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47.インズの街 3

 

 噴水の周りにある段差に座っている人がチラホラいるから私達もそれに倣って座る事にした。

 もちろん私が座る所にはアランお兄様がハンカチを広げてくれた。さすが紳士だわ。


 このコカトリスのたまご、けっこう美味しいし腹持ちも良さそう。スイートポテトとごま団子を足して2で割ってもっと素朴にしたような味?

 そもそもなんでこんな名前なのかしら?丸いから?コカトリスの卵に似てるのかな?魔獣のコカトリスが卵生なのかもわからないけれど……


「どうしたの?難しい顔して。口に合わなかった?」


 考えすぎて顔が険しくなっていたみたい。元庶民なので素朴な味、大好きです!


「ううん、とっても美味しい!―――あっ!」


 その時、一瞬強い風が吹いて帽子が攫われる。

 慌てて頭を押さえるも、時すでに遅し。巻き上げられた帽子は2人が座っていた噴水を飛び越えて行ったせいで見失ってしまう。


 アランお兄様に手を引いて立たせてもらい、そのまま手を繋いで噴水の後ろに回ると風に揺られて商業通りの隣の道に飛ばされていくのが見えた。


「こっちの道だね。少し道が細いからジェンナイとフェッブに側に付いていてもらおう」


 そう言って細い路地の入口に行くと何処からともなく「大通りではないのでご一緒します」と2人の声がして、私達の後ろに立っていた。


 に、忍者みたいだわ。もしかしたらさっきの話も聴こえていたのかもしれない。


「私の不注意でごめんなさい……」


「ふふ、護衛と一緒なら問題ないよ。そんな遠くに飛ばされてないと思うからすぐ見つかるよ」


 ジェンナイとフェッブが路地に入ると表情を引き締めたので、私も少し緊張しながら歩きだすと少し先に子供がいた。


「あっ!その帽子!」


 女の子が両手に持っていた帽子を指差すと、リーシェルよりよっぽど小さいその子は固まってしまった。

 すると横にいた同じくらいの背の男の子が飛び出して来た。


「なんだよ!盗んでなんかねーぞ!」


「あ、ううん、帽子が飛ばされちゃったの。拾ってくれてありがとう」


 固まったままの女の子の高さに視線を合わせてニコッと笑うと、おずおずと両手で帽子を差し出してくれた。

 その手はガリガリと言う表現が正しいと思わせる程痩せていて、よく見ると服もツギハギだらけだった。


 帽子を受け取りもう一度お礼を言ってから被るが、初めて見たその子の痩せた手足に、胸が苦しくなる。


「何かお礼をさせて?」


 思わず震えた声に、男の子が顔を歪めていた。


「なんだよ!そんないい服着てどんなお恵みをくれるってんだ!俺たちは物乞いじゃねぇ!」


 男の子はそう言い残し、女の子の手を引っ張って走り去っていってしまった。



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