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20.お祖母様に近づこう 2

 ルッツと話し込んでいるとオーブンからだんだん良い匂いが漂ってきた。ちなみに薪のオーブン?でピザ窯みたいなやつね。魔女が荷物をお届けする映画に出てくるようなやつで少し興奮した!


「そろそろ良さそうね」


 そう言うとルッツはすぐにオーブンを開けこちらを振り返る。


「すごく綺麗っス!」


 あー、良かった。分量とかうろ覚えだったから少し心配だったのよね。オレンジの輪切りが表面に乗っていて見た目も可愛いパウンドケーキ。2本焼いたからひとつは味見用だ。こちらを遠巻きにチラチラ見ていた他の料理人達に話しかける。


「調理場を貸していただいてありがとう。良かったら味見してもらえませんか?」


「え、あぁ、俺…じゃない私達もいただいていいんですか…いや、ございましょうか?」


「ええ、ぜひ感想を聞かせて欲しいの。それから厨房の中では私は新入りよ、そんなにかしこまらなくていいわ。―――ね、いいでしょ?ムスカ」


 時折覗きに来る入り口にいるムスカに言う。


「おや、気付いておられましたか。お嬢様がそうおっしゃるのならば、厨房の中限定ということで」


 私が気付いている事なんか知っていたはず。なんだかこの人お茶目だわ。なんて考えていたらルッツがパウンドケーキをカットしてくれていた。


「良かったっス。みんな言葉づかいが不安だからって遠くから見てるだけなんスもん」


「いや、お前がそんな口調のくせにペラペラ喋るから呆気にとられちまってよ。お嬢様、俺達も食べていいなんてありがとうございます」


「プロの料理人の方に味見なんて申し訳ないんだけど、お祖母様のお口に合うか見ていただきたいの」


 そう言ってルッツが持っていたお皿を持ちムスカや料理人の方達に差し出す。いただきますと言ってひと切れ取る指を思わず凝視してしまう。


「おぉ、うまい!オレンジの爽やかな香りが鼻から抜けてパウンドケーキのずっしりさと甘みに良く合っている。パウンドケーキに何か入れるなんて初めて見ました」


「わっ、うま!!パウンドケーキにオレンジ入れるなんて本当よく思いついたっスねー。このまま店だせるレベルっス」


「大変美味しゅうございます。大奥様もきっとお気に召す味だと思います。それから旦那様にも是非お出ししたいのですがよろしいでしょうか?」


 わぁ、すごい絶賛だわ!嬉しい!照れるー!!赤くなる頬を両手で隠しコクコク頷いた。



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