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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
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12 ミニゴリラ?

 りこたんが俺の家のパソコンで淡々と作業をしていた。

 メモ帳とペンを片手に見ていたけど、何をメモすればいいのかもわからない早さだった。


「ふう。まず必要なツールはダウンロードしたわ。まず、このツールを起動してあいみんのIDを入力するの」

「え・・・?」


「クラウドのみらーじゅ都市で使ってる仮想環境にアクセスできるようになるの。リモートデスクトップを開いて、ホストアドレスを入力すると、ほら、仮想OSにアクセスできるでしょう?」

「あ・・・はい」


 いつの間にかパソコンの画面が別のデスクトップを表示していた。頭では理解できるんだけど、操作が早すぎてわからない。


「ふわぁ~」

 あいみんはあくびをしながら家のテレビを見てるし・・・。


「・・・ごめん。あいみんにもわかるようにゆっくり操作してもらえる?」

「そうね・・・。まずはツール起動、リモートデスクトップ起動、ここでログインID・・・・・・・・」

「なるほど」

 雰囲気がわかった気がする。


「このデスクトップはあいみんのなんだけど、ほとんど使ってないわ。ここだと接続も途切れないし・・・・あ・・・」

 りこたんが何か思い出して、フォルダを検索していた。


「そうそう。私のところで使ってるソースはここにまとめてるから。多分私のソースをベースに作成したほうが早いと思うの。後、あいみんのバナーと動画とキャプチャはこのフォルダにいくつかあるから。メモ帳にファイルパス書いておくね」

