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対抗戦②

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 スレイたちFクラスの面々がSクラスの生徒を倒したとき、観戦席は大歓声の声包まれていた。

 その理由は明白、今まで何度も行われていた対抗戦、これまで行われた対抗戦ではFクラスのメンバーがSクラスの生徒を倒すことなどなかった。

 だが今目の前で行われている試合でそれを見せられたら、観客は歓喜の声をあげている。


「ふふふっ、すごい歓声だね」

「えぇ。それ程までに今の勝利は得難いものです」


 そんな観客たちと同じように観客席で試合を観戦していたユフィたちは、冷静になりながらも内心では今にでも叫び出したい気持ちだった。


「ですが、これからが問題ですよね」

「うん。初手はうまく行ったけど次もこうとは行かないからね」

「もぅ!お二人ともなんでそんな暗いんですか!皆さんの喜びましょうよ!」


 無邪気に笑うノクトに今だけはユフィたちも賛同していると、そこへ背後から声が聞こえてきた。


「さすがは君たちが育てた生徒たちだ、たった数週間でより練度がましたみたいだね」

「お父様、おみえになられてたんですか?」


 聞き覚えのある声が聞こえ後ろを振り向くと、そこにはリーフの父アルフォンソとここでは少し怪しいフードを被った、多分見た目からして男性が並んで立っていた。


「さっき交代したからね」

「そうですか……ところでそちらの方はどなたなのですか?」

「あぁ……私の昔馴染みでね、試合を見たいからついてこい、ついでにあの生徒たちを育てたのはお前の娘とその友人だそうだな、継いでだ会わせろとせがまれてしまってね」

「おい、アルお前な」


 フードの男がアルフォンソの小脇を肘でつつくと、リーフがその声を聞いてギョッとした。


「い、今のお声……まさか!?」

「リーフお姉さん、お知り合いですか?」

「いや、あの……そのですね……この方はこの国の国王陛下です……」

「えっ?」

「はい?」


 ユフィとノクトはリーフの言葉に耳を疑ったが、アルフォンソが口に指を当てているので危うく声を出しかけたのをこらえて、なんとか口からでかかっていた言葉を飲み込むことに成功した。


「すまないね、これも仕事なんだ。どうかこのまま黙って見逃してあげてくれ、試合が終わったら引きずってでも連れていくから」

「お前、幼馴染みだからといって許されぬことはあるからな」

「だったら私たち騎士を困らすのは辞めていただけませんかね国王陛下!」

「なんだと!不敬罪でクビにしてやるぞ!」


 なんだか子供のような喧嘩を始めたリーフの父アルフォンソと、この国の最重要人物であるはずの国王陛下、二人がついに取っ組み合いをしだしたので、ユフィたちは目立たないようのその場から離れていったのだった。

