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57.領主邸の夜

 領主邸に戻るとお兄様はさっそく書庫に籠りなにやら調べ出した。


 私はお父様に今日の報告をしようと使用人に取り次ぎを頼むが、お父様もムスカも視察で出掛けているらしい。

 帰ってきたら教えてもらえるように言い、お祖母様とお茶をご一緒した後、領主邸にも用意されたリーシェの部屋で日課の魔力感知をする。


 はぁ、それにしてもすごい部屋ね。

 前回は一般的な貴族の部屋という感じだった。むしろザ・客室といった瀟洒(しょうしゃ)な部屋が、今やロココ調もビックリなお嬢様のお部屋に大変身だ。


 マホガニーの家具も白木の物に換えられているし、壁紙まで違うものになっている。カーテンやベッドの天蓋にはレースがふんだんに使われていて乙女チック感がすごいのだ。

 最初部屋のドアが開いた時なんて部屋を間違えたと思ったものだが、ムスカに「以前旦那様方がお帰りになられた次の日には大奥様が商会を呼んでお部屋を調えさせていただきました」と教えてくれた。

 お祖母様のデレがこんな所にも発揮されているのだ。


 なんて魔力感知中に思考を巡らせているとメイドがやってきて、お父様のお帰りと夕食の準備が調った事を教えてもらう。

 廊下に出るとちょうどお兄様もメイドに声をかけられた後なのかお部屋から出てくる所だったので、エスコートされながら一緒に食堂に向かう事になった。


 ちなみに、ちらっと見えたお兄様の部屋はやっぱり私の部屋と大差無かった。カーテンやソファの色がミントブルーなだけで、レースがふんだんに使われているところなんかは全く一緒で対で作られたと思われる。

 うん、完全なる余談だったわ。



 夕食が終わってから報告する時間を取ってもらえるか聞きましょ、と食堂の席につく。

 今日は午前中からお兄様とパウンドケーキ作りをして、昼食後には孤児院訪問をしたからお腹がペコペコだったのよね。

 私は今から豪勢な食事を食べれるけれど、あの子達はいももち以外に何か食べれただろうか。

 孤児院に思いを馳せると、一食一食大事に食べなければとふわふわなパンをよく噛み締める。


 いつもより少し時間が掛かった夕食を終えて、お父様の執務室で報告とお願いをしてから天蓋のベッドで眠りにつく。

 あの子達も今頃寝ているかしら。

 明後日には王都邸に帰ってしまうから、明日は午前中から孤児院に行けるようにしよう。


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