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出会い

前々から書き貯めておいたものです。

といっても、メインである「コミュ障吸血鬼」の方を優先して書いているため、10話分しか書き貯めていないのですが……。

続きも随時書きますが、取り敢えず書き貯め分は毎日深夜0時に予約投稿致しますので、お読みいただければ幸いです。



「今日は綺麗な満月だから、良い薬草が取れそう」


 月明かりが差す窓から見える月を見て呟く。

 満月の時にしか取れない薬草があるから、心なしかワクワクしている自分がいる。

 それはそうだろう。

 今までその薬草が取れなくて完成しなかった薬が5つもあるのだから。

 そうと決まればと、私は迅速に手提げ籠を用意して着ているローブのフードを被り手持ち灯り(ランタン)を持ち、夜の森へと踏み出した。


「確か、あの薬草が生えてるのは湖のほとりだったよね」


 以前お母さんから聞きかじったことを思い出しながらそう呟き、手持ち灯り(ランタン)で先を照らしながら夜の森の中を歩く。

 湖までの道行きで見つけた薬草も取っておく。

 手提げ籠が半分くらい埋まる程度薬草を取ったところで湖に着いた。

 綺麗な湖だからか、水面にも月が浮かんでいる。


 ――綺麗だ。


 いや、そんなことより薬草だ。

 感激する思いを振り払って湖の周りに生えている草むらへと向かう。

 草むらの前まで来た私は、しゃがみ込んで手提げ籠を傍らに置き、手持ち灯り(ランタン)で草むらを照らしながら目的の薬草を探す。



 近づいてくる人影にも気づかずに。



 ◆


 草むらを掻き分けながら探していると、ひときわ白い花を見つけた。

 その花は、全身がほんのり淡く光っている。

 これが満月の時にしか咲かない、月花草(げっかそう)と言われる薬草だ。

 光っているのは、魔力がこもっているから。

 満月の光には魔力があるため、それを取り込んで開花するのがこの月花草。

 これで、今まで作れなかった〝上級魔力回復薬〟と〝上級回復薬〟と〝上級変身薬〟と〝上級透明化薬〟と〝上級俊敏薬〟が作れる。


「確か、根っこから取れば魔力が失われないんだっけ?」


 そう呟きながら月花草を根っこから引き抜く。

 数秒経っても月花草は淡い光りを保ったままだ。



 ――よしっ!



 心の中でガッツポーズした私は、月花草をそっと手提げ籠の中に入れた。

 そしてこの月花草、都合の良いことに、それぞれ使う部位が違うから、1本で五種類の薬が作れるという超おいしい薬草なのだ。

 でも、やっぱり1ヶ月に1回しか取れないわけだから、今日のうちに取れるだけ取ろう。

 そう思って探し始めた矢先――


「そこでなにをしておる?」


 右横から声を掛けられた。


「!?」


 驚きながらも、手持ち灯り(ランタン)を前に出しながら声がした方へ向く。

 そこには、綺麗なドレスに身を包み、私より少し年下くらいなのに私とは比べ物にならないくらい美人な金髪の女の子が立っていた。

 ただ、今は見惚れている場合ではない。


(な、ななな、なんで人が!? この辺りには〝人払いのまじない〟をかけておいたはずなのに!)


 なにせ、この森に住むにあたって森の入り口付近に強力な〝人払いのまじない〟をかけておいたのだ。

 というか、入ってこないようにかけた。

 だから、普通の人間がこの森に入ってくるわけがない。


「ここでなにをしているのかと聞いておる。はよぉ答えぬか」


 私より年下のはずなのに、明らかに偉そうな口調だ。


「……な」

「な?」

「な、なんでもありません~!!」


 そう言ってから、素早く立ち上がって方向転換し、手提げ籠を拾って全力で家に向かって走る。


「ちょっ、お主……おいっ、待たぬか!」


 ごめんなさい、止まれません!

 心の中でそう謝りながら、それでも全力で森の中を走るのだった。



 しかしこれが、〝魔女〟である私ことリナとドレスを着た金髪美人さんの()()()出会いであることなど、この時の私は、夢にも思っていなかった。



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