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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
151/183

151 クリスマス付近の予定は?

 舞花ちゃんがやってるさよさよチャンネルを見ると、アンチがコメント欄に湧いていた。

 かなり荒れてる。擁護しても、擁護しても、湧き出てくる。


『さよさよチャンネル初めての方、ぜひコメント残していってください』

 舞花ちゃんのキャラ、小夜は銀髪ショートの美少女だ。

 声も可愛いし、しゃべり方はたどたどしいけど、そんな叩かれるようなことはしてないと思う。

 というか、普通、ファンになるだろ。


「それはねー嫉妬だよ。うわー、荒れてんね。アンチ VS 擁護派だろ?」

「勝手に覗くなって」

「そりゃ、モニターに映ってたら見るだろ」

 ナツが家に来ていた。

 ポッキーを食べながら、さよさよチャンネルのコメント欄を目で追っている。


「こうゆう奴、どこにでもいるんだよね。小夜ちゃんだっけ? 彼女、大手事務所だから、いきなり曲もらったり、キャラ描いてもらったり、今まで全部自分でやってたVtuberは面白くないんだよ」

「そうゆうもんか・・・」

「アイドルは無理だけど、Vtuberで有名になりたいって子はいっぱいいるからね。こうやって、新人の段階から芽を潰そうとする変な奴らもいるんだ」

 頬杖をついて、小夜を眺める。

 小夜はコメントを読みながら、ちょっとずつ動きがぎこちなくなっていた。


「・・・舞花ちゃん傷ついてないといいんだけど」

「ふうん、舞花ちゃんっていうんだ」

「あぁ、妹の友達なんだよね。一生懸命で、今回やっとVtuberオーディション受かったんだ」

「・・・・・・・」

 ナツがモニターをまじまじと見てくる。プロの目だ。

 なんか、こっちまで緊張してくるな。

「ま、この程度で傷つくなら向いてないよ。良くも悪くも、インターネット配信って言い放題の無法地帯だから」

「厳しいな」

「そうゆうもんだよ。あ、でも擁護派だっているじゃん。同時接続2000人ちかくだけど、擁護派をうまく味方につければ伸びると思うよ」

「・・・・・・・・・」

 舞花ちゃんは幼い頃からの琴美の友達だ。

 再生回数伸びないのもかなり落ち込んでたし、傷ついてる姿なんて見たくない。

 


