり、アイドルのミクから離れるのは怖い!」

「そうゆうもんなのか」

「そうゆうものなの!」

「ま、それも含めてミクだからいいんじゃない? 魅力的だと思うよ」

「なんか、磯崎君って褒め上手だよね」

 ミクがツインテールの毛先を触りながらほほ笑んでいた。


「もしかして、好きになっちゃった? 私のこと」

「なってないって。安心しろ」

「ふうん。でもちょっと好き?」

「友達としてな」

 すぐからかおうとしてくるんだよな。ミクがにやにやしながらこちらを見ていた。


「磯崎君のこと、名前で呼んじゃおうかな。『VDPプロジェクト』の子たちって名前で呼んでるんでしょ? さとるくんって」

「・・・・別にいいけどさ。好きに呼んでもらって」

 いつの間にそんな情報掴んだんだよ。


「じゃあ、さとるくんって好きな人いるの?」

「・・・・・・・・・」

「え!?  何、その反応、いるの?」

「・・・・ほ、ほら、あれがクリスマスツリーだろ」

 クリスマスツリーは天井まで届きそうなほど、ライトに照らされた大きなツリーを指す。

 装飾はキラキラしていて、オーナメントも豪華だった。

 テレビでよく見るようなクリスマスツリーだな。俺の地元では見たことがない。


「大事なことなのに、すぐそうやって誤魔化す」

「大事なことって・・・クリスマスツリーのほうが大事なんだろ? これが目的で来たんだから。ほら、願いがどうとか・・・」

 ツリーの下には、プレゼントがたくさん置かれていた。

 色とりどりの小さな箱に、願いを書いた紙を入れたりして、置いていく仕組みらしい。

 子供やカップル、女子同士が、撮影してから箱を置いていた。


 中には受験生らしき子たちもいるな。 

 こうゆうので願いが叶ったら、苦労もしないって思うんだけど・・・受験勉強辛くて、息抜きに来たんだろうな。気持ちはよくわかる。俺も1年前はそうだった。

 1年後、アイドルとクリスマスツリーの前にいるなんて、想像もしていなかったな。


「ミク、プレゼントボックスはあっちのほうらしいよ。なんか、結構並んでるみたいだから・・・」

「すごい、綺麗・・・・」

「・・・・・・・・・」

 ミクが瞳を輝かせて、ツリーに見惚れていた。

 クリスマスツリーか。『VDPプロジェクト』のメンバーも、ライブ会場のクリスマスツリーを見ているのだろうか・・・とか、ぼうっとしながら考えていた。

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