44.街に行きたい
「さすがにリーシェだけだと、何をしでかすか心配だからね」
むぅ、そんなトラブルメーカーみたいに言うなんて……普段は引きこもりだから何も仕出かしていないハズなのに。
まぁ、膨らんだ頬を優しく撫でられたから機嫌は良くなりましたけどね。
昼食はもう用意してあったのですぐに食堂に移動し、私とお兄様は気持ち急いで食事を終えた。
食後のお茶もハイペースでいただいているとお父様が喉を鳴らして笑っていた。
「……クックッ、ははっ。お前たち、そんなに街に行きたかったのか?」
あらら、あからさま過ぎたかしら。よく見たらお祖母様も笑いを噛み殺しているわね。んん?ムスカまで!
苦笑しながらお兄様の方に視線を向ければみんなと同じ顔をしていた。
解せぬ。お兄様もいつもより食べ終わるのが早かったのに。
「だって、初めてなんだもの。前回行けなかったから今度こそと思っていたのよ。」
「リーシェは家から出たがらないからな。そんな楽しみにしていたとは思わなかったよ。でも、大通りだけだよ。決して細い道に入らないようにね。知らない人について行ったらいけないよ」
「ええ、承知しましたわ」
元気よく返事をして1度身支度を調えに部屋に戻った。
領主邸にいる間の部屋付きメイドのニーナに、事前にララに用意しておいて貰ったふくらはぎまでの丈のワンピースに着替えさせてもらう。
「まぁ、リーシェルお嬢様の髪はとても艶があって綺麗ですわね。でも、困りましたわ。これではとても平民には見えないです。せいぜいいいところの商家の娘でしょうか……」
と、高速で三つ編みを編んだニーナに帽子を被せてもらって玄関に急ぐ。
念願の街歩きに、いざ、出発です!




