31.ガジス・アルトパキア戦争4
帝国陸軍追撃隊は敗走するガジス王国騎士団を追っていた。
追撃隊が戦場を出発したのが1時間前。そしてガジス王国騎士団が戦場を出発したのは30分前である。
国王もいるので大分王国側に本陣を作っていたガジス王国騎士団の方が距離的にははるかに有利だったのだが国王の転進の命令が混乱した戦場では伝わりにくく帝国陸軍本陣から出立した追撃隊に追いつかれそうになっていた。
そのとき帝国陸軍本陣の方向から大きな爆発音と共に火柱が上がるのが見えた。
帝国陸軍追撃隊は即座に本陣へ向かって引き返し状況の確認へと向かった。
一方でガジス王国騎士団は様子見のため進軍を中止し帝国陸軍本陣へと斥候を派遣した。
追撃隊が本陣へ戻ってきて見た光景は炎上するテントらしきもの。司令部テントがあった場所は灰となったテントの材料らしきものが散らばっており所々に人骨らしきものが転がっていた。
「今すぐ消火活動をおこなえ!」
追撃隊隊長が叫ぶ。
そのとき上空をF-35Bが飛行していた。
「上空に何か飛んでいます!」
追撃隊隊長に報告が上がってくる。
「警戒しながら消火を続けろ!使えるものがあったら回収せよ」
追撃隊隊長命令を出すと思考を整理していた。
帝国陸軍本陣は無くなった。つまり追撃隊が今の帝国陸軍本隊である。
幸いなことに本陣の防衛戦力を今は亡き帝国陸軍総帥が追撃隊に回してくれていたので兵士がそこまで減ってはいなかった。
この空爆で失ったのは帝国陸軍の司令部と司令部の防衛として残っていた精鋭100名ほどである。
つまり今帝国陸軍の全権を持っているのは追撃隊隊長であり、それが自分自身だということに気が付いたのである。
「これより、追撃隊は帝国陸軍本隊と名前を変更する。そして本陣跡を消火し使えそうな物資回収後、一度帝都に帰還する!」
追撃隊隊長は命令を下す。
無防備だったとはいえ周りに敵のいなかったはずの本陣が爆発炎上し司令部が全滅した。
これを敵の攻撃以外になんと考えられようか。火薬に火の粉が飛んで爆発ということも考えられたが本陣に残っていたのは精鋭部隊である。そんなヘマをするとは思えなかった。
追撃隊隊長は本陣の爆発を敵の攻撃と断定し帝都へ戻ることにした。
皇帝陛下の意見を聞きたいというのもあったが接近しなくても敵を爆発させられる兵器を敵が持っていることを知り、もしその兵器が帝都を攻撃すると考えると治安維持部隊だけでは帝都は守れないと考え防衛に回るつもりであった。
そして帝国陸軍は帝都を目指して進み始めたのだった。




