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61.絵心があって良かった

 シスターも呼んで全員で食べるサンドイッチはとても美味しく感じた。

 みんなひとつ目は勢いよく食べはじめるがふたつ目はゆっくりと味わうようによく噛んで食べている。そんな様子をリーシェルは微笑ましく眺め、またそんなリーシェルをアランとジェンナイが優しく見守っていた。


「お腹いっぱーい!」

「美味しかったねー、あんなご馳走始めてだよ」

「ああ、すっげー美味かった!大きくなったら嫁にしてやるよ」


 簡単なサンドイッチでも口々に褒めてもらえ嬉しかったが、オッジの言葉にアランお兄様の口が弧を描いた事に気付く。


「リーシェの伴侶は僕が認めた相手じゃないとダメだよ。ね、リーシェ」


 オッジから私にゆっくりと振り向いた顔はいつも通り笑顔なのに、お兄様、目が笑ってませんっ!!


「え、ええ……」


 少し部屋の温度が下がったような気分になり曖昧に返事をする。

 オッジも何か察したのか、はたまた空気を読んだのか「俺薪割りしなきゃ!」と慌てて飛び出して行った。


 あ、逃げた。シスコンの地雷踏んで逃げたな。

 私もそおーっとお皿とコップを持ってキッチンにさげに行き、そのまま皿洗いを始め「みんなー、洗っちゃうから持ってきてー」と背中越しに声を掛けた。皿を洗い終わった頃には寒波は過ぎ去っていた、と思う。


「さあ、このまま夕ご飯の支度をみんなでしちゃいましょうか」


 じゃがいもとにんじん、玉ねぎをみんなで皮むきしフェッブが包丁の使い方をマーニに教える。

 お鍋にお水を入れ切った具材を入れ火にかけ弱火で煮込んで行く。どうしても6歳のマーニの分担が増えてしまうが、美味しいものを自分で作ることができるといつになくやる気に満ちているようだ。

 スープの味付けを簡単に説明し、またパン作りを始めた。


 シスターに紙と羽ペンを借りてきて分量の絵を描く。

 小麦粉の絵の横にコップ3個、水の絵の横にコップ1個、砂糖の絵の横にスプーン2個のように見て分かるように。

 砂糖の絵と塩の絵が一緒になってしまい、苦肉の策で甘ーいと喜んでる子供の絵と、目を瞑ってしょっぱいって顔の絵を描いてみたがなんとか分かるだろう。


 そのレシピを見ながら子供達だけでパンが作れるよう手は出さないで説明に徹する。

 2度目だしこねるのが楽しいらしく仲良く成形する様子に安心するが、料理長の天然酵母が無くなればこのレシピは使えなくなってしまうと思案する。


 庶民の家ではどんなパンの作り方なのだろう。

 暫く来れないからその間に調べなきゃいけないわね。


「えっリーシェちゃんもうこれないの?」


 あれ?どうやら口に出ていたらしい。


「しばらくは来れないけど、また必ず遊びに来るわ。その時は、どんなお料理を作ったとかどんなお手伝いをしたか聞かせてくれる?」


「うん!たくさんお手伝いするー」

「お料理できるように頑張る」


「俺もチビ達の世話するし、料理だって覚える!だから、絶対また来いよな」


 玄関から薪割りを終えたオッジもやって来てお別れみたいな雰囲気に少ししんみりしてしまったけれど、まだパンも焼いてないし帰らないから!オヤツも持って来たから!と慌てて訂正した。



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