22.お祖母様に近づこう 4
0時更新するつもりが寝落ちしました。すみません。
お祖母様に好きな食べ物や好きなお花を聞いていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「アランです。リーシェがこちらに居ると伺ったのですが」
訓練が終わり次第リーシェルの様子が気になってメイドに聞くと、大奥様の部屋にいると言う言葉に驚いてすぐに来たようだ。
「ああ、いるよ。おはいり」
「まぁ、アランお兄様お帰りなさい。一緒にお座りになって。いいでしょ?お祖母様」
そう言ってドアを開けたお兄様の手を引いて椅子に座らせる。ムスカがスッと紅茶とパウンドケーキを用意した。
「こちらはお嬢様がお作りになりました。大奥様もお気に入りのようでございます、3つも召し上がってらっしゃいましたから」
「なっ!まぁ、悪くない味だったね」
あら、お気に入りの部分は否定しないのね。ふふふ、ムスカとお祖母様の掛け合いって面白いわ。
思わずクスクス笑うとお兄様が不思議なものを見る目で見回していた。
「ずいぶん仲良しになったみたいだね。僕もご一緒できて光栄です。―――ところでこのお茶菓子はリーシェが作ったのかい?」
あっやば、お兄様は私が厨房に入った事もないの知ってるし、急にこんなもの作れたらおかしいわよね。えーと、どうしよう……
「あのっ、調理場のみなさんと仲良くなって、ルッツに手伝ってもらったのよ」
嘘ではないわよね、ルッツにオーブンの準備とか材料の場所とか教えてもらったもの。
「そうなの?ルッツってのは誰かな?」
なんだかアランお兄様の目が鋭くなってるような気がする。お兄様は侯爵家の令嬢が厨房に入るなんてやっぱり反対だったのかもしれない……
「ごめんなさい……厨房に入るなんて良くなかったわね……」
「なぁに、私も若い頃はよく厨房に入ったもんさ。そりゃ侯爵家に嫁いでからはめっきり減ったけどね」
リーシェルにウィンクしながら慰めるように言ってくれたお祖母様に下がっていた肩と眉が少し上がる。
「いや、リーシェを責めた訳じゃないんだよ。調理場の者を名前で呼ぶほど仲良くなったのかと思うと……」
「ルッツは見習いの調理人でございます。13歳から見習いになって、この2年間、料理長からもよくやっていると聞いております」
顎に指を当ててなんだか複雑そうな顔をした後、アランお兄様は両手で手を握りしめてきた。
「そう……あまり心配させないでねリーシェ」
「え、ええ。もちろん危険な事はしませんわ」
今回も結局オーブンに触ってすらいないもの。火傷しようもないわ。ふふ、お兄様ったら心配症ね。
アランお兄様と微笑み合っていた様子を、お祖母様とムスカが優しく見守るように見つめていた。