 ちなみに自分の父親のあんな姿を見てしまったリーフは、いつもの穏やかな様子からは想像できない子供のような父親の姿に、かなり幻滅しているようだった。


 ⚔⚔⚔


 現実世界で大歓声が上がっている最中、スレイたちFクラスのメンバーはSクラスの面々を倒すために作戦をたてていた。

 だが、まずは敵の様子を確認するために、スレイは相手側の陣地を知っているルミアと一緒に、ソンフォン、ローザとパトリシアの三人を連れていった。


「森からは出るなよ?いくら距離があるからって言っても、さすがにバレるかもしれないからね」

「わかってますが……先生、なんか向こう警戒もなにもしてない気がするんですけど?」


 目を凝らして相手側の陣地を見ていたローザがそんな言葉をいった。


「大方、さっきので殺ったとでも思ってるんだろ?」

「どうします?フラッグはあそこ、向こうの代表生徒も指導者もあの大群の向こう」

「はっきり言って、僕たちじゃあの数は突破できないですよ……」

「乱戦になったら数が少ないわたしたちじゃ厳しいですよね」


 さすがに二十対百六十、さっきの四十人倒したことで戦力差は大体八倍となったが、それでもこの数を聞かされると四人とも弱気になっているが、そこにスレイが一喝した。


「お前ら、弱気になるなってさっきも言っただろ?数で負けてるなら頭を使え、周りにあるものそのすべてがお前らの武器だ。それをボクは死霊山で教えたはずだ」


 そう言うとルミアが何かを思い付いたのか、どこかで見たことのあるような笑みを浮かべるとスレイのことを見た。


「なにか思いついたのか?」

「はい。かなり大きな賭けですが」

「いい。はなしてみろ」

「はい。まず───」


 思い付いた作戦をスレイに話すと、なんともまぁ面白いことを考える物だと感心し、こんないい作戦を思い付いたルミアの頭を優しく撫でるのであった。


 ⚔⚔⚔


 対抗戦が始まってすでに三十分が経過していた。

 先陣を切ったのは、SクラスがFクラスを殲滅させるために放った四十人だったが、それがいつまでたっても帰ってこないことに、クラス代表である金髪の生徒が機嫌を悪くして、最近Sクラスに招き入れられた生徒に当たり散らしていた。


「あんのグズどもが!いつまでモタモタしてる気だ!!」

「やっ、やめ……」

「うっせぇんだ!どうせここから出りゃあ治んだ!我慢しやがれ!!」


 そういうと、無抵抗の生徒に籠手を着けた手で殴り付けていた。

 それを見ていた他の生徒たちは、ギュッと手を握りしめながら歯を食い縛っていた。

 元々こんなクラスに入るつもりはなかった彼らだったが、声をかけられた時点で拒否権など無かった。

 強制的にSクラスに入れられ、初めの練習試合で元とは言え自分のクラスと戦わされた。

 それに元々彼らはFクラスに偏見など持ってもいないのだ。


「やめなさい、そんなものに当たるなど体力の無駄ですよ」

「わかってますよ先生、でももうこいつ戦えないし、おいお前」

「は、はい……」

「こいつ殺しとけ」

「なっ!?」


 金髪の生徒に名指しされた少年は驚きの声をあげる。

 それと同じように他の生徒たちからの同じような声が上がった。


「さっさと片付けとけよ」

「な、仲間を斬るんですか!?」

「ゴミだろ、こんなの。おいテメェらよく聞けよ、ここで本来のSクラスである俺の命令に歯向かえば、騎士団での居場所はない、わかってるのか?」


 ゆっくりと剣を抜いた少年は、他の生徒に起こされたボロボロの仲間を見下ろし、その手に握っている剣を振り上げるが、少年の振り上げた剣は震えていた。

 その様子をみてニタニタと嫌らしい笑みを浮かべるクラス代表は、他の生徒たちと一緒に手拍子をしながら何度も、殺せ殺せとコールしている。


「た……たの……む……」


 仲間からのその言葉を聞いた少年は叫び声を上げながら剣を振り下ろそうとしたそのとき、シュッ!っと何かが風を切る音が聞こえ、それに遅れて何かが突き刺さる音が二つ聞こえた。


「あ……が……ぁっ」

「ぅ……あっ」


 カラーンと音をならして落ちるのは、剣を振り上げていた少年の剣だった。

 そしてその少年と向かい合うように座らされていた少年の首には、深々とナイフが突き刺さっており、その一撃が致命傷となったのか二人の生徒が首に刺さっていたナイフを残して消えていった。

 Sクラスのメンバーとその指導者であるベクターが、ナイフの飛んできた方を見るとそこには真っ白な髪をした冒険者の少年と、二人のFクラスの生徒が立っていた。


 ⚔⚔⚔


 本当はナイフなど投げるつもりはなかった。

 だが、気づいたときにはすでにスレイはナイフを投てきしあの二人の生徒を殺していた。


「なにやってんだアルファスタ」

「いやすまない、ボクとしたことが冷静さを失っていたみたいだ」

「いいえ、先生が投げてなかったらオレがやってました。いくらなんでもアレは見過ごせない」


 懐から投擲用のナイフを取り出したベルリを見ながらスレイは頷く。

 いくらここを出れば傷が治るからといっても、仲間内であんなことをさせるとどうあっても後で角がたつ、それどころか斬った方も斬られた方も心に傷を負ってしまう。

 その事はここにいる誰もが気づいていた。そして、今の行為でキレたスレイは若干ではあるが心の中で少しだけ心苦しいと感じていたことを、もう容赦なくやってやろうと思った。

