56.女神アウローラ
この国、チュオウーノの国教でもあり、唯一の神であるアウローラ様はこの惑星に海を創り大地を創り植物、動物を創ったという創造神。
病が流行ると姿を現し人々に触れるだけで治し、飢饉の時には食べ物を分け与えたといい伝えられている。
国教と言えども国民みんなが敬虔の念が深いわけでもなく、一般的には祭事の時や不吉な事が起こると教会に行くというレベルだ。
教会には女神像が祀られているし、さすがに教会に併設されている孤児院なだけあってこの子達は神話に詳しそうだった。
でもでも、いももちの女神なんてなんか違う!
アウローラ様のイメージダウンになってしまうと焦る私を蚊帳の外に、アランお兄様は如何に妹が優しく賢く天使のようかをコンコンと語り出す。
「そう!だから女神アウローラ様のように慈悲深く可愛らしいけれど、僕は天使のようだとも思っているんだ」
はい、決まりましたドヤ顔。常々気障な王子様のようだと思っていたお兄様は、実は残念王子だったようです。
もはや乾いた笑いしかでずにいると子供達はぼーっと聞いている子や尊敬の目を向けてくる子と様々だった。
オッジに至ってはお兄様から目を外さずに「お前のにーちゃんやべえな……」と呟いていた。
うん……、少し……同意するわ。
明日も来るからと言い残し早々に退散したのはお兄様のせいだが、復路の馬車で真面目な表情で気付いた事を教えてくれたのもまた、兄である。
「薪や毛布なんかの生活物資はそれなりにあったけれど男手が足りないようだったね。気になったのは、みんな年齢が低い。ここ数年で流行病があった訳でも、干ばつや水害があった訳でもないのに低年齢の孤児しかいない事が不思議だな」
「言われてみれば……そうですわね。平民は15歳から働けるのですよね?見習いなら12歳から就業許可がでるとは言っても、孤児院に10歳前後の子供がいないというのはやはりおかしいですわね。それに、食材が安価で日持ちするジャガイモととさつまいもばかりでしたわ。月に2度商人から購入しているそうですが、そんなに逼迫する程寄付金が足りないのでしょうか」
お兄様の意見を聞き、確かに不自然だと肯定の言葉を紡ぐと、ゆっくりと頷いたお兄様がぽつりと呟く。
「もう少し、調べてみようか……」




