42.領地に出発 3
カタっと音の方を見るとお父様が馬車の扉を開けたところだった。
お母様とのラブラブモードがまだ続いているのだろう、「お待たせしたね、可愛い天使達」と頬にキスをされる。お兄様と交互に。しかも何度も。
「んもぉー、ちょっ、お父様っ、はやく出発っ、致しましょう。もっ、もうっ」
「どうしたんだい、お父様を押すなんて。女の子の反抗期は早いって聞くけれど……まさか、そんな……お父様の事を嫌いにならないでおくれ」
いい加減しつこいお父様の顔をちょっと押しのけただけなのに更にめんどくさい事になったわ……
「リーシェはお父様の事が大好きですよ」
と、頬にキスを返す。1回だけ。
どうやら満足してくれたみたいでホクホク顔で御者に声をかけていた。
お父様のせいで出発が20分は押したんじゃないだろうか。横のアランお兄様は無の境地で固まっていたわ。
そうね、素直に受け入れていれば良かったわ。いや、お兄様のは受け流すだわ。次からは見習おう。
ゆっくり進みだした馬車の小窓を開けてお母様に手を振る。
こうして、やーっと領地に出発する事ができた。
そのせいか朝からどっと疲れた気がして、馬車の中でグッスリ眠ってしまったいたみたい。
気がつくとアランお兄様の肩にもたれかかっていたようだ。
「あ、お兄様。寄りかかってしまってごめんなさい」
「ん、いいよ。寝ているリーシェも可愛かったよ」
「そうだな、天使みたいだったよ」
もう、お兄様もお父様も私に甘いんだから。
「ほら、もう着くよ。領主邸が見えてきたよ」
わっ、私何時間寝てたのかしら。お昼寝なんて恥ずかしい。
8歳のこの身体だと夜もいくらでも眠れるのよね。
寝る子は育つって言うし、まぁいいか。




