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俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
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111 リアル陽キャの失恋後

「え、磯崎君、彼女いたことないの?」

「はい・・・・」

 バイトの安月さんと休憩が被って話していると、どうゆう流れか、Vtuberの話から、彼女がいない期間の話になっていた。

「マジか。予想外だったわ」

「そ、そんなに珍しいですか?」

「いや、俺の周りにはあまりいなかったからさ」

 ウーロン茶を一口飲む。


「安月さんは何人くらいと付き合ったことあるんですか?」

「高校までに3人くらい付き合ったことあったよ。大体、中学で恋を経験して、高校で彼女できて・・・みたいなのがデフォだと思ってた。だって高校なんて青春じゃん。みんな甘酸っぱい恋とか、してみたくなるじゃん」

「デフォ・・・」 

 俺のルートにもそのデフォ値追加してほしかった。


「してみたくてもできるものじゃないんで」

「そうか? ノリだと思うんだけどな」

 安月さんのコミュ力ならそうだろうけど。

 ナツが童貞って聞いて、世の中意外と童貞多いなって思っていたのに。

 油断していた。


「安月さんの周りにオタクっていなかったんですか?」

「オタクだらけだよ。でも、意外とみんな彼女いたな。共通の趣味で盛り上がったり、一緒にライブ行ったりするんだって。俺ものんのん好きな女子と、ライブとか行ってみたいなー」

「・・・・・・」

「案外可愛い子ってオタクだったりするじゃん。アニメの声優好きだとか、話題が豊富なほうが楽しいって言うし」

 オタクが、彼女ができない理由にはならないってことだな。

 いや、当然なんだけどさ。


「・・・どうやって高校時代に彼女ができるんですか?」

「どうやってって、あぁ、文化祭とか体育祭とか。イベントたくさんあるから、そこで作ってたよ」

「文化祭・・・・・」

 文化祭、体育祭。出た、陰キャにとって魔のワード。


 3年間うぇいな人たちがうぇーいしてる中、教室の端っこ温めていた気がする。

 女子と話したのなんて、プリント配られるときくらいだった。

 まぁ、佐倉みいな応援してたらそれなりに楽しい高校生活だったから、後悔はないけどな。


「・・・安月さんと俺は、別の世界で生きてきたみたいですね」

「ん? どうした、急に」

「俺、陰側の人間なんで・・・体育祭とか大玉転がした思い出くらいしかありませんし」

「いやいや、彼女がいないくらいなんでもないじゃん。これから作ればいいんだから」

 模試の順位も体育祭みたいに派手にしてほしかった。

 体育祭で1番取ったら女子にキャーキャー言われるのに、数学で1位取ったっていつもの奴じゃんみたいな感じで終わっていた。むしろ、10位の男のほうがギャップで注目されてたし。


 理不尽だよな。テスト返却だって、先生の顔面リアクションくらいは盛り上がってほしかった。



「お疲れ様ー」

「あ、お疲れ様。喜多さん・・・じゃなくて、神田さんか」

「喜多でいいよ。慣れないから、はぁ、やっぱ夏休みって混むね」

「さっきはオーダーミス取り消し助かったよ」

「うん。たまたま気づいたから、よかった。昼間は忙しくてみんなピリついてたもんね。夜になったら急に静かになったけど」

 喜多さんが飲み物を持って休憩室に入ってきた。

 安月さんはもう立ち直ったんだろうか。何ともないような雰囲気で話している。



「何話してたの?」

「高校時代に彼女がいたかって話だよ。な、磯崎君」

「はい」

「いいじゃん、恋愛の話? 楽しそう」

 喜多さんがウキウキしながら乗ってきた。

 これは、誤った方向にいくと、安月さんが傷つくやつだ。慎重にいかないと。


「えっと、俺、彼女いたことないって安月さんに相談していまして・・・」

「え? 磯崎君、彼女いたことないの?」

 安月さんと全く同じ言葉を言われる。

「無いです。できる気もしなくて・・・・」

「へぇ、可愛い」

 可愛い?


