表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の推しは裏切らない!  作者: ゆき
1/183

プロローグ 俺は3次元推しを辞めた

「今日で卒業しますー」

「みいなー今までありがとうー」

 大声で叫ぶ。

 涙ながらにペンライトを振った。


 アイドルグループ、ガールズドールの最推し佐倉みいなの卒業コンサートだ。

「みなさん、今まで佐倉みいなを応援してくださり、ありがとうございました」


 深々とお辞儀をして、仲間に抱き着かれていた。

 感動は家に帰ってからも収まらなかった。


 高校3年間のすべてを捧げて、彼女だけを応援し続けて、彼女だけを見てきた。

 進路も佐倉みいなのコンサートを見に行けるように東京の大学を選んだ。


 受験勉強しながらの、アルバイト生活は辛かったけど、佐倉みいなを応援するためだったら・・・。

 でも、卒業コンサートは終わった後、涙があふれて止まらなかった。

 数々の、握手会は間近で彼女を見られる唯一のイベントだった。

 認識はしてもらえなかったかもしれないけど(というか、無理に決まってるが・・・・)、いつもにこにこして手を握ってくれた。


 でも、いいんだ。


 コンサートで彼女が見れなくなっても、彼女がいなくなったわけじゃない。


 時間が経てば、Youtuberとして出てくるかもしれないと思っていた。


 一人暮らしのアパート、新しい生活、まだ全部片付いたわけじゃない。

 段ボールから、佐倉みいなのブロマイドやDVDを一つずつ眺めながら思い出に浸っていた。

 東京を歩いていれば、どこかで佐倉みいなに会えるかもしれないんだから。


 ふと、スマホを開く。


 衝撃的な記事が飛び込んできた。


― 佐倉みいな電撃結婚、お相手は若手俳優の ―


 戦慄した。


 佐倉みいなが結婚だって? 思わずよろけて、積み上げられたブロマイドを崩す。

 嘘だろ?

 何かの間違いじゃないのか? だって、彼女はアイドルで・・・・。


 テレビを付ける。

 チャンネルを変えていくと、ワイドショーで『佐倉みいな電撃結婚』の文字が出てきた。


『佐倉みいなです。実は以前からお付き合いしていた俳優のXさんと結婚することになりました。今まで応援してくだ』


 ぶちっとテレビを消す。

 いやいやいやいやいや。


 マジかよ。嘘だろ? 以前からっていつだよ? 


 冷や汗が止まらない。


 放心状態で外を眺めていた。

 俺が推し続けた高校の3年間、彼女は男がいながら活動していたっていうのか。


 笑顔も・・・愛想笑いで・・・・・。

 推しと結婚どころか付き合えるなんて思ってないけどさ・・・。

 俺の青春3年間が終わってしまった。


 あんなに可愛いんだ、イケメンと結婚するだろう。

 

 俺だって、彼女だったらそうする。


 ただ、頭が付いていかないだけなんだ。

 涙は出なかったけど、空っぽの気分だ。


 次の日、淡々と佐倉みいなのグッズやポスターを引っ越しのゴミと共に出した。

 ネットオークションに出している人もいたけど、切り替える気力がなかった。


 SNSでは文句を言ってる人もいた。

 気持ちはわからないでもない、俺だって文句の一つや二つ、言いたかったさ。


 でも、仕方ないんだ。

 俺が推してたのは3次元だったんだから・・・。そもそも、間違っていたんだ。


 こうして俺は、3次元推しを辞めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