表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

1



前世の記憶、なんてものは、大抵その人の思い込みか、嘘だと思っていた。


今日、この時までは。


「お嬢様、どうなされました?」


メイドのグレースに声をかけられ、私は我に返る。


私の名はアナベル・ブラウン。


ブラウン家の一人娘で、今年で12歳になる。


資産家である父と母には蝶よ花よと可愛がられ、好きなものは何でも与えられ、自分が望むことは全て叶うのだと信じて疑わずに生きてきた。


そして今日も、父から貰ったお金で新しい洋服を買うべく、街へ繰り出そうとしていたところだ。


既に目の前には馬車が用意され、お乗りくださいお嬢様と言わんばかりに扉が開かれている。


いや実際に「お乗りくださいお嬢様」って言われた。

言われたのだけどね?


問題は、この馬車に乗る直前……もっと具体的に言うと、馬車に乗るために右足を上げた瞬間に……私の前世の記憶と思われるものが、突然頭に溢れたこと。


私はそっと足を戻すと、横に控えるグレースに微笑みかけた。


「忘れ物を思い出したから、少し待っていてくださる?」


そう言って、私は早足に御屋敷へ戻った。


なんで今?なんでこのタイミング?

言いたいことは山ほどあるが、とりあえず大混雑中の頭の中を整理する。


私の前世は、なんてことない、普通のOLだった。


普通に進学し、普通に就職し、特に向上心もなく20数年ぐらい生きた…と思う。


そんなある意味幸せな人生は、突然歩道に突っ込んできた自動車によって全て消し飛んだ。


そこから先の記憶はない。

そりゃそうだ、多分そこで私は死んだのだから。


そして、今。


「アナベル・ブラウン……」


自室の鏡には、私の…アナベルの姿が映っている。


長くウェーブした赤髪に、燃えるような赤い瞳。

今着ているドレスも赤を基調としたもので、どこからどう見ても気の強そうなお嬢様。


事実、私はワガママだった。

召使いに対しても、誰に対しても、上から目線で傲慢な少女である。


しかし、前世の記憶を思い出した私は、もはやアナベルにあらず。


どちらかというと前世寄りの、人に合わせてそつなく適当に生きていくタイプの私が、今の自分である。


そしてこのアナベル、なんと私が前世で好きだった乙女ゲームの登場人物である。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