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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
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126 声優アイドルが大学に!?

「ねぇねぇ、君、『もちもちサークル』の人だよね? 見たよー」

「え・・・まぁ・・・」

「面白いね。Youtuberやってるんだ」

 学食で一人でパン食べてたら、女子に話しかけられていた。

 スタイルがよく、誰もが振り返るほどの、美少女だ。

「Vtuberの振り付けで踊ってみた出したんだよね? すっごく笑っちゃった。最近毎日見てる」

「あ・・・ありがとう・・・」

 変わった子だな。あれを毎日見てるとか、どんだけ心病んでるんだろう。


 そもそも、こんな子、大学にいたのか? 見たことが無かった。


「どこで部活やってるの?」

「6号館の部室を使ってます・・・けど」

「わかった。じゃあね」

 キャップを深々と被って離れていった。

 なんだったんだろう。


 今日は久々にバイト休みだし、『もちもちサークル』に寄っていこうかな。



「今年の文化祭、『もちもちサークル』の模擬店はたこ焼きやから。作り方履修しておいてな。材料はもう10月に向けて発注してる」

「はぁ・・・」

 ホワイトボードに美味しいたこ焼きの作り方が書かれている。

 俺、家にたこ焼き機とかないから、作ったことないな。


「来週実践しようか。それ動画に撮るとか」

「それ、それしたかったんや」

 平澤さんの声が大きくなる。


「出店ってなると、先輩方来るんでしょうか?」

「それが、うちの部活、他のサークルとの掛け持ちもちらほらいてさ」

 がんじんさんがパソコンの椅子を回して、プリントを眺めた。


「今、参加期待できるのはここにいる3人と、ゆうた・・・くらいなんだよな」

「えっ、少ないですね。模擬店ってもっと、こう人とかたくさんいて、ってイメージなんですけど」

「せやな」

 平澤さんが重く頷いた。


「レギュラーメンバーの田中が海外留学行ってもうたんや。めでたいことなんやけどな」

「あぁ、言ってましたね」

 去年の動画まで出ていた田中さんが全くいなかった。 


「大体、男4人でたこ焼き屋回せるん?」

「でも、たこ焼き屋の店員は2人で回してるよな」

「そんなん、プロだからできるんや。休憩なしになってまうやん。そんなの嫌や、他のサークルの店も回らな」

「まぁな・・・」

 俺もせっかくの文化祭はステージとか見たかった。

 でも、1年だし・・・。仕方ないか・・・。


「部員集めたりしないんですか? 平澤さんもがんじんさんも、動画でバズって有名じゃないですか。声をかければ、今からでも入ってくれる人いるんじゃないですか?」

「俺ら、この部室を出た途端、人見知りなんや」

「えっ」

 すっげー嘘っぽい。

 平澤さんは特に、気さくにいろんな人と話しているイメージだ。


「いやいや、俺に話しかけてくれたじゃないですか」

「俺らとおんなじ匂いをする奴は大丈夫なんや」

「そうだよな。この大学、意外と陽キャも多いし、ちょっとでも陽キャとつるんでたら急に話しかけにくくなるっていうか。そもそも話しかけるってハードル高いやん。なんか、その時のコンディションにもよるっていうか」

