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新たな旅路

始めに謝罪を、今日はバレンタインと言うわけで番外編の話を書いていましたが、すみません、間に合いませんでした。なので本編の続きを投稿させていただきます。

 使徒との戦いが終わってから一夜が明けた。

 朝日がカーテンの隙間から差しこみスレイの顔を照らす。


「ん……んぅ~、ふぅ~はぁ~……朝か……あぁ~、やっべ、これ完全に二日酔いだ」


 起き上がったスレイは、大きなあくびをして痛む頭を押さえながら昨日のことを思い出した。

 昨夜はユフィが祝勝会ムードになり、ノクトもそれに賛同したため深夜まで三人で呑んでいた。

 もちろん未成年であるノクトには呑ましていないが、ジュースだけで深夜まで付き合っていた。

 近くに置いてあった時計を見ると、時計の針はあと少しで朝の九時を回ろうとしていたのを見たスレイは、もう一度ベッドの上に寝転ぶ。


「今日は完全にオフだな」


 昨日の戦いで体力も魔力もかなり使い過ぎたのと、半ば使い捨てにしてしまったスレイのソードシェルと、使徒を繋ぎ止めるためにダメにしてしまった黒鎖の補修。

 使徒の衝撃波によって破壊されてしまったユフィの各シェルの修復と補填、使い潰してしまった大量のノクトのポーションの補充と、やることは沢山ある。

 だがまずはもう少しだけ寝ていようと思ったスレイはベッドで身をよじり寝返りをうった。


 ──むにゅ


 何やら一肌に暖かくとても柔らかい物が手に当たった。というよりも手の中に収まった。

 この部屋の中にこんな柔らかい物が、それも特に荷物の置いてないこの部屋のこの部屋のこのベッドの上に置いてあっただろうか、いいや置いていなかったはずだと、一瞬で頭の中に思い浮かべたスレイは、ならばこの柔らかい物はいったい何なのか?

 まさかと思ったスレイは恐る恐る目を開けて見てみると、スレイの右側ですやすやと寝息をたてている薄着のユフィ、そんなユフィの豊満な胸にスレイの手が乗っていた。


 ──な、なななな、なんでユフィがッ!?


 驚きのあまり起き上がりさらには大声を出しそうになったが、ユフィの寝顔を見て慌てて口をおさえ声を出さないようにこらえた。衝撃のあまり眠気と二日酔いが一気に覚めたスレイは、自分が触っている物から慌てて手を放し後ろに下がると何かに手が当たった。

 まさかと思い、恐る恐る振り向くと再びスレイが固まってしまった。


 ──だからなんでノクトまでいるの!?


