教師スレイ
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朝早くから宿を訪問してきたリーフ、それに対応したスレイはとりあえずお腹が減っていたので、朝食を食べながら話を聞くことにした。
「ロンさんが派遣してくれたのが、まさかリーフさんだとは思いませんでしたよ」
「実は昨日、隊長からお話をいただきまして……ご迷惑ではありませんでしたか?」
「まさか、リーフさんに来ていただけてボクはうれしいですよ」
「う、うれしい!?」
ボッと顔に緋が灯り裏返ったリーフの声に驚いたスレイ、なにか変なことを言ったかと思った。
「だ、大丈夫ですか?」
「はっ、はいっ!それではスレイ殿いきましょう!さぁ行きましょう!」
「あっちょっ、リーフさん!?ボクまだ食べ終わってない!?ってかユフィとノクトがまだ寝てますから!」
「あぁ!そ、そうでしたね、すみません」
良かったと思ったスレイは胸を撫で下ろしていると、次の瞬間、リーフはとんでもないことを言い出した。
「では、じじじじっ、自分が食べさせてあげます!」
「はっ!?───むぐっ!?」
聞き返そうとしたスレイの口のなかに、少し大きめのバケットサンドがねじ込まれた。
ちなみに今朝のスレイくん朝食のメニューはこちら、コーヒーにコンソメスープに似たスープと新鮮野菜のサラダ、そしてメインとなっているのがサンドイッチだ。
サンドイッチに挟まれているのは薄切りのハムとチーズそして数種類の野菜と、どこにでもあるようなサンドイッチだ。
だがその素材を挟んでいるパンが違ったのだ。
何が違ったかと言うと、柔らかい食パンではなく噛みごたえのある少し大きめのバケット、つまりはバケットサンドなのだ。
それを口のなかにねじ込まれた。
「んーー!んんーーーッ!?」
押さえ込まれているせいでうまく噛みきれないスレイは、リーフに苦しいと訴えているが顔を真っ赤のして目を廻しているリーフには聞こえていないようだ。
「き、騎士様!?アルファスタさんが死んでしまいます!?」
「あっ!あわわわわっ!?すすすす、すみません!?」
押さえるのをやめてくれたお陰でなんとか窒息死は免れれるようだ。
顎の力を強化してバケットサンドを噛みきったスレイだが、口のなかいっぱいに押し込まれたせいかなかなか飲み込めない。
仕方ないと思ったスレイはコーヒーで流し込もうとカップを傾けようとした時、
「スレイ殿こちらを──あっ!?」
「あっちぃー!?」
まさかのティーカップをひっくり返し、流れ出た紅茶がスレイの足にかかった。
「も、もももっ、申し訳ありません!?」
今ここでよくわかった。
リーフはユフィを遥かに越えるドジッ娘なのだということに、それに気付いたスレイはユフィとリーフ、この二人のドジが同時に発動されたらどうなるのか、考えただけで恐ろしくなったのだった。
朝っぱらから火傷の治療を行ったスレイはなんだか疲れた感じになった。
「あぁ!だからスレイくんこんなに疲れてるんだ」
「その……なんと言いますか……本当に……申し訳ありませんでした」
納得したようにうなずいているユフィの顔はなぜか晴れ晴れとした様子で、スレイにはその表情は全く納得のいかない表情で見ていた。
ちなみにリーフは申し訳なさそうに落ち込んでしまった。いったい、朝からなにをやっているんだという感じになった。
「お兄さん、火傷は大丈夫なんですか?必要なら治療しますよ?」
「平気だって、治癒魔法はボクもできるし、これでも先生の診療所の手伝いもしてたし」
「でもお薬の調合は苦手だよねぇ~」
「そこは適材適所ってことでユフィに任せます」
「調合の練習ならわたしが付き合いますよ?」
三人で笑いあっていると、なんだかリーフの表情が険しくなってきていたのをみて、どうかしたのかと訊ねた。
「皆様はどうして今回の依頼を、お受けいただけたのですか?」
「どうしたんですかいきなり?」
「ちょっとした興味から聞いてみたいんです」
今回、リーフたちの騎士団がギルドに依頼した物は、冒険者にとっては不利益になるような内容の物で、その内容を知っているリーフでさえ何度も今の隊と上に掛け合ったこともある。
それでも、このその依頼を受けたスレイたちは、二ヶ月もの時間をもしかしたらムダにするかもしれない、その理由をどうしてもリーフは聞きたくなってしまったのだ。
「今回の依頼、皆様には不利益なものです。それなのになぜこの依頼を受けたんですか……?もしかしたら時間をムダにするかもしれないんですよ」
「あぁ~そういうことですか……」
