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68.ぬいぐるみその後

誤字報告ありがとうございます(^^)

 火への恐怖心、それは当たっているかもしれない。水や風、土属性と違い、あからさまな攻撃魔法というイメージが払拭できないもの。

 ユグドル先生はさらに続ける


「それから無意識に受け手の事を考えてしまう事ですね。一般的にご令嬢が火魔法を使う時はあまりありません。ですから、火を起こせたら便利な事などを考えてみるのはいかがでしょうか?それに、リーシェル嬢は全属性なのです。ひとつくらいできなくてもなんら問題ないですよ」


 と、ひとつの課題を残してユグドル先生の訓練は終わった。

 それでも苦手なものがあったとしても大丈夫とフォローしてくれるあたりは、さすが褒めて伸ばすタイプだ。その一言のおかげであまり思い悩まず肩の力を抜く事ができた。


 火の活用法を考えながら部屋に戻り、今度はサンドル商会への書類を作成する。

 以前のぬいぐるみが大ヒットしたらしく、それ以来定期的に私が作りたい物の材料の手配をお願いすると出来上がりを見せてほしいとやってくるのだ。

 書類と共に説明するとすぐに販売の許可が欲しい、と毎度この流れになっていた。


 そう、サンドル商会といえばマクレガー領に工場を作りぬいぐるみ事業を大規模に展開し始めた。この為受注生産で品薄だった物が平民でも購入する事が出来るようになったのだ。

 平民向けの販売という事でガラス工房でスワロフスキーを開発し、宝石よりも少し安価で売り出したところ、特別なお祝いの時やプロポーズの時にスワロフスキーを使ったぬいぐるみをプレゼントするというブームになっているそうだ。


 プロポーズが成功しなかった時には、スワロフスキーを付け替えて次のチャレンジをするらしい。平民逞しい、と少し感心したりもした。


 マクレガー領では女性達の雇用と領の収益アップでだいぶ潤ったようで、家族に甘々なお父様がさらにご機嫌になっていたりする。

 私が欲しい物や作りたい物はお父様に話をする前からOKがでていて、たまに部屋まで来ては何か作ってる私を楽しそうに見ている始末だ。

 製作中は試行錯誤しているし黙々とやりたいタイプなので、はじめの頃はいちいち「それは何をしているんだい?」「これはどうやって使うのだ?」と聞いてきたお父様に塩対応でいたら次第に黙って見ているだけになっていた。

 空気を読んでくれたようで嬉しいが、視線が少し鬱陶しいです、お父様。



 書類を書き上げララが淹れてくれたお茶で一息つくと、今度は別の小さな紙を取り出しいろんな絵と文字を一緒に書いていく。


「アゴスト ズボン……アゴスト くつしたっと。あとは何かあったかしら?」


 それは孤児院に新しく入った子供用のラベリングだった。

 相変わらず月に1度の頻度で訪問する孤児院はこの3年間でリーシェルが初めて訪れた時とは様変わりした。

 メンバーは当時から2人増えたが、孤児達は皆健康的な体型になりそれぞれが多くの役割を担うようになった。

 その為、あらゆる所に絵でラベリングし小さな子でも分かりやすいようにしてあるのだ。

 年長組は簡単な平仮名なら読み書き出来るようにもなった。

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