59.兄のポテンシャル
すでに馬車に乗って待っていたアランお兄様に慌てて謝ると「本を読んでいたから大丈夫だよ」と王子様スマイルを見せてくれた。
昨日は残念王子なんて思ったけれど、妹大好き以外は完璧王子様キャラよね。笑顔が眩しい。
馬車で移動中もお兄様がどんな本を読んでいたかや私が今日作ったお菓子の話をしていたが、やはりお兄様も野菜のケーキに驚いていた。
「リーシェが作ったものなら、ぜひ食べたいが……ほうれん草か……なんでまたケーキに……」
そういえばお兄様はほうれん草が嫌いだったものね。
好き嫌いのほとんどないお兄様の唯一嫌いな食べ物じゃないかしら?
「後でお兄様も一切れ召し上がってくださいね」
口だけ孤をかいてそう言うと「あ、ああ もちろん」って目を逸らされてしまった。
でもきっとお兄様は私の手作りなら食べてくれるはず。重度のシスコンのポテンシャルは高いのだ。
ガタッと馬車が止まり、街の入口についたようだった。
フェッブに木箱を持ってもらい孤児院に着くと、外にいたちびっ子達が一斉に駆け寄って来た。
「待ってたよ!アウローラ様」
「今日も何か食べ物ある?」
「本当に今日も来たんだな……」
「ほら!私言った通りでしょ。絶対来るって」
いっぺんに喋りだす子供達の声を聞き分ける事が出来て、私って聖徳太子並みの耳を持ってるかもしれないとどうでもいい事を考えながら女神様だけは否定させていただく。
「こんにちは。でも、アウローラ様じゃないのよ。リーシェちゃんって呼んで欲しいわ」
私の要望にすぐ「リーシェちゃん」「リーシェちゃん」と応えてくれながら手を引いて孤児院の中に招いてくれる。
シスターはどこか聞くとすぐにアプリーが走って連れて来てくれた。挨拶とともに木箱の中を見せ、今日の昼食をみんなで作りたい言う。
「まあまあ、こんなにたくさん頂いて、ありがとうね。昼食も助かるわ!来週司祭様がいらっしゃるから最近ずーっとバタバタしていたの」
そう言い残し教会の方に向かって行く。
本当に忙しそうね、来て良かった。
今日の昼食は昨日の夜考えておいたのよね。手軽に食べれて野菜やお肉が食べれるようにって。
「さあ、一緒にお昼ごはん作ってくれる?まずは手を洗ってね」
流しで私も一緒に手を洗い、キッチンにたくさんある小麦粉をボウルに取り出す。バターや塩と、料理長から分けてもらった天然酵母と砂糖を入れ水を加える。
「最初はオッジとマーニに混ぜてもらうわ。まとまってきたら小さい子でもできるから、少し待っていてね」