ようやくリーフがこんなことを聞き出した理由を察したスレイは、この依頼を受けた理由を包み隠さずに話すことにした。
「まぁボクもユフィもノクトも、ただ気に入らなかったからですね」
「はっ?」
スレイの答えにリーフは目を丸くして驚いたのをみて、スレイがその話をしようとしたのだが、
「説明に来たあの騎士、冒険者のことをバカにしたんですよ!本当に失礼ですよ!まったく!」
「わたしたちのことはいいんです……でも、職員の方にまで失礼なことをしました。それが許せないんです!」
「それは……我々の不始末です……申し訳ありません」
「いや、別に謝って欲しいわけじゃないですし。見返したいとかじゃなくて、ただ分からせたいんですよ。あまり冒険者をなめるんじゃない、ってね」
目付を鋭くなったスレイ、その目を向けられたリーフはドキリとさせられてしまった。ユフィはその変化を見逃さなかったが、
「スレイくん、リーフさん怖がってるよ?」
「ごめんなさい」
「あっ、そんなことはありません!むしろカッコ良かったです!」
「はっ?」
「な、なななな、なんでもありません!?」
顔を真っ赤にしているリーフにスレイは驚いていた。
そんな二人のやり取りを楽しそうに見ていたユフィにノクトは話しかけた。
「ユフィお姉さん、わかってていってますね?」
「さぁ、なんのことでしょうか~?」
そ知らぬ顔でしらを切るユフィに、ノクトはムスッとしていたが、そこにあることを気づいていた。
「あの~、早くいかなくてもいいんですか?もうすぐ八時ですけど?」
時計を見たスレイ、ユフィ、リーフの三人、初日から遅れるのは不味いと思い走り出したのだった。
⚔⚔⚔
なんとか時間に間に合った四人は、学園の職員室にやって来ていた。そこでスレイたちが担当するクラスの担任に挨拶に来たのだ。
「君たちがか……まぁ大変だろうけど頑張ってください」
スレイたちの担当するクラスの担任はかなり若かったが、どうにもなにかあわれみにも似た表情でこちらを見て、さらにかけられたその言葉になぜか引っ掛かりを覚えてしまった。
外から見ても思ったことだがかなり広いと思うのと同時に、小さい子供も多いと感じた。
「この学校って、何歳から通えるんですか?」
「えっ、あぁ、もしかして別の国から来たんですか」
「はい。産まれは別の国でして」
「納得しました。ここは十二歳から成人する十五歳まで通え、学年は全てで三つ、その間に騎士として必要になる技術を学ぶんですよ」
「へぇー、女の子も多いんですね~」
「あっ、本当ですね」
「あぁ貴族の子女ですよ以外と多いですよ……そこのリュージュ君もここの卒業生ですし」
先頭を歩く教師の言葉でスレイたちはリーフの方を見た。
「覚えていていただけたのですね」
「えぇ、学園始まって以来の問題児でしたからね」
「「「えっ!?」」」
三人が揃ってリーフの方を見た。
その意味は真面目そうなリーフがなぜ問題児などと呼ばれているのか、真面目に理由がわからないといった顔です。
「な、何ですか!?問題児とは言っても、間違ってることを間違ってるといっていただけです!なにも喧嘩したりとかはしてませんからねスレイ殿!」
「いや、ボクに弁解しないでください」
必死にスレイにだけ弁解する。
「あ、そうだ、この腕章付けといてください」
それは学園の校章の刺繍がされた腕章だった。
どうやら学園の教師たちは専用の制服が用意される。もちろん、数ヶ月 だけとは言ってもここの教師をやるスレイたちにも支給されるのだが、決まったのがギリギリだったせいもあって用意が出来なかったらしい。
なのでこの腕章はその代用品だそうだ。
「まぁ、二ヶ月持ってくれればいいんですがね」
「どう言うことですか?」
「すぐにわかりますよ……っとここだここ」
教師が扉を開けると、その教室にいたのは下は十三才、上は十五歳の少年少女たちが二十人ほどいたのだが、彼らの目にはどこか覇気がない、絶望の色が見えたのだった。
⚔⚔⚔
教室に入ったスレイたちは教壇に立つと、教師が手を叩いた。
「はい、彼らがギルドから来た冒険者の方々だ今日から二ヶ月、対抗戦までのあいだ指導してもらう。すまないが自己紹介をお願いします」
「はい」
返事をしたスレイは、教壇の中央に向かうとまずは学生たちの顔をみる。
「初めまして、スレイ・アルファスタです。これから二ヶ月の間、どうかよろしくお願いします」
「ユフィ・メルレイクです。私は魔法使いなので剣は使えませんが、皆さんとは楽しい二ヶ月にしたいと思っています」