 スレイの左側には同じく薄着、というよりもこちらは完全に下着のような格好のノクト。

 なぜこの二人がここで寝ているのかわからないスレイ、取り敢えずもう目が覚めてしまったのでベッドにいる理由もなくなった。

 二人が寝ているうちに着替えを済ませ部屋を出ていった。


⚔⚔⚔


 早足で階段をかけ下りて宿の一階に降りていった。


「おやおはようさん、今日は遅かったね」


 スレイに声をかけてきたのは熊耳の女将さんだった。


「おはようございます。昨日三人で明け方近くまで呑んでたので」

「そうかいそうか、それで二人はまだ寝てるのかい?」

「そうみたいですね。多分昼頃までは起きて来ないんじゃないんですかね」

「ふぅ~ん、それで朝食は食べるのかい?食べるんだったらすぐに用意するけど」

「あぁ~……それじゃあいただきます。後コーヒーブラックでください」

「はいよ、ちょっと待っててな」


 朝食を食べ終わったスレイは一人で町の中を歩いていく。

 目的地は武器屋、使い潰してしまったソードシェルの元となるナイフを買いに来たのだ。

 錬金術でナイフを作ってもいいのだが、やはり本職が作った物の方がいいときもあるのだ。


「ナイフは買えたし、二人にお土産でも買って帰るか……アレってもしかして」


 なにかいいものはないかと出店を見て回っているスレイは、人だかりの向こうに見慣れた人物の姿を見つけたスレイは、挨拶だけでもしておこうと思い後を追った。


「ルードスさん、マリナさん、ユリーシャさん、リリアさん」


 スレイが前を歩いていた四人の名前を呼ぶと、声をに付いた四人が振り返った。


「おぉ、スレイ、久しぶりだな」

「お久しぶりです。これから依頼ですか?」


 四人とも武器を手に持ってたのでそう思ったのだが、リリアが首を横に降った。


「いいや、ちょっと首都の方に呼ばれたんだ」

「なんでも指名の依頼が入ったらしいんですよ」

「それで一月は向こうにいかなくちゃいけないのよぉ~、お家が大変なことになっちゃうわねぇ~」


 ルードスの嫁三人が口々にそんなことを言っている。


「それじゃあ今日会えて良かったです」

「お、何かあったのか?」

「ボクたち、明日にでもこの国を出ようかと思ってたんです」


 元々ここに来た目的自体、ランクアップ試験を受けるためだったので、すぐにとはいかづとも一月くらいで町を出るつもりだった。

 ちょうど目的も出来たので次の場所に行っても良いだろうと、全員が納得してのことだった。


「あらあらまあまあ、それは寂しくなるわぁ~」

「ホントだな、まだアタシとの手合わせもしてないってのに」

「リリア、少しは自重しなさい」

「また遊びに来ます。その時にでも手合わせしましょう」


 本当はあまりしたくないのだが、そう答えておくとルードスがスレイの前に立った。


「お前ならこの町で一番の冒険者になると思ったんだがな」

「まだまだ旅を始めたばっかりなので、早々に終わらせるわけにはいきませんよ」

「そうか……いやそうだな」


 ルードスなにかを思ったらしく黙り混むと、今度はなにも言わずに右手を差し出した。


「またなスレイ」

「はい。別の大陸に渡るときここの港を使うと思いますので、そのときは一緒に依頼に行きましょう」

「おう、その時を楽しみにしてるぞ」


 固い握手を交わしあったスレイとルードス、別れは悲しかったがまた会う約束をし四人と別れたスレイは、ユフィとノクトの待っている宿へと戻っていった。


⚔⚔⚔


 次の日、スレイたちはギルドに訪れいた。


「短い間でしたがお世話になりました」

「アレクシスさんお世話になりました」

「ありがとうございました」


 旅のマントを身につけたスレイ、ユフィ、ノクトの三人はギルドマスターであるアレクシスにお礼を言った。


「次の国へ行くのか」

「はい。まだまだ行ってみたい場所が結構ありますので」

「そうか、それで次はどこに行く気なんだ?」

「今度はロークレアに行こうと思います。まぁそこの誰かさんがですけど」

「お兄さんが一度は大陸一の騎士団を持つ国に行ってみたいって言うもので」

「いいだろ近いんだから……ってか剣を握る者のなら、いいや男なら一回は見てみたくなるだろ、この大陸随一の軍事力を持つ騎士国家ロークレア」


 スレイが二人に向かってそう反論すると、ユフィノクトの目が笑っている。


「はっはっはっ、スレイも男だな」

「ちょ、アレクシスさんもそう思いませんか?」

「まぁスレイは置いとくとして」

「アレ、無視された」


 同士だと思っていたアレクシスに無視されて、少しだけショックを受けているスレイをよそに、アレクシスはディスクの上に散乱している資料の中から一枚の紙を引っ張りだし、それをスレイたちに手渡した。


「これって依頼書ですよね」

「あの、この依頼書に書かれてるウルレアナって、ロークレアの首都でしたよね?」

「ならこれってロークレアの……なんでアレクシスさんが持ってるんですか?」


 依頼書に書かれているのは首都ウルレアナにある学校で教師をやって欲しい。

 そんな内容の依頼だったが、なぜ教師の斡旋の依頼がギルドに来ているのか、なぜ隣国であるこの町に来ているのかいろいろと聞きたいことがあったが、ひときわ目を行くのが依頼書に書かれている金額だ。


「達成報酬、金貨五十枚」


 冒険者になってまだ日に浅いノクトは、依頼をなんどかこなしているからと言ってもまだまだ駆け出しだ。

 そんなに多くのお金を持っていない、それどころかこの前ようやくFランクに上がったばかりなので、ここまで高額な達成報酬は見たことがなかった。


「金額は置いとくが、なんでもこの依頼を受ける冒険者があんま居ないらしくてな、それで誰でもいいから来て欲しいってことで隣国にまで話がきてんだよ」


 金に困っている訳ではないスレイとユフィ、正直な話だが金貨五十枚くらいなら手元にあるコアを売りさばけば簡単に出来てしまうのだが、二人は隣で依頼書に穴が開くのではないかと思うほど見ているノクトを見やり、二人は顔を見合わせて笑い会う。


「アレクさん、この依頼書もらっても良いですか?」

「いいぜ、どうせうちの奴らには荷が重い依頼だからな」

「ありがとうございます。ノクトちゃん、もう行くから依頼書しまってね」

「あ、は、はい」


 もらった依頼書を懐にしまったノクト。

 三人は、アレクシス方を見てもう一度お礼を言ってから部屋を出た。


⚔⚔⚔


 町を出た三人は目的地であるロークレアへと続く道を歩いていく。


「当分はこの道を真っ直ぐだな」

「当分は野宿ですか?」

「ノクトちゃん、野宿は初めて?」

「一応は、そうなると思います。前は乗り合いの馬車に乗っていたので」

「おぉ~い二人とも、急ぐ旅でもないけど風が少し湿ってる。雨が降るかもしれないから急ぐよ」


 空を見ながらスレイがそういうと、ユフィとノクトが急がなきゃ、と言いながらスレイを追い越して走っていく。そんな二人の後ろ姿を見ながらスレイはふと腰に提げられた黒い剣に触れる。


「そう言えば、あのときのアレなんだったんだろ」


 この剣を抜いたとき、スレイはある幻を見た。初めてこの黒い剣を鞘から抜いたとき、スレイの視線から色が抜け落ち黒い鱗に覆われた竜がそこにいた。

 とぐろを巻き眼だけをこちらに向けていた竜は、まるでスレイを威嚇してくるようにこちらを睨みつけていた。

 それはユフィやノクトには見れず、未だにアレがなんだったのか結論は出ていないが、アレ以降姿を見ることも無かったのと使徒との戦いが近かったせいで忘れていたが、アレはなんだったのか、ふと思い返してみて急に気になった。

 その事を考えていると、先を行ってしまったユフィたちから声をかけられた。


「スレイくん早く来ないと置いてくよ~!」

「お兄さ~ん!何してるんですか~!」

「ごめんごめん、すぐ行くから」


 ユフィとノクトから声をかけられたスレイは、答えの出ない問答をやめて歩きだすのだった。

この後、十二時に二話目を投稿する予定です。

ブクマ登録ありがとうございました。

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