12.ユグドルside
信じられない気持ちでリーシェル嬢のテストを握り締めながらマクレガー侯爵の執務室へ足を進める。
初めて見かけたのは2年位前だろうか?マクレガー侯爵家の嫡男の家庭教師についてから1年が経とうとしていた時だ。
だいたい3年で平仮名と片仮名を終了する所を優秀なアラン様は1年で終えられた。
漢字に取り掛かる前のテストをアラン様が解いている間、なんとなく窓から外を見たのだ。
その日は久しぶりのいい天気で、庭園に使用人を連れたピンクのドレスの幼女が散歩をしていた。
アラン様の妹君かな?
それくらいの印象だった。
尋ねてみれば途端に目を輝かせて妹君の話をしだすその様は、優秀なアラン様の年相応な部分が見られて微笑ましく思えた。
それからはアラン様の剣術の稽古の時にたまに散歩をしている所を見かけ、休憩の時に走って抱きつくアラン様を何度か見送った。
挨拶をして言葉を交わした事は片手で数えるくらいだろうか……
そのリーシェル嬢の家庭教師につく事になり可愛らしい姿に頬が緩んだのも束の間、なんと平仮名も片仮名も読み書き出来るという。
間抜けな顔を急いで隠して作ったテストは最後の1枚に試しに漢字を少し混ぜ、算術も入れたもの。
そのテストをどこか嬉しそうに問題を解くリーシェル嬢のペンに迷いはなかった。時間にして10分かかっただろうか…
アラン様も常々優秀だと思っていたが、リーシェル嬢はそれを上回る天才タイプだ。
高揚した気持ちを押し込めながら執務室のドアをノックした。
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