「気にすることないって。私から見ると、むしろステータス。男は中身だと思うの。個人的な意見だけど、高校時代、散々遊んできた人ってなんか誠実じゃないイメージ」

「・・・・・・・」

 今、安月さんに矢が刺さった気がする。


「・・・あはは、でも、モテるのにはそれなりに理由がありますし。ほら、気遣いができたり、俺、そうゆうの全然わからないんで」

「うーん、私はモテなくても誠実なほうがいいな。チャラチャラしてる人って誰にでも優しいから。恋人や結婚には向かないのよね。浮気を疑わなきゃいけないでしょ?」

 もう一回刺さった。一切こっちを見なくなっていた。


「神田さんはモテる人ではないかもしれないけど、いつも私に優しくて誠実だし、あぁ、見えて連絡もマメなの。あ、のろけじゃなくてね」

 連打は止めてくれ。安月さんが死んでしまう。


「私、昔から太ってる人が好きなの」

「へぇ・・・そうなんですね」

 喜多さんが神田さんと結婚した理由がわかった。

 安月さんは鼻からタイプじゃなかったんだろうな。


「っと・・・すみません。何か言い忘れてたような」

「ん? どうしたの?」

 安月さんがおもむろにスマホを操作して、のんのんの動画を見始めていた。

 俺だって、同じ状況なら泣きながらあいみんの動画を見ている。逃げだしているかもしれない。


「そうそう、キッチンにドルチェ場の試作品のケーキがありましたよ。俺、ここ来る前に一口食べたんですけど美味しかったです。早く行ったほうがいいですよ」

「わーマジ? 知らなかった。行ってくる、まだ残ってるかな」

 喜多さんが立ち上がって、部屋から出ていった。

 ケーキがあってよかった。


 あのまま、新婚生活の話題に突入したら、俺の踊ってみた動画を出して話題を逸らそうと思っていた。身を削る行為だけど、威力には自信がある。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

 佐倉みいなに置き換えると、他人事ではない。

 引きずってはいないけど、落ち込む気持ちは痛いほどわかる。


「えっと・・・あ、のんのんの個人配信も見てるんですね」

「推しだからな。のんのんのクッションも届いたし・・・いいよなー」

 安月さんが明らかに落ち込んでいた。顔に覇気がないんだけど。



「磯崎君、全然話変わるけど、合コンセッティングしたら来る?」

「え?」

「のんのんは確かに可愛いけどさ。可愛くて尊くて、俺、もうのんのんがいなかったら生きてこれたか微妙なくらいだけどさ・・・・」

「は・・・はい」

「のんのん、画面の中から出てこないんだよ。やっぱり人肌恋しいっていうか、彼女が欲しいんだよな。手を繋いだり、映画見たり、デートしたいんだよ」

「はぁ・・・・」

 すごまれた。人肌恋しいとか経験ないからわからん。


「大学のサークルの友達みんな彼女持ちでさ。彼女いないの俺くらいだから、合コンセッティングできないでいるんだよ。だから、磯崎君に来てもらえるとマジで助かる」

「合コンって、俺、未成年なんでお酒飲めないんですけど。行っても大丈夫ですか?」

「全然いいよ。飲む必要ないし、適当に話してくれればいいから」

 すごく面倒だから行きたくない・・・。

 けど、なんか話の流れ的に、俺のせいで傷口に塩を塗ったみたいな形になったからな。

 断れない。


「・・・じゃあ、お願いします」

「よし、ありがとう。集まったらライン送るわ。そうと決まれば、サークルの女の子に声かけておくから」

「そんなすぐ集まれるんですか?」

「ちょうど、この前声かけてきてくれた子がいたんだよ。女子大の友達から頼まれたんだって」

「へぇ・・・・」

 俺の『もちもちサークル』なんて、リズム感のない男4人踊ってみたを出すっていう、世紀末みたいな活動してんのに。

 どこで女子大が出てくるんだ。

 グループラインの内容も、合コンの話なんて上がったこともない。 



 このままフェードアウトしてくれないかと思ったけど、帰ってすぐに日にち候補の連絡が来ていた。

 行動が速いな。コミュ力も半端ない。

 どこで習うんだろう。そうゆう能力って。

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