64.魔法の授業
あっという間の領地視察の同行を終え、リーシェルは久しぶりにユグドル先生の授業を受けていた。
暫くお休みしていたはずなのに、少し疲れた顔をしてやってきたユグドル先生に心配して声をかけるも「はは、問題ないです」と遠い目をしていた。
学習はさらっと歴史を学び、魔法の授業では始まりとは打って変わってニカっと笑いながら指導してもらう。
「そう、そのままあの的に向かって飛ばして下さい。魔力を切り離すように……そう!お上手です」
褒め上手なユグドル先生と褒められて伸びるタイプの私は相性がいいと思う。
実は好みのタイプと言うだけで、私がそう思っているだけかもしれないけど……。
ユグドル先生はもともと火属性なので、火と風属性のアランお兄様の家庭教師になった時に風属性についても詳しく勉強したらしい。他の属性については一般的にどういった魔法が使えるかしか知らなかったため、今回私の為に猛勉強中だと笑っていた。
うわーん、惚れてまうやろ!
私の、先生が、素敵過ぎる!
私のせいで他属性の教え方まで勉強させて申し訳ない気持ちでいたら「この歳になっても勉強させてもらえる機会をいただけるなんて喜ばしい事です」と爽やかに言ってのける姿に、同じ世代に生まれなかった事をちょっぴり残念に思いつつその爽やか笑顔を心のアルバムにそっとしまう。
まだまだユグドル先生自身の勉強時間が足りないとの事で、まずは火と風の魔法から習う。
初めての火魔法はマッチの火程度だった物が今日は500円玉くらいの大きさにする事ができ、ふよふよとだが的に当てる事もできた。
ただ、風魔法は手のひら程の竜巻を出せたが、コントロールが難しく手から切り離した途端に消えてしまった。
「本日の授業はここまでですが、2度目の授業にしては素晴らしいものでしたよ。半年程は火と風の魔法を重点的にして、その後水、土と始めていきましょう。聖属性は文献も少なく、もう暫くお時間をいただきたいです」
「ええ、ユグドル先生が私のためにお勉強してくださるんですもの。あまり無理なさらないでくださいね」
少し落ち込む私のフォローも忘れず今後の教育課程を教えてもらい今日の授業は終了した。




