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18.お父様の過去

 その夜、視察から帰ったお父様はお土産に大量のオレンジを持って帰ってきた。スーっと爽やかな香りがロビーに広がる。

 1人で聞く勇気がなかった私は、夕食後アランお兄様と共にお父様の部屋を訪ねた。


「どうしたんだい?こんな時間に2人揃って」


「あの……お祖母様の事を知りたくて……」


 どうしても言葉尻が歯切れ悪くなってしまう。

 お父様はまたあの困ったような笑顔をして私達にソファに座るように言い、自分は窓辺に立ち外を見ながら話し出した。


「どうやら気に病ませてしまったようだね。………私には少し歳の離れた兄がいたんだ。兄は……とても優しく真面目な人だった……。私がまだリーシェくらいの頃にね、事故で亡くなったんだ」


 知らなかった。お父様にお兄様がいたことも、そして、亡くなってしまっていたことも……

 私もアランお兄様も、息を詰めて聞いていた。お父様はこちらを見る事なくじっと暗闇を見つめ続ける。


「父と母は私達兄弟に幼い頃から家庭教師を5人つけ、毎日勉強と訓練とレッスンの繰り返しだった。遊ぶ暇どころか、寝る間も削って……。私も兄も、父と母に認められようと必死だった。だが歳を重ねる事に増えていく勉強量に疲れ切ってもいたんだ。兄は……学園の勉強と次期侯爵としての勉強に追われ、碌に睡眠もとれていなかった状態で馬に乗っている時に気を失い落馬して……そのまま亡くなった。―――それからは父も母も私に厳しく言う事も無くなり……いや、見限られたのだろう、話す事も無くなっていった……。そんなんだったからね、母とお前たちを会わせる事もずっと躊躇っていた……」



 そんな……思わず呟くリーシェルは隣に座るアランの手を握っていた。アランもそれに強く握り返す。


 お祖母様は私達と必要以上に関わらないようにわざと遠ざけている……それでも挨拶や何か話しかけた時はぶっきらぼうだけどちゃんと返してくれるもの。決してお父様を見限るなんて事ないと思う。

 お父様とお祖母様の仲を取り持つ事は出来なくても……せめて私は、お祖母様の事をもっと知りたい。


「お父様、話して下さってありがとうございます」


 そう言ってアランお兄様と部屋を後にした。

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