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35.マクレガー侯爵side

 

 私は火、風の2属性持ちだ。妻は風属性、息子のアランは私と同じ火と風であった。

 貴族しか持ち得ない魔法は上位貴族であれば2属性持ちは然して珍しい事では無かったし、属性は遺伝するなんて言われているのでリーシェはきっと火か風……もしくはその両方の属性であると思っていた。


 ただ、あの子はきっと何か通常ならざる事が起きるのではないか……そんな予感がしていた。

 だからであろう、リーシェが初めて魔法の発動をする日、訓練場が見渡せる部屋からその様子を見ていた。


 そしてその考えは正解であった。


 リーシェは易々とここからでも見える程の魔法防御を発動し、私は今日引っ張り上げる日では無かったのかと眉を顰めた。

 その後展開される全属性の魔法に思わず「いや……まさか……」と呟いていた。

 この目で見なければ到底信じられない様な事が繰り広げられたのだ。水魔法の後の火魔法。相反する2つの属性を扱える事がすでに珍しい中、風も土も、聖属性もだ!!


 今代の魔法師団長のユーライル殿でさえ4属性なのだ。あの天才と言わしめたユーライル殿を差し置いての5属性なんて今までいなかったはずだ。


 そもそも稀少な聖属性持ち、それだけで結婚相手には困らないと言われているのに全属性などと夢物語の様なもの……どうしたものか……


 そうして漠然と思案している中やってきたユグドルには更に驚かされた。

 そもそもユグドルは引っ張り上げていないと言うのだ。もう乾いた笑いしか出てこなかった。

 魔導師ガーレルの再来とでもいうのだろうか……


 暫くユグドルには箝口令と共にリーシェの家庭教師を休ませる事にした。そもそも聖属性を教えるにもユグドルには役不足だが、他の家庭教師が出入りすれば他家に話がもれるかもしれない。

 リーシェの家庭教師を休む時間はユグドルに全属性魔法の勉強をするように言い置き、このかつてない問題にどう対処するのか私は決め兼ねていた。





 そんな中、リーシェが執務室に訪ねてきたのは5歳の時以来の2度目だ。

 どうやら願い事があるらしく、あの時と同じ様に胸の前で両手の指を合わせてもじもじさせている姿はとても可愛らしいものだった。


 私の可愛い天使のおねだりかな?そんな目で見つめられたら何でも買ってしまいそうだな。新しいドレスか?それともネックレスや髪飾りだろうか?


 どんな物をおねだりされるのか高揚した心を落ち着けながら促すと、リーシェは「小さな宝石を取り扱っている商人を紹介して欲しいの」と上目遣いで呟いた。


 どうして小さな宝石なんだい、大きいものでも構わないのに。すぐにカルタムに取引のある商会を呼ぶように言う。


 どうやら何かをしているようだがまだ内緒らしく出来たら教えてくれると言うリーシェに、まだこんなにも子供らしい我が子をこれからの権力争いから守り抜くと誓った。

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