「ノクト・ユクレイアです。二ヶ月間一緒に頑張っていきたいとおもっています。よろしくお願いします」
三人が挨拶を終わると教師が教壇に戻る。
「それじゃあこれから、これから訓練場に行くぞ」
「はぁ?必要ねぇだろ?」
突然そんな言葉が聞こえてきた。
クラスの生徒たちが一斉にその発言をした生徒の方に行ったので、スレイたちもその視線を追ってみると、そこには明らかに不良といった風貌の短髪の生徒がいた。
「彼は?」
「ロッド・バイスター。このクラスでは多分一番の強者でしょうね」
「へぇー……ロッドくん、今の発言はどういう意味かな?」
「どうもこうもねぇ、俺たちゃどう頑張っても退学が決まってるんだ今さら頑張ったところでどうにもなんねんだよ!」
スレイは教師の方を、ユフィとノクトは隣にいたリーフの方を見ていると、二人とも視線を会わせようとはしないのをみて、先程ロッドが言った言葉を考える。
「問題児ばかりが集められた……そんな訳はありませんよね?」
どうみても真面目そうな生徒たちが多いのでそれはないとスレイは即座に否定した。
「……ここにいる生徒たちは、みな落ちこぼれなんです。闘気も纏えず、魔法もうまく使えない。そんな生徒たちが集められたクラスなんですよここは」
それを答えたのは金色の髪ツインテールに纏めた女の子で、それに同調するように他の生徒たちも話し出した。
「要するに時間の無駄なんですよ」
「帰りなよ。依頼はどうせ達成できないんだからさ」
「無駄なんだよ始めっから」
「対抗戦なんて名ばかりなんだよ……あと二年、僕たちは晒し者にされるんだ」
自分達のことを卑下にする生徒たちを見ていたスレイたちは、大きく息を吸うと、ここまで案内してくれた教師に向かって声をかける。
「訓練場の使用時間って有るんですか?」
「え、えぇ、今日はこのあとの一時間だけで、後は好きなように使ってくれて構いません」
「ふぅ~ん、ならもう一つ、ここにいる子達は全員が闘気、もしくは魔力を使えるんですよね?」
「はっ、はい。この学園の入学の最低基準ですので」
「そうですか……ならみんな今からすぐに準備して訓練場にいくよ」
スレイが生徒たちにそう伝えると、再びロッドが抗議の声をあげる。
「はぁ!何でお前に従わなきゃいけないんだっての!」
「それもそうだね……じゃあ、そこの君、名前は?」
スレイは前列にいた気の弱そうな女の子に声をかける。
「ゆ……ユン、です」
「そうか、ユンちゃんは魔力と闘気、どっちが使えるんだい?」
「えっ、と、闘気です……け、けど……うまく纏えなくて……」
「そうか、なら悪いんだけどボクの手を握ってもらえるかな?」
「はっ、はい」
スレイが差し出した手を握ったユン、するとスレイの手を伝わって闘気がユンに流れてくる。
「えっ!?どっ、どうして!?」
「ちょっと黙ってて、すぐに終わるから」
スレイが言った通りユンに流れていた闘気はすぐに消えたのだが、教室に中には騒がしくなった。それは、ユンの周りに微かに闘気の光が纏われたからだ。
「押さえかたはわかるね?」
「はっ、はい」
闘気の光が消えると、スレイはもう一度闘気を纏ってみるように言う。するとユンの身体に闘気の光が溢れ出ると同時に、ユンの口から興奮したようき声が上がった。
「わ、わわわわっわたし、闘気纏えてる!纏えてるよぉおお!」
「なにをやったんですかスレイ殿!?」
リーフが慌てた様子でスレイに駆け寄ると、やった本人は平然と語り始める。
「闘気の使い方って魔力と似てるんですよ、うちの妹が魔法を習いだしたとき、魔力がうまくコントロール出来なくて、その時に先生から教わった方法を応用したんです」
ミーニャがクレイアルラから魔法を習いだしたとき、どうしても魔力を身体の周りに纏うことができず悩んでいた。
その時にクレイアルラから一度その感覚を身体に覚えさせればいい教わり、実践したのが自分の魔力で一度ミーニャを覆い、そこにミーニャ自身の魔力を引っ張り出し自分の魔力を押さえていく。
それを闘気で実践したのだがなんとかうまく言ったようだ。それをリーフと教師に説明すると、二人とも唖然とさせられた。
「さぁ、どうする、これからの一時間、自分達を見下してる奴らを見返したい、このままじゃ嫌だと思ってるなら訓練場に来て、それでもいいって言うならこの教室でふてくれるのもいいよ」
スレイは生徒たちの顔を見る、そこには先程の自分のことを卑下にしていた目ではない、やる気になった、奮い立った、熱意ある闘志の宿った目だった。
「さぁ、選ぶのは君たちだよ」
これからしばらくは学園編が続きます。これからもよろしくお願いします。