「で、この子も、さとるくんのこと好きなんだっけ?」

「え? どっから出てくるんだよ。その情報」

「勘だよ。俺の勘って当たるんだよね」

「外れだな。琴美の友達なんだからそうゆうふうになるわけないだろ」

 確かに当たってる。

 そういや、舞花ちゃんの告白、保留にしたままだったな。

 このまま忘れて、別に好きな人とか作ってもらえたらいいんだけど。

 舞花ちゃんには、これからたくさんの出会いがあると思うしさ。


 モニターの電源を切ってスマホを眺める。

「さとるくん、クリスマスはなんか予定入れた?」

「『VDPプロジェクト』のライブ行くつもりだけど、ななほしⅥのライブが前日にあるから何もないことを祈るしかない」

「理系大学生だろ? よく、そんな時間に余裕あるね」

「いや、マジでぎりぎりを生きてるよ。栄養ドリンクに生かされてる・・・」

「マジか・・・生き急いでるハルみたいだな・・・」

 Monsterの缶を叩いた。


「でも、ナツだってクリスマスはファンイベと被ってるんだろ?」

「俺は23日にのんのんと2人でツリー見に行く約束したんだ」 

「マジで!?!?」

 どおりで、ナツが余裕な雰囲気出してるはずだ。

 いつもだったら、のんのん配信のアレが可愛かっただの、これが可愛かっただの騒ぐくせに。


「23日って、のんのんもライブ前日だろ? よくOKもらえたな」

「リハ終わった後、原宿をほんのちょっとだけ散歩しようって誘ったんだ。のんのんってSNS映えするところ好きだからさ。もちろんすぐ解散するつもりだよ」

「ナツの行動力が羨ましいよ」

「まぁね。クリスマスはさすがに俺たちも忙しいけど、のんのんのためなら頑張れるよ」

 なんか取り残された気分だ。

 こっちは、文化祭が終わった後も、課題課題課題課題課題、レポート、バイト、課題、バイトバイトバイトが続いてる。明日からも、課題課題レポート課題課題レポートだ。


 かろうじて、推しの配信とグッズで生きてるっていうのに。


「原宿に男女で見ると結ばれるって噂のクリスマスツリーがあるんだよ」

「へぇ・・・なんか女子好きそうだな」

「クリスマスは避けたし、23日だったら誘いやすかったんだよね」

 にやにやしながら話していた。

 イケメンって非モテキャラ演じてても、一瞬でリア充に変わるんだよな。


「お前のノロケ話とか聞きたくないんだけど」

「まぁまぁ、さとるくんだって誘えばいいじゃん」

「誘える人なんていねーし」

 女子とクリスマスツリーなんて見たことがない。通過したことすらない。

 琴美だって、クリスマスの間は離れて歩いてたし。

 つか、いつもだけど。


「あいみんがいるじゃん。23日なら空いてるし、クリスマスツリーとか好きそうだし、誘えばOKもらえると思うよ」

「推しを誘うとか無謀すぎるだろ」

 カフェオレに口をつける。

 言いながら、バイトのスケジュール管理の効率化を考えていた。

 いちいちスマホにメモするより、ツール作ったほうが早そうだよな。

 ななほしⅥの行動も、大体掴めてきたし。時間短縮できれば、その分推しの配信に時間を使える。


「じゃあ、ゆいちゃは?」

「ど、どうしてゆいちゃなんだよ?」

「なんとなく・・・・・・」

「誘うわけないだろ。ゆいちゃだって・・・一緒に過ごしたい人とかいるかもしれないし・・・俺はそんなことより、課題があるしな」

「ふうん・・・・・」

 そういや、ゆいちゃってクリスマス過ごしたい人とかいるんだろうか。


 別に俺には関係ないけど。


「いいけどね。さとるくん、かななんと同棲してる疑惑出てるんだろ?」

 ナツがソファーにどんと座りながら聞いてきた。


「お前まで・・・・」

「噂って広まるから気を付けたほういいよ」

「誰から聞いたんだよ」

「あのツイッターに上がってた画像のモザイク部分をハルに直してもらったんだ。びっくりしたよ。まさかとは思ったけど、さとるくんが写っててさ」

 ハルって何者なんだよ。

 教育系Youtuberやるより、技術者として世に出たほうがいいだろ。


「さとるくんの様子見る限り、俺は嘘だと思ってるけど」

「嘘に決まってるだろ。文化祭で買い出ししてるとき、撮られたんだよ」

「ん? バイト中じゃなくて、文化祭で一緒だったの?」

「あぁ、カナは大学に友達いないから、たまたまサークルで一緒だった俺と行動するしかなかったんだ。俺も被害者だ」

「へぇ・・・あの、かななんがねぇ・・・」

 ナツが足を組みなおしていた。


「はぁ・・・こっちは、バイトと課題に追われてんのに、ナツはちゃっかり目当ての子とデートするなんて」

「まぁね、まぁね」

 ナツはのんのんの話題になると、ころっと態度を変える。


「ハルたちにも言ったの?」

「もちろん。23日の夜は絶対絶対予定入っても行けないからって。もちろん、XOXOのイベント真っ只中だから、どうにか時間作って抜けるつもり」

「大変だな」

「のんのんと過ごすためなら。俺だって今は配信でしかのんのんを見れない状態だからな。忙しい中、かすみのような供給食って生きてるんだよ」

 言われてみれば、ナツも少しやせた気がする。


「フユにはクリスマスデートならホテル行ったら? って言われたけど」

「は? ほ・・・ほ、ホテルって」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 ナツが固まっていた。俺も固まった。

 童貞にホテルはハードル高いし、いや、まさか、こいつ、卒業するのか?

 クリスマス近くのデートって、そうゆうことする人が多いっていうし。


「ま、まぁ、クリスマス楽しみにしてるってことで」

「そうだな。がんばれ」

「え、え、えっと、原宿ってみらーじゅ都市にあったかなー? みらーじゅ都市の地図、地図・・・と。あれ? 俺今、さとるくんがいるってことは、みらーじゅ都市じゃないのか」

 スマホを動かして、わけわからないことを呟いている。


 やっぱりナツに卒業は無理そうだな。少しほっとしていた。 

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