71.天啓?
昨日作ったクッキーにメッセージカードを添えてアランお兄様のお見送りをすると、そりゃあもう喜んでくれた。
見えなくなるまで馬車の中から手を振ってくれて、キラキラスマイルの大盤振る舞いだったわ。
もちろん私もずーっと手を振り続けたわよ。
日本でいうと中学生にあたるお兄様は前世の感覚で言うともはや青年。
顔立ちも身体つきも、所作も言葉遣いも何もかもがやんちゃな中学生というイメージから逸脱している。
この世界はそういうものなのか、それともお兄様がやけに大人びているのかは引きこもりの私にはわからない。
ただ、私の身体の成長速度が速い事も考えるときっと前者なのだろう。
精神面はきっと貴族だから。幼い頃から礼儀作法を徹底的に教育されるもの。そう考えると、貴族社会って紳士製造機よね。
―――っ!!
その時、驚愕の事実に息がとまる。
どうして今まで気付かなかったのだろう。
引きこもりのせい?命を守ることばかり考えていたから?あるいはその両方だったのだろう。
乙女ゲームや恋愛小説では文武両道で少し腹黒な敬語キャラが好きだったけど、貴族社会にはそんな人ゴロゴロいるんじゃ……!!
第2王子と婚約せず、ヒロインや攻略対象と関わらないという人生設計ばかり考えていたけれど、その後の事は考えた事が無かった。
だって、まずは生き残るかどうかしか考えられなかったんだもの。それから家族が巻き添えにならないようにって。
もしかして、無事に生き延びれたら―――好みと言うか、性癖……ううん違うな。心惹かれる男性……そう、コレだ。心惹かれる男性がたくさんいるのではないだろうか。
きっと神様からのご褒美だわ!頑張って生き抜いたらきっと素敵な殿方との結婚も夢じゃないって。
急に天啓を受けたように高揚した気持ちを落ち着けながら、絶対悪役令嬢になんてならないと決意を新たにするリーシェルだった。




