5.優しい家族
目が覚めた時はもう外が茜色に染まっていた。窓から入るその色にもう夕方だと知る。
「あれ?わたしの お部屋?」
ぼんやりとした頭を振り払うように目をパチパチさせるとベッド脇にいたララが喜びの声をあげた。
「お嬢様!気づかれたのですね!っあ、大きな声を出してすみません……お水お飲みになりますか?」
大きな声に驚いてビクッとした肩を優しく撫で、最後の方は内緒話のように囁きながらコップをわたされる。
ゴクッゴクッと喉を鳴らしながら一気に飲み干すとようやく頭がスッキリしてきたみたい。
慌てて部屋を出て行くララをじっと見送った。
今何時かしら?もうすぐ夜みたいだけど。
思わず溜息がこぼれる。小さな手で頭をかかえながら呟いた声はシンとした部屋によく響いた。
「このままじゃ……死ぬ……」
うーんうーんと唸っていたらお父様とお母様とお兄様が部屋に飛び込んできた。
「「「リーシェ!!目が覚めた(かい)?」」」
「倒れてからずっと意識がなかったんだ。頭が痛むのかい?!」
「そんな……もう一度お医者様に来ていただきましょう!?」
「リーシェ、僕を置いて死なないで!」
言葉を挟む間も無く座っていたベッドにまた横にさせられ、両側からお母様とお兄様に手を握られる。
あぁ、なんて暖かい家族なんだろうと、目頭が熱くなる。ツンとする鼻に思わず眉間が寄った。
「あぁ、リーシェ泣かないで……僕がついているよ」
「やはりまだ具合が悪いのだわ。ララ、お医者様に連絡してちょうだい」
こんな素敵な家族の元に産まれてなんて幸せなのだろう……
「ううっ、ゔぅー」
呻くような泣き声がもれる。
全然可愛くない。なんて事を考えながら子供の様に泣いた。まぁ、子供だけどね。