表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
157/183

157 年末年始のスケジュール確認

「磯崎君、進捗どう?」

「1日と3日と15日のスタジオを抑えて、打ち合わせの日と被らないようにしています。12月は忙しいですね」

「あぁ、こうしてみるとかなりハードだね」

「あ、20日のスタジオが取れてないんですよね。ライブ前なので、大きいところのほうがいいと思って探してるのですが・・・」

「ありがとう。でも、小さいところでも大丈夫。21のリハ前にちょっとフォーメーション確認できる程度でいいよ。新宿とか、ないかな?」

「探してみます」

 事務所の会議室でプリントを見ながら、スタジオの予約、楽屋入り時間の確認、移動手段と込み具合の予測などをしていた。

 鬼塚さんからコーヒーをもらって、礼を言う。


「実は案件もらってきてさ、かなり大きな仕事なんだ。みんなが来てから説明するよ。それと、年末の特別番組に呼ばれてるし、生放送番組も呼ばれたし、年末年始は休みなしだよ。磯崎君、実家帰ったりする?」

「いえ、今年は帰らないので」

 バイトしまくって、推し活資金を貯めようと思っていた。

 来年早々、試験と課題提出があって、あまりバイトできなくなるかもしれないし。


「そうか、よかったよ。はぁ・・・このスケジュールはリノが機嫌悪くなるだろうな」

「そうですね」

 言いながら、全く頭に入っていない。

 つか、Excel埋めたりメール送ったりしながら、一昨日のゆいちゃが言ってた言葉が離れないまま、バイトに来ていた。

 みんなからは普通にDMが来ていたし、ゆいちゃのDMも特に変わったことはない。

 俺の勘違いだったんだろうか。


 いや、でも、確かに「さとるくんが好き」って言ってたんだけど。

 AIロボットのことなのか? 俺なのか? あれはどうゆう意味だったんだろう。 

 気になるけど、ゆいちゃに会ったら墓穴掘りそうで怖いな。


「磯崎君、磯崎君」

「え? あ・・・」

「どうしたの? 顔赤いけど」

「な・・何でもないです。ちょっと、作業してたら熱くなっちゃって」

「ハハハ、風邪だけは引かないようにね。これからもっと忙しくなるから」

「はい」

 マジで、好きとかそうゆうの、免疫ないんだよな。

 一昨日のことなのに、まだ頭から離れない。今までのゆいちゃの行動とか、ずーっと同じことばかり考えていた。

 考えるのを止めようとするんだけど。

 あーはっきりしない。AIロボットくんのことかもしれないし、とはいえ、気になって仕方ないし。


 ゆいちゃが、俺のことを・・・。




「お疲れ様です」

 カナとリノが入ってきた。

 リノにいたっては、俺と目が合うだけで機嫌悪そうにする。 

 別にいいけどさ。


「お疲れ」

「あれ? ほかのメンバーは?」

「ツカサは15分遅刻、あとはそろそろ来ると思うよ。はい、これ、年末年始のスケジュールだから目を通しておいて。かなり大変だよー」

 鬼塚さんがさっきプリントした紙を2人に渡した。


「げ、年末年始全然休みないじゃん」

 リノが見た瞬間に顔をしかめた。


「これは大変ですね。去年よりスケジュールがびっしり・・・」

「今年はななほしⅥが有名になった年だからね。あらゆる特番で呼ばれてるんだよ。年越しカウントダウンライブも出演するし」

「年越しカウントライブにななほしⅥで出れるなんて」

「そうそう。家族に言ったらめちゃくちゃ喜んでました。親戚にも自慢するって」

「声優はヒット作出してもなかなか呼ばれないからね」

 なんか、ぼーっとするな。

 3人がスケジュールで盛り上がっている中、黙々とEXCELに数字を打っていた。



「あ、25日のクリスマスだけ空いてる。あれ? 握手会でしたよね?」

「そこは、ライブの次の日だから、姉妹グループのいちごっ娘のチェキ会場にしようと思って。あとは休みなくなるから、1日だけでもゆっくり休んでよ」

「うぅっ・・・そう思うと、25日超えたら怒涛の年末年始か。体力持つかな」

「・・・・・・・」

「?」