 そのためにとスレイは全力でいい笑顔を作りながら叫んだ。


「おぉ~い、そこにいるハゲターさーん!それとキチガイ金髪代表くーん、いつまでも来ないから、こっちから来てあげましたよー!」


 スレイの大声を聞いてベクターとSクラスの代表の額に青筋が浮かぶ、それを見たスレイはここから怒涛の言葉の応酬が始める。


「ねぇねぇ、ロッドくん、ロッドくん」

「気持ちわりぃ、何だそのテンション?」

「気にしない気にしない。それよりもボクは今一つどうしても確認したいことがあるんだけどいいかな?」

「なんだよ突然」

「いやねぇ、彼らは本当にSクラスの生徒だったのかなぁ~って思ってさ!」


 最後の方わざと大きな声で叫んでみせたスレイにSクラスの全員の視線が注がれた。


「急になんでそんなの聞くんだよ?」

「いやね、信じられない訳じゃ無いんだけどさ、さっき倒したのもスゴく弱かったじゃん。だからもしかしたらさ、ほんとはチガウンジャないかなって思ってさ!」


 またもや大きな声で叫んだスレイにザワザワと声が聞こえてくる。

 するとここまできてようやくスレイのやろうとしている意図を察したロッドが合いの手を入れた。


「それは間違いないはずだぜ、あいつらの顔は何度も見てたんだが、確かにおかしいよな。あんなに弱かったとは思わねぇんだが?」

「うんうん、確かに弱かった……あ!もしかして、教えていた先生が悪かったのかな!?」

「ブフッ!?」


 スレイの渾身の嫌味とオーバーリアクションがツボに入ったのかベルリが吹き出すのを見て、ちらりとベクターをみると顔が真っ赤に染まっていく。

 これはもうひと押し入るなと思い止めの言葉を叫んだ。


「そうか!それで思い悩んでしまった結果、あんなに髪の毛が抜け落ちてハゲになってしまったのか!?」


 大袈裟に驚くような演技を繰り広げるスレイは、チラチラとSクラスのいる場所を見ているがベクターの顔が面白いように真っ赤になったのを見て、大慌てでスレイは謝罪の言葉を叫んだ。


「あぁっ!?すみません話、きこえちゃってましたか!?ごめんなさい!──あっいやでも、ハーゲタさんが悪いってわけじゃないですよね!」


 突然ベクターに誤ったと思ったら、今度は誰を標的にしたのかと思っていると、またしてもスレイの言葉の応酬は続いた。


「あそこにいる代表の生徒くん、あの子が酷かったからハードハゲさんの心労が溜まった結果……そうは思わないかねベルリくん?」

「クフフッ!はい。先生の言うとおりですね」


 さっきまで笑っていたベルリがスレイの言葉を肯定すると、スレイとは違ったアプローチをかけた。


「あんな俺の言葉にキレてしまうなんて、忍耐が足りませんよ。イヤだな、あんな単細胞とも言えるバカは、あぁ〜嫌だ嫌だ」


 ちらりとスレイとベルリがSクラス代表の顔を見ると、こちらは完全にキレている。ベルリの言うとおりかなりの単細胞のようで、簡単にはキレてくれるお陰で煽りやすくて物凄い助かる。


「お前ら!あいつら殺してこい!」

「フラッグの護衛を残して残り全員でかかれ!!」


 キレた二人が叫びながら指示を出している。そのお陰でかなり作戦通りに事が進んでくれることに、スレイたちとしては喜ばしいことこの上ない。

 指示を受けてしぶしぶといった具合にこの場に残っていた半数以上の生徒が、平野の中腹の辺りに立ち尽くしているスレイたちに向かってきた。


「チッ、全員で来てくれりゃあ楽なのによぉ」

「こらこら、ロッドくん、そういうもんじゃないよ?さて、二人とも、ボクたち三人であの軍勢を相手取るわけだ、気を抜いて殺られるんじゃないよ?」

「ハッ、お前の銃弾とあの山の魔物に鍛えられた俺だぞ?負けるわけねぇだろ!」

「こう言うときだけはロッドに同感だ。今さら負ける気はしませんよ」

「よく言った、これが終わったらボクがクラスの全員に好きなだけ夕飯を奢ってやる。だから勝つぞ」


 ニヤリと口元を歪めた二人が武器を握ると、向かってくるSクラス相手に距離を詰めると、ロッドは身の丈ほどの大剣で振り抜くと同時に吹き飛ばし、ベルリはその俊敏性を生かし相手の懐に潜り込んでは相手の首や急所を剣で斬り倒していった。


