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51.孤児院訪問 1

 領主邸での夕食は普段食べ慣れている別邸の料理と同じくらい美味しいが、やはり料理人が変われば使う食材や盛り付けも違いその差も面白く感じた。


 あの恰幅のいい料理長がこんなに繊細な盛り付けをするなんて意外だったわ。

 マクレガー領の隣の領地は海に面しているからか、王都の別邸にいる時よりも領主邸では魚料理が頻繁に出る。

 前世島国で魚大好きだったから食事はこっちに来た時の楽しみの1つになったのよね。


 メインの食事を終えデザートが運ばれてくるとお祖母様が少しそわそわしだしたことに気付く。お父様のフォークの行方をじっと見つめて、口に持っていくパウンドケーキをジーっと……見過ぎ見過ぎ!あからさますぎますよ!


「これはリーシェが以前作ってくれたのと同じものだな。とても美味しいよ。またリーシェが作ってくれたのかい?」


「いいえ、お父様。今日のデザートは私とお祖母様の2人で作ったんですのよ」


 ふふ、お父様のナイスアシストにドヤ顔で答える。お祖母様ったら表情はいつも通りなのに目がキョロキョロしているわ。


「なっ、母上が?あなたが厨房に入るなんて知りませんでした」


「何十年ぶりかね、たまにはいいものさ」


 お父様もやっぱり知らなかったのね。2人の雰囲気はまだ固いものの、以前より会話も増えているしこうやってお互いの事をより知っていけばいいな、と思った。




 そして次の日、私のお豆腐メンタルの決戦日でもある孤児院訪問。

 あんなに憤って強い気持ちでなんとかしたいなんて思ったものの、いざ朝を迎えるとついウジウジしたりして弱気な自分が顔を出す。


 また(ほどこ)しや偽善だなんて面と向かって言われたら……と思うと、怖い。

 ―――いや、そう思われることはまだいい。そうだ、私のささやかな面子やプライドなんかよりも、今目の前の子供の命の方がよっぽど重い。

 命の重さは平等なんて貴族としては間違った考えなのかもしれないが、手の届くところにいる命には手を差し伸べたい。

 改めて気持ちを引き締めてお昼前にアランお兄様と馬車に乗り込み―――孤児院で歓迎を受け、今に至る。



 あれ!?罵倒は?冷たい目は?

 そんなもの全然なく、老齢のシスターと子供達に……めっちゃ受け入れられたのだった。



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