 急に、うじうじし始めた。


「でも、先輩方、ツイッターのフォロワー4万人とかいるじゃないですか。呼びかければすぐにでも集まりそうですけどね」

「あれは、ほとんどがこの大学志望している子や。お客さんになってくれても、この部活の協力者にはなってくれへん」

 俺のアカウントのフォロワーは2000人くらいいたが・・・。

 ほとんどがVtuber推しのオタクばかりだ。

 大学の文化祭のことを呟いても誰も反応しないだろうな。


「あー・・・あと、一人いるだけで違うんだけどな・・・マジでどうするか?」

「ステージも見に行きたいしな・・・店、閉めるとかありなのか?」

 平澤さんとがんじんさんが、肩を落としながら話していた。

 結城さん・・・に申し訳ないけど頼んでみるかな。でも、Vtuber関連じゃないから、結城さんにメリットないよな。



 トントン


「入ってもいいですかー?」

 ドアの向こうから女の子の声が聞こえた。


「磯崎の友達の結城さんって子か?」

「いや、結城さんは今日休みなので、違うとは思いますが。俺出てきますよ」

 ソファーから降りて、ドアを開けた。


「君は・・・・」

「あはは、来ちゃった。『もちもちサークル』ってここであってるよね?」

 学食にいた美少女だった。


「あってるけど・・・どうしてここに?」

「では、失礼します」

「え、すみません。平澤さん、この子に『もちもちサークル』の部室を聞かれまして・・・」

 無視してキャップを取って、入っていった。


「えぇっ!?」


 平澤さんとがんじんさんが彼女を見た瞬間、立ち上がった。

 一瞬、沈黙が降り落ちた。


「嘘やろ? 本物?」

「私『もちもちサークル』のYoutubeの視聴者なんです。受験のとき、よく見てましたから」

 あっけにとられている、平澤さんとがんじんさんをよそに、彼女が嬉しそうに話していた。


「え・・・平澤さんとがんじんさん、彼女のこと知ってるんですか?」

「磯崎お前、知らんの?」

「?」

 彼女がキャップを回しながら、俺を覗き込む。

 二つに結んだ長い髪が、ふわっと揺れていた。


「私、声優アイドルグループななほしⅥの東寺カナ。みんなは、かななんって呼んでるよ」

「ななほしⅥ!?」

 まさか、この子が『VDPプロジェクト』と同じライブに立つ子?

 言われてみれば、アイドルをやっていてもおかしくない容姿だったけど。


 がんじんさんがパソコンのキーボードをものすごい速さで打っていた。

「本当だ・・・ななほしⅥセンターの子。マジだ」

「はーい。赤担当のかななんです」

「高学歴とは知ってたけど、同大だったなんて・・・」

「まだ在学中なので、大学名は公表してないんですよ。活動を理由に勉強をあきらめたくないので」

「すごいな・・・」

「お二人に知っていてもらって嬉しいです」

 カナがピースをしていた。


「君も、今日はちゃんと覚えて帰ってね」

「あぁ・・・うん・・・」

 にこっと笑顔を向けてくる。

 勢いに押されていた。可愛いんだけど、こうゆう、ぐいぐいくる子って苦手なんだよな。

 正直、『VDPプロジェクト』のほうがいい。

 ゆい・・・じゃなくて、最推しあいみんのほうが可愛い・・・。


「へぇ・・・模擬店やるんですか?」

「せや。俺が美味しいたこ焼きの作り方をみんなに伝授して・・・」

「私、手伝いますよ」

 カナが満面の笑みで言う。

「へ?」

 がんじんさんが、あっけにとられていた。

「文化祭の日はちゃんとスケジュール空けてるんで。あ、私、たこ焼き作るの上手いんですよ。よくメンバーとタコパしてますから」

「いやいやいや、事務所が許さへんやろ」

「そうだな。手伝ってほしいのは山々だけど、ファンでパニックになるかもしれないし・・・」

「中でひたすらたこ焼き作るんで、表に出なければ誰も気づきませんよ。私も、文化祭楽しみたいんです」

 平澤さんとがんじんさんに目で訴えていた。


「じゃ・・じゃあ、頼むか」

「せやな。部活初めての女子部員がかななん、いや、カナちゃんだなんてびっくりだけど・・」

 そういえば、がんじんさんは声優オタクだったよな。

「へへへ、よろしくお願いします。活動がないときは、ちょっとでも顔出すようにするので」

「あ・・・あぁ・・・」

 カナと目が合う。にこっと笑いかけられた。咄嗟に頭を下げる。


 マジか。この子、文化祭の前に、来週のライブで見るんだよな。


 『VDPプロジェクト』を差し置いて、オープニング曲を歌うから、勝手にライバル意識を持ってしまったけど・・・。意外と普通の子だな。

 3次元アイドルは反射的に苦手意識を持ってしまったのもある。我ながら女々し過ぎる。いい加減、忘れないとな。


 がんじんさんと、平澤さんと今期のアニメについて盛り上がっていた。 

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