73.ユグドルside
今までこの可憐な少女に驚かされた事は数知れない。そしてその全てが驚くなんて生易しいものではなく、驚愕と言った方がいいだろう。
その淡いグリーンの瞳でこちらを見据え、はっきりと主張したその言葉に「ああ、やはりこの方は一筋縄ではいかないな」と妙に納得する。
僅か11歳の少女が、このチュオウーノ国が誇る貴族学園の飛び級入学を目指したいと言うのだから。
この国にある勉学に励む場所は2つ。貴族しか入学を許されない学園と、そこを卒業した者が更に専門的に学ぶ事が出来る高等学院だ。
高等学院は限られた者しか入れないが、学園は貴族の子息令嬢は必ず入らなければならない。
入学時の試験は名ばかりでクラス決めの為のテストだが、進級や卒業時には課題の提出と一定の学力が必要になる。
留年は恥だが卒業出来なければ貴族としての未来はないのだから、勉強出来ない者は皆最低限の点数を取る為に必死になる。
あまりにも学力が低く卒業が見込めなかった伯爵家のご令嬢が、家の恥になるからと急遽商家に嫁に出されたのはもう10年以上前だが有名な話だ。
その次の年から学園の平均学力が上がったのはきっとその伯爵令嬢の二の舞にならないようにと影響を受けたからだろう。
リーシェル嬢は学力的にはなんら問題ないが、入学と共に飛び級とは前代未聞ではないだろうか……。
だが、マクレガー侯爵にお伺いにいけば「リーシェの汚名になるような事で無ければ構わない」と殊の外すんなりと許可がおりてしまった。
前例のない事を起こすには、反発を抑える為にも慎重に進めていかなければならないだろう。
古い友人が学園の教師として働いていたはず。
まずは彼に相談し、繋ぎをつくろう。
それにしても、年若く卒業するのならば卒業後はどうお考えか。リーシェル嬢は未だ婚約者も決まっておらず、マクレガー侯爵も娘の学力や全属性の魔力を隠したがっていたはずだが飛び級入学なんてしてしまえば隠す事も出来なくなってしまう。
マクレガー侯爵に本意を確認してもいいものだろうか?
何はともあれ学園への問い合わせを済ませてからだ。
アラン様が入学してからは剣と魔法の鍛錬の時間のみになり少しゆとりのあるものになっていたが、ああ……忙しくなるな、と小気味いい高揚感を感じながら便箋を取り出し羽ペンを走らせる事に集中した。