 エディタを開いて、いくつかファイルパスを貼り付けていた。


「・・・・ありがとう・・・」


 ゆ・・・優秀すぎる・・。

 手際がめちゃくちゃいいし。



 一人で試行錯誤して詰まっていたけど、一気に進みそうだ。

 りこたんを推す結城さんの気持ちがわかった気がする。


「これがテスト環境にある私のHPよ」

 HPを開いて、ソースを表示していた。


「あれ? このmeta name=”keywords”て何? あいみんのHPにはあったかな?」

「初歩的なSEO対策。私と同じように短めのキーワードを指定しておいてね」

「へぇ・・・・」


 SEO対策か・・・。

 これがないのが、あいみんのHPが上位に上がらない要因の一つだな。


「・・・あいみん、どうしてりこたんのHP参考にしなかったの?」

「だって、HPは自分の力で作りたかったんだもん」

 ソファーでくつろぎながら言う。


「あ、でも、推してくれてるさとるくんが作ってくれるならよいよ。ふへへ、特別だよ」

「・・・・・・・」

 もこもこした部屋着を着て、上を向いていた。


「先、プリン食べちゃうよ。甘いもの食べたくなっちゃった」


 今日も可愛い。

 動画撮りたい。


「あとは、結城さんにどうやって説明しようかしら? こうやって直接家に行ければ早いんだけど・・・」


「うーん。学校のパソコンじゃ説明できないかな?」


「データ分析の場合はDBを見て説明しなきゃいけないから、セキュリティ上難しいかな」

 まとめていた髪をほどいた。


「じゃあじゃあ、りこたんが結城さんの家に行くってのは?」

「わ・・・私が?」

「緊張するなら、私も一緒に行ってあげるよ。仕方ないなぁ」


 りこたんが急に動揺すると、あいみんがにやにやしていた。


「さとるくんは行かないの?」

「いやいや、さすがに女子の家にはいけないでしょ」


「でも、私たち二人じゃ帰り不安だよね。あいみんの家のパソコンから行き来してるから・・・・」

「大丈夫、終わった頃に近くに迎えに行くよ。明日、結城さんと授業被ってるから聞いてみる」


「やったー。また電車に乗れる。今度はどんな服着ていこうかなー」

「こんなのいいんじゃないかな? この前インスタグラムで見つけたの」


 りこたんがあいみんの横に座る。

 スマホを見ながらきゃっきゃ話していた。本当に仲がいいな。




 みらーじゅプロジェクトの公式HPを眺める。

 『愛と勇気を届ける』か・・・・。


「あいみんとりこたんは何か目標とかあるの?」


「愛と勇気をみんなに届けるよ」

「そうゆう抽象的なことじゃなくて、こうなりたいとか」

 顔を見合わせてうなっていた。


「え・・・と、私はたくさんの人に知ってほしいかな。みらーじゅ都市から来た、私たちのことを・・・まだ、知らない人もいっぱいいるから」

「私も。今日本で一番人気のVtuberのアイちゃんみたいに、もっともっともーっと色んな人たちに知ってもらいたいな」

 あいみんとりこたんが真剣に話していた。


「そっか・・・じゃあ、俺たちも頑張らなきゃな」

「うん」

 俺からすると二人とも有名なVtuberだけど、Vtuberってたくさんいるからな。

 新しく出てきて、テレビに取り上げられて、一気に有名になったVtuberの子もいるし。


 個人でやっているのに、ツイッターでバズって、人気になった子もいる。



 スクロールしてメンバーのところをクリックした。 

 浅水あいみ、神楽耶りこの他にも、高坂ゆい、椎名野々花って名前は聞いたことあるな。

 人気Vtuberのランキングに名前のあった子だ。


「高坂ゆいって二人と一緒のところにいるの?」

「はーい。みらーじゅ都市では私と同室に住んでいたの」

 プリンをちびちび食べながら言う。


「へぇ・・・どんな子?」


「ゆいちゃは、ミニゴリラって感じかな?」

「そうそう、ミニゴリラね」

「ご、ご? ごりら?」


 唐突なゴリラに驚いていた。

 いや、俺が知ってるゴリラじゃなくて、最近の流行りの言葉なのかもしれない。

 高坂ゆいって、俺の一つ年下なのか。


 モーションを見る限り、ゴリラの要素は微塵もないしな。


「はは・・・今度配信見てみるよ。最近、色々追えてなくて・・・」

「あ、ゆいちゃなら、さっき呼んだから来るはずだよ」

「え?」


 パソコンから目を離した時だった。



 バーン


 いきなり、家のドアが開いた。

 ゴリラのかぶり物を被った、女子高生の制服を着た子が・・・・。

 ゴリラと目が合う。

 ドアが閉まる。


「・・・・・・・・・・」


 怖。

 何これ、こっわ。

 ぞわぞわっと鳥肌が立つ。幻覚? 急に開いたの? 急に閉まったんだけど・・・。


「ゆいちゃ、やっぱり緊張してるね。今、まだ緊張してるって連絡来た」 

「ふふ、恥ずかしがり屋だもんね」

「・・・・・・」


 恥ずかしがり屋で片付くのか?

 そもそも、なんで呼んでるの?


「もうちょっと待ってみよう」


 さっき閉じたみらーじゅプロジェクトの高坂ゆいを探す。

 身長、149センチ、髪を二つに結んだ女子高生だ。

 ゴリラの要素は何もない。


 バーン


 びくっとして、おそるおそるドアのほうを見る。

 ゴリラと目が合う。

 ゴリラ、ちょっとだけ、前のめりになる。

 出て行く。


「・・・・・い、い、今の子が知り合いなんだよね? 本当だよね?」

 動揺してお茶をひっくり返しそうになった。


「ゆいちゃだよ。捕まえてこよう」

「あ・・・ちょ・・・」


 あいみんが家を飛び出て行って、数秒後、ゴリラと共に入ってきた。

 なんかこう、着ぐるみって感じならいいんだけどさ。

 リアルなゴリラなんだよね。


「こちらが高坂ゆい、こと、ゆいちゃだよ」

「よろしくお願いします」

「・・・あ・・・よろしく」


 あいみんの後ろに隠れながら言う。

 声はゴリラから出ているとは思えないほど、幼くてたどたどしかった。 


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


 あいみんとりこたんとゴリラが1Kしかない家にいる。

 今日はりこたんに環境について聞きたいだけだったんだけど・・・・。


 プリンが4人分あったのはこの子のためだったのか。


 ごくりと、息を呑む。


「・・・いただきます」

 ゆいちゃが、ゴリラのかぶり物の下から器用にプリンを食べ始めた。


「ふう・・・・」

「やっぱここのコンビニのプリンが一番美味しいね」

「はい」

「・・・・・・・」

 何の時間が始まったんだ? これ・・・。

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