 リノが唸っている中、カナとちらっと目が合う。

 ん? なんだ? 何か言いたそうだったが。


「25日、やっぱり握手会にしませんか? そこの会場は広いし、私たちが行っても迷惑は掛かりませんよね?」

「えっ!?」

「!?!?!?」

 驚いて、カナのほうを見る。


 25日って・・・。

 俺にとっては重要な重要な日なんだけど。


「そりゃ、もともとななほしⅥの握手会会場だったからね・・・でも・・・」

「やだやだ、クリスマスは休みたい!」

「姉妹グループっていちごっ娘でしょ? ななほしⅥと同じルートで売れたいってのが見え見えで、負けたくないの。もともと、ななほしⅥの握手会ってしてたから、私たちが目当てで来るお客さんだっているし」

「それもそうなんだけど、大丈夫? 疲れない? そこから年明けまでぶっ続けだよ?」

「ファンをとられたくないんです!」

 強い口調で言う。負けず嫌いなんだよな。


「あの、もう今からじゃ厳しいですよね? 向こうの予定もありますし」

 思わず口をはさんだ。

 だって、25日は『VDPプロジェクト』の現地ライブがある。

 ワンマンではないけど、俺にとっては、ワンマンくらい大事だ。

 なんとしてでも休みを・・・。


「いや、まぁ、姉妹グループだし、あっちのマネージャーとも仲いいから、出てもらう分には特に問題ないんだけどね」

「えー、握手会って結構大変なんだよね」

「ら、ライブ終わった後ですし・・・」

「そうそう。ライブで疲れちゃうから、朝絶対起きれないよ」

 珍しく、リノと共闘する。

 もう一生無いと思う。


「じゃあ、時間決めればいい。19時から21時の2時間限定、クリスマスイベントってことで」

「っ・・・いや・・・」

「2時間かぁ・・・」

「それなら予定入れられるでしょ?」

「うーん、確かにいちごっ娘には負けたくないけど・・・」

 まずい。リノがなびいてる。

 19時からとか、ライブともろ被りなんだが・・・。


「リノ、もしクリスマスにファンと会ったら、何か美味しいものとか流行りのものとか差し入れしてもらえるかもよ?」

「そっか。それならいいかも。特に予定入ってないしー私のファンってすごくセンスがいいんだよね」

 切り替えはっや。

 秒で共闘が終わった。


「ふふ、よかったー」

「・・・・・」

 相変わらず、頭がキレる。人のツボになるようなところをついてくるんだよな。

 こうじゃなきゃ、トップにはなれないんだろうけど。


「じゃあ、あとのメンバーにも聞いてみてOKだったら、握手会参加にしましょう」

「えっと、俺は・・・」

「もちろん、学校休みだし、手伝いしてくれるでしょ?」

 カナがにこっとこちらを見る。悪魔かと思った。


「ハハハ、さすがかななんだなぁ。25日ね。まぁ、夜だけだから。これからみんなに聞いて、決まったらよろしくね」

「・・・はい・・・」

 断れねー。

 ななほしⅥより、ライバル企業主催のライブに出る『VDPプロジェクト』のほうが大事です、なんて、言えるわけないし。ここ事務所だし。

 

「じゃあ、他のメンバーには、私から説明しますね」

「あぁ、ありがとう。なるべく負担がかからないようにするよ」

 えっ・・・嘘だろ。俺の楽しみが・・・消える?

 気持ち的には暴れだしたかった。

 カナが俺を見て、満足げに笑っていた。


 こいつまさか、『VDPプロジェクト』のライブがあることを知っていて、被せてきたのか?

 でも、万が一、みんなが断るって可能性もあるし。


「じゃ、とりあえず、向こうのマネージャーに聞いてみるわ。たぶんOK出すと思うよ」

「よろしくお願いしまーす」

 カナがテンション高く言ってから、席でプリントにチェックをつけていた。

 リノもすっかり差し入れに釣られてるし。


 すっげー落ち込む。モチベが保てない。

 鬼塚さんがいちごっ娘のマネージャーに連絡しているから、ほぼ決定事項みたいだ。

 25日はどうにか休みに持っていこうとしていたのに、甘かった。

 カナのほうが上手だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