32.ガジス・アルトパキア戦争5
帝国陸軍が撤退するのを見ていた影があった。
ガジス王国の斥候である。
斥候は本陣が爆発し司令部がなくなったこと。帝国陸軍が帝都へ向けて進路を変更したことなどをガジス王に伝えた。
ガジス王はこれを好機と考えそしてやめとけばいいものを帝国陸軍を後ろから急襲するという作戦を立案した。
そして実行に移されたのである。
しかしスタート地点の距離の問題や追撃隊隊長が帝都への帰還を急いでいたことからなかなか追いつくことはできなかった。そこへ国際独立軍から連絡がきて本陣への攻撃は当方が行ったことであり援軍は果たしたという内容であった。
「国際独立軍はそこまで強大な軍事力を有しておったのか。これは誤算だったな」
ガジス国王は報告を行ってきた部下に対して言った。
「そうですね」
「そういえば帝国陸軍にうちの騎士団は追いつきそうにないのだな。帝国陸軍が帝都に入った時点でこちらは引き返す予定だったが国際独立軍が援軍を出してくれれば帝都を手中に収められるんじゃないのか?」
「はい。それは可能かと」
「では、国際独立軍に帝都襲撃の作戦を伝え援軍を派遣してもらえ」
「承知いたしました。連絡しておきます」
ガジス王国の司令部テントから連絡の騎士が出ていく。
ガジス王はこれから増える領土の事を考え口角が上がっていた。
~国際独立軍 指令基地~
「戦況を報告します。現在帝国陸軍は帝都に向かって敗走中。それをガジス王国騎士団が後を追っています。追撃隊かと思われますが行軍速度が遅く帝国陸軍に追いつきそうにはありません」
俺が指令基地の使い魔から報告を受けていると別の使い魔から報告が上がってきた。
「ただいまガジス王国騎士団から情報あり。内容は騎士団はこのまま帝都を襲撃する。その援軍を出してほしい。とのことです!」
「はぁ?あそこまでぼろぼろにやられたのにまだガジス王は戦争を続けるつもりなのか?」
俺が聞く。
「あの男はうちの援軍だよりで作戦を考えているのでは?」
スヴェートが言った。
「そうじゃないとこの行動に説明がつかないわなぁ。でもそんなことすればうちが侵略戦争仕掛けたことになる。それは却下だ」
「ではガジス王国に断りの返事を入れておきますか?」
「あぁそうしてくれ」
「承知しました」
俺はそう指示を出したのだった。
~帝国 帝都~
「陸軍がただいま帝都に帰還しました!」
皇帝が帝都の見張りの治安維持部隊から報告を受けていた。
「帰還した?陸軍は本作戦では敵王都に駐屯し帝都に帰ってくる計画なんてないぞ」
皇帝がそう返事したところで皇帝の間の扉が開かれた。
「報告します!私は陸軍臨時総司令官であります!」
「臨時?帝国陸軍総帥はどうした!」
皇帝が問い返す。
「総帥は戦場にて戦死しました。帝国陸軍司令部は壊滅。今現在私が一番位が高いのです…」
「なんで一般兵が無事なのに、司令部だけが被害を受けたのだ!」
「はい。敵は遠距離から攻撃する兵器を持っているようでした。しかしガジス王国にそんな兵器があるのは聞いたことがありません。これは国際独立軍の戦力を見誤った可能性があります!」
「なんだと?あんな新興の軍事勢力がそこまで強大な軍事力を保持していたと申すのか!」
「はい。それしか考えられません。至急帝国海軍に連絡を取った方が良いかと思います」
ダンッと皇帝は机に腕をたたきつけ叫ぶ。
「今すぐに海軍と連絡を取れ!」
帝都との治安維持部隊が皇帝の間からバタバタと駆けて行った。
皇帝が考えた最悪のシナリオよりもさらに悪いことが起こっているのだが帝国が知るのはもうちょっと先の話である。