54.孤児院訪問 4
「病気や事故で親を亡くしてここに来る子供は決して少なくないのよ。国からの支援金と教会への寄付もあるけど、それでもなんとか最低限の生活しかできなくて……。子供達もお菓子なんて滅多に食べられないから本当に嬉しいわ」
沈んだ顔の私達にシスターは続ける。
「普段は私ともう1人のシスターで教会の仕事と孤児院のお世話をしているんだけど、どうしてもこの子にかかりっきりになってしまうから、少し大きい子達には我慢ばかりさせてしまっているのよね……」
そう言ってシスターは困ったような笑顔を抱いているジュンに向けた。
「みんなは普段どんなことをしているんだい?夕方まで居られるから、良ければ僕達に教えてくれないかい?」
「そうね!困っていることはない?ジェンナイもフェッブもいるし、力仕事ならきっとすぐ終わるわ!」
お兄様の言葉に護衛の2人も頷いてくれた。私ができる仕事は殆ど無いかもしれないけど、大人の男の人がいれば心強いわよね。
フェッブなんて背が高いから灯の魔道具の魔石交換もすぐ終わるわ。
「まあ、本当に助かるわ!この子をお昼寝させてきちゃうから、みんなを任せていいかしら?」
「ええ、任せてください。オッジはさっき薪割りをしていたね。僕にもやらせてよ」
オッジとマルツォが薪割りのコツを教えながらお兄様とフェッブの手を引いて行った。
あら、いつの間にかすごく打ち解けてるわ。お兄ちゃんができて嬉しいのかしらね。
2歳のマッジョと1歳のジュンはシスターが別室にお昼寝させにいったから、残る3人の中で年長のマーニに話し掛ける。
「マーニはいつも何してるの?」
「お芋の皮むきとニワトリの卵拾い」
「お芋の皮はね、こーんなにたくさんやらなきゃいけないのよ。それに卵拾いはニワトリがいない隙に早く取らないと突っつかれちゃうんだから」
ふふ、どうやらアプリーの方がおしゃべりらしい、身振り手振りを使ってたくさん教えてくれる。
最初は皮むきね、と教えられた木箱を覗くとそこには箱いっぱいのジャガイモが何箱もあった。
よく見ると隣の木箱はサツマイモだわ。
ジェンナイに木箱をテーブルの近くに運んでもらいながら、毎日食べてると言うアプリーにいろいろ聞いてみると、主食は茹でたジャガイモかサツマイモでパンや他の野菜は週に一、二度しか食べれないと言う。お肉は殆ど食べたことなく、お魚はたまーに食べれるって……
―――完全に栄養失調だわ。基本、お芋しか食べてないじゃない!!
みんな実年齢よりだいぶ小さく見えたのも、成長期に満足な食事が取れないんだから当たり前だわ。
国からの支援金も、領主からの寄付金もあるはずなのにどうしてこんな食事しか取れないのかしら……?