 ⚔⚔⚔


 一騎当千とまでは行かないが、それでも確実に力を付けている二人、相手との間合いもしっかり取り背後からやってくる相手にも、気配を察知しなんなくかわすか防いでいるので全く問題はなかった。

 そしてスレイはと言うと


「ほらほら、そんな剣筋じゃ魔物一匹倒せないよ?」


 いつかのごろつきを相手どった時のように素手で剣を受け止めたり、今回は手加減無用なため気絶させるだけではなく確実に仕留めにかかっている。しかも素手で、もう一度言っておく、素手でだ!


「なんで剣が効かねぇんだ!?」

「さっき、鎧を指で貫かれてたぞ!?」

「ば、化け物だぁぁぁああああっ!?」

「失礼な、れっきとした人間だ!」


 これまたいつぞやと同じツッコミを入れたスレイが手刀でSクラスの首を落とした。

 ちなみにこれも人外の領域に足を踏み入れた訳ではなく、ただ単に前と同じ爪の先に闘気を集中させ刃のようにしているだけで、大事なことなのでもう一度言っておくが人外の領域の踏み入れたわけではありません。


「ふむふむ、そろそろ頃合いかな」


 目の前の相手から一瞬だけ視線をはずしして後ろを見ると、隙き狙って襲ってきた生徒の首を瞬時に落とす。

 闘気による身体強化を脚に施し強化した脚で地面を蹴りあげたスレイは真上に飛び上がり、空中に作り出したシールドを踏み台にしてベルリの横の降り立つ。


「ベルリ、そろそろだ。ロッドの方に行くよ」

「了解です先生!」


 スレイとベルリがSクラスの生徒たちの間を縫ってロッドの方に向かうと、そこには今までスレイがズタボロにしてきた反動なのか、端から見ると狂人かはたまた精神破綻者かなにかか勘違いしてしまうような表情を浮かべてSクラスの生徒を切り伏せるロッドがいた。


「オラオラ!どしたッ!そんなんじゃオレを殺せねぇぞ!かっかってこんかいッ!」


 まるで暴走した戦闘狂のようだと思ったスレイは、自分がもう少しうまく指導していればと思い悩んだ。


「教えるのって難しい」

「先生頑張って──おいロッド、戻ってこい!」


 そんなロッドに向けてベルリが声をかけるが全く声が届いていないどころか、高笑いまで始まった。


「全然聞こえてない」

「仕方ない、ボクが止めてくるか」


 立ち直ったスレイが生徒たちの合間を縫って狂人となったロッドの後ろに近づいた。


「少しはこっちの声を聞け!!」


 その場で真上に飛び上がったスレイは、空中で回転しながらロッドの後頭部を思いっきり蹴り飛ばした。


「ゲボラッ!?」


 蹴り飛ばされたロッドは変な声を上げながら吹っ飛んでいった。ついでなのだがロッドが吹き飛ばされる過程でSクラスの生徒を巻き込んでいき、そのお陰でかなりの人が吹き飛ばされ大きく空間が空いた。

 味方であり自分の生徒でもあるロッドを蹴り飛ばしたことに、Sクラスの生徒たちは目をひんむいて顎の限界まで大きく口が空けられた。


「テメェアルファスタ!俺を殺す気か!!」

「いいからこっち来い、作戦を忘れるなっての」


 そう言うとロッドは慌ててこっちに来ると、スレイは三人を覆うようにシールドを張ると、その行動にSクラスの生徒たちが攻撃を仕掛けようとしたその時、上から魔法の雨が降ってきた。

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