王女との出会い
どうしてこうなってしまったのでしょうか?
ゆらゆらと揺れる狭く汚い船室で、正確に言えばその牢獄で閉じ込められて幾数日、いえ数月かしら
太陽の光すらもう忘れてしまいそう
「アナ王女、一等船室の居心地はどうだい?」
「救国の聖女って謳われた姫君が哀れなもんだなぁ」
下種な男たちの笑い声に心の底から恐怖する。怖い!怖い!!
体を穢されることが無いのだけが唯一の救い、でもそれは移送先に着いてからの壮絶な処刑の為と知るといっそこの場で殺されてしまった方がいいのではないかとも思えた。
ドン!!
誰か助けてと思った瞬間、アナ王女の体は大海原に投げ出された。
何が何だかわからず、暗闇の海中に投げ出される。そのまま海中のうねりに巻き込まれて、アナは意識を手放した。
その日、略奪護送船エルガレオン号は、水星海域沖で沈没したのだった。
後年に書かれた歴史書では。乗組員は全員死亡、移送されていた救国の聖女アナ・ララベル王女は移送中に処刑、遺体はバラバラにされて海に撒かれたとされたのであった。
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カルデラ湖に入ると目の前に大きな港が見えてくる。
オウムガイ号をポートに止めて外に出ると日の光が眩しくて暖かい。
本当に映画のままだが、人が一人もいない。
「俺人がいるところって入力したはずなんだけどな」
てっきり、オウムガイ号に乗る乗組員が居るのかと思っていたらそうでもなかった。
船室の空き部屋などを見てもどう考えても乗組員をのせれる使用だと思うんだけど
その代わり、星間戦争の映画でみたドロイド兵みたいなのがたくさん働いている。
入港した時から攻撃はされなかったし、敵ではないと直感で感じるが、今一得体がしれない。
「まぁいいや、降りてみよう。攻撃されたら攻撃されたでその時はその時だ」
どうせ何かの間違いで生きてるようなもんだしな。
ハッチから港に降りるとひと際大きなドロイドが近寄ってきて挨拶してくれた
「ご寄港お待ちしてました、キャプテン。船の整備と備蓄貯蔵の準備が出来ています」
「キャプテン?」
「私どもは、あなたの潜水艦と同じ目的で生成されました、この島ごと貴方の所有物となります」
「つまり専用の寄港所ってこと?」
「左様でございます」
船の整備をしてくれるなら、こればかりは専門外なので有難い。
どうせなら乗り込んで整備してくれる整備兵みたいなのもほしいけど。
「必要レベルに達していません。そのオーダーは受け入れられません」
「レベルを上げればドロイドを乗せることが出来るのか。レベルはどうやったら上がる?」
「様々な条件やクエストを達成することでレベルが上昇いたします。一番近いレベルアップ条件は搭乗人数を一人増やすことです」
搭乗人数を増やす、そういえば人間がいる島で検索したのを思い出した。
「ここに人間はいるのか?」
「種族名人間は、死亡個体が50体、存命個体が1体です。どちらも先日流れ着きました。島沖で、沈没した船の乗組員のようです。存命個体の方は檻の中で保存中です。死亡個体の方は、明後日破棄予定です。存命個体も破棄されますか?」
おもったより物言いが物騒なドロイドに慌てて破棄しないと告げる。
生きている人がいるなら、とりあえずあってみよう。
「その存命個体に会える?」
ドロイドについて行くと檻の中に簡易的なベッドが敷かれて少女が座っていた。
両腕には鎖が繋がれており、来ている服は質素な物である。
銀髪に碧眼の整った顔立ちの彼女は、こっちをみてひどく怯えた顔をしている。
「ここはどこ?私は今から処刑されるの?」
「そんな物騒なことはしないよ!?今出してあげるから逃げないでね。話をしたいだけなんだ。」
一言目に処刑とはこの子もだいぶ物騒だな。とりあえず手の鎖を外してあげた方がいいのだろう。
ドロイドにいって檻を開けさると、警戒しながらも中から出てくる。
名前を聞くとアナとだけ名乗った。
「君は難破した船に乗っていたみたいで、この島に流れ着いたんだってさ。50人くらいが流れ着いたらしいけど、生きてたのは君だけ見たいだよ」
「私、助かったの?スパニアに連れていかれることは無いのね」
「スパニアってとこが故郷ならお連れするのはやぶさかではないけど」
「ここはどこなの?」
「ここは・・・えっとどこだろう?」
「水星海域のガニメデ諸島沖です」
ナイスドロイド!こっちの地理を覚えようにも地名がついた地図みたいなものが無いとわからない。
「魔のガニメデ…そんなところに…」
話を聞くと、暗礁や複雑な海流が流れており、難破した船の物資は諸島がわに流れ着く。勿論人も流れ着くが、島々に上陸しても毒があるものばかり。水すらも毒性があると言われている。
迷い込んだら最後、毒で死ぬか飢えて死ぬかと言われており、魔の海域として恐れられているらしい。
オウムガイ号はナビゲートシステムみたいなものがあるため絶対迷わないそうだ。
「まぁ、ここはそんな物騒な場所じゃないからさ。とりあえず牢屋から出してあげて」
ドロイドに檻を開けてもらい、食堂へと案内してもらう。
基地にはドロイドしかいなのだから必要なさそうな場所がたくさんある。
美容室、服屋、武器屋、薬屋などなど。このあたりも神様が配慮してくれているのだろうか。
贅沢を言わなければ普通に人生を送るのに困らなさそうだ。
利用するのにお金がかかる仕様だったので、お金を稼ぐ手段は見つけなければいけないが。
「改めて、助けて頂き有難うございました。私はアナ・ララベル。クロノス王国の第三王女です」
食事が終わったあたりで、アナさんが自己紹介をしてくる。なるほど王女だったのか。
でもその割には着てた服がだいぶボロボロだった。
食事前にシャワーを浴びて頂き、今はセーラー服を着ている。
女子高生が来てるやつではなく、セーラーカラーの着いたちゃんとした軍服使用である。
「ロクです。王女様が、なんでこんなところに?」
「……侵略戦争を収める為、魔女として処刑される為の護送中でした」
「なるほど。それで?」
「………私を、スパニアまでお連れ頂けないでしょうか」
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