13.マクレガー侯爵side
「これを……リーシェが?」
今日からアランに加えリーシェの家庭教師になったユグドルが、頬を上気させ提出した紙を見てなかなか言葉が出てこなかった。
侯爵家当主として家族以外にあまり感情を顔に出すことはない私も今はどんな顔をしているか知りたくもない。
「はい、およそ10分……迷いもなく解かれました」
ユグドルの言葉に手で顔を覆う。
我が子……天才かな……
天使のように可愛い上に優しくて天才だなんて。
「旦那様、思考が口から漏れております」
この事が広まればリーシェはまだ5歳なのに婚約の打診が沢山来てしまうだろう。
カルタムとユグドルを順に見遣る。
「この事はこの家の中だけの話にしよう。リーシェはまだ幼い」
まだ嫁にはやりたくない、注目させたくないと言外に匂わせる。
「承知しました。これからの教育方針としてはいかがなさいますか?」
さて、どうしたものか……
一時でもこれがアランであればと思った己を自制する。
アランは次期領主として十分優秀だ。最近始めた魔法の発動も素晴らしいものだったと聞いている。そして何より妹思いで社交的で優しい天使だ。
我が家には天使が2人いるのか。
「ふむ、文官になる訳でもない。無理に詰め込む必要はない。あの子のペースで進めてくれればいい」
そう、どうかのびのびと育って欲しい。我が兄のようには…なってはくれるな。