41.領地に出発 2
馬車に乗って待っていてもいつまでも乗り込む気配のないお父様は放っておいて、久しぶりにゆっくり話せるアランお兄様にいろいろ聞きたかった事を聞いてしまおう。
「お兄様の婚約者はもう決まっているのですか?」
唐突な話だったからか、少し驚いた様子のお兄様はすぐに頬をうっすら染めた。
あ、これきっと好きな人がいるんだわ。アランお兄様ももう11歳だもの。私と違って社交もしていてお茶会やパーティーにも出席しているんだから婚約者の1人や2人くらい……いやいや、2人もいたら困るわね。
「リーシェが僕の事を気にしてくれるなんて嬉しいよ。大丈夫、まだ婚約者はいないし当分このままだよ」
ひとりうんうん頷いていたけれど、どうやら思い違いだったみたい。何が大丈夫なのかしら?
「そうなのですね。周りはもう婚約者が決まった方も多いのではなくて?」
「うーん、何人かは決まっているひと達もいるけど、男は相手がある程度年齢が下でも大丈夫だからゆっくり決める人のが多いかな」
なるほど、男性は結婚相手が10歳年下っていうのも珍しい事じゃないものね。婚約者を選ぶ期限も女性よりたくさんあるんだわ。
「では殿下方の婚約者もまだ決まってらっしゃらないのかしら」
「ルネ王子もヴェネル王子もまだお相手は決まってないみたいだね。リーシェも家格的に充分候補には入るだろうけど……今のところは深窓の令嬢って言われてるからね。―――それにルネ王子は少しお身体が弱くて病気がちだから」
深窓の令嬢?社交界に顔を出さないでいたらそんな事になってしまっていたのね……
でも願ったり叶ったりかしら。
「リーシェがお茶会やパーティーに出席したらあっという間に婚約希望者が殺到しそうだね。こんなに可愛くて賢くて優しいんだから」
やだ、お兄様ったらシスコンが過ぎるわ。それにそんなフラグになるような事言わないでー!




