24.お祖母様に近づこう 6
翌朝―――もう領地から帰る日。まだぎこちなく硬い挨拶をしているお父様とお祖母様の下に行きお祖母様に抱きつく。
「お祖母様さようなら。また遊びにくるから、今度は一緒にお菓子作りしたいわ。ね、いいでしょ?お祖母様」
「っ、ああ、勝手におしよ」
少し驚いた顔のお父様とお母様に、訳知り顔のお兄様。
「お父様の視察の時一緒に連れて行ってくださいませ」
お父様達の下に戻りながら笑顔で言うとお父様も笑顔で頷いてくれた。そして笑顔とは言えないが少し柔らかい表情でお祖母様に向き合っていた。
「また……帰ってきます」
「あ、ああ……いつでも……帰っておいで……」
その言葉に、こちらを見つめて微笑んでいたお兄様と思わず手を握り合っていた。だってお父様が“帰る”って言葉を使った。2日前にこの場所で交わしたやりとりとは全然違う空気だったもの。
お互いに小さな一歩かもしれないが、歩み寄ろうという気持ちが伝わってきた。
馬車に乗り込むと、お父様とお母様は見つめ合い、優しく微笑んでいた。
「リーシェもアランも……お祖母様の事を私よりわかっているのかもしれないな……」
穏やかだけれど、少し寂しそうな目でお父様が見つめていた。
「お祖母様はお父様に嫌われていると思い込んでいるのですわ」
「なっ、そんな事は!誓って無い」
一瞬見開いた目を閉じ、強い意志でゆっくりと言った。
「ふふ、お父様とお祖母様はよく似てらっしゃるのですね。相手の事が好きなのに嫌われてると思って壁を作ってしまっているんです。そっくりです」
「そうね、リーシェの言うとうりよ。似たもの親子なんだから」
お母様とうんうん頷く。
「そうか、似ている……か……」
小窓から外を眺めながら少し微笑んでお父様はそう呟いた。




