60.パンに挟んで
誤字脱字報告と感想ありがとうございます。
あけましておめでとうございます!
意外にみんな器用で1度目の前でお手本をやって見せればすんなりやり方を覚えていく。
この子達は決して頭が悪い訳ではないのよね。教育を受ける機会が無かっただけで、特に生活に密接する技術の習得はきっと早いだろう。
それなのに今まで芋の皮むきくらいしかしてこなかったのは、シスターが教会の仕事と乳幼児の世話で忙しく付きっきりでやり方を教える時間が取れなかったのだろうと推測する。
オッジによればどうやら半年程前に10歳前後の子供が2人新しい家族の元に養子にいったらしい。
「みんな背が女神様の手の高さになると新しい家族の所に行けるんだ。俺だってもう少し大きくなったら家族ができるって司祭様が言ってた!」
「そうなのね。養子にいった子達が遊びに来たりするの?」
その言葉を聞いた途端にオッジは顔を曇らせ下を向く。
「孤児院から出て行ったあと遊びに来た奴なんかいない。ルッリは俺のこと弟分だって言ってたのに、新しい家族ができたら俺達の事なんてもう忘れたんだ……」
「 ルッリは絶対来るよ!美味しいものたくさん持って遊びに行くって言ってたよ」
すかさずアプリーが反論して口喧嘩が始まる。
2人は3歳も歳が離れているのになかなか拮抗した言い合いにリーシェは聞き入っていた事にやっと気づく。
「ストップ、ストーップ!パン生地を焼く間アプリーはレタスをちぎってくれる?オッジとお兄様はハムを薄く切って。他の子はお皿やコップを出してね」
お腹がすいてると余計に口論にもなるわよね。それぞれ分担作業をして離れてもらおう。
フェッブに目玉焼きを作ってもらい1/4に切ってお皿にうつしておく。
ハムを見た子供達は期待の眼差しでパンが焼けるのを今か今かと待っている。
さっきまで言い争っていた2人はいつの間にか仲直りしたらしくオーブンの中を一緒に覗いていた。
子供達とフェッブの「まだ?もう焼けたんじゃない?」「もう少しだ」と言うやり取りを3回繰り返した後に取り出したパンは丸くて綺麗なきつね色をしていてとても美味しそうに焼けている。
パンを冷ましてから具材を挟みたいが、こんないい匂いのなか子供達をこれ以上待たせるのはかわいそうだなと思いなおした。
「ここに切れ込みを入れて……レタスとハムと目玉焼きを入れて完成!」
味付けはなにもしてないがハムの塩気で美味しいはず。
みんなキラキラした目でサンドイッチを眺めている。
レタス係ハム係目玉焼き係にわけてそれぞれ具材を挟んでいくとあっという間に30個のサンドイッチができた。




