使徒との戦い ②
ブクマ登録ありがとうございました。
使徒戦の続きです。
時は遡り二日前、ギルドマスター アレクシスの部屋で新しい剣と杖を受け取った時のことだった。
「ミスリルですか?」
スレイは絨毯の上に散らばったテーブルの破片を拾い上げながらアレクシスにその名前を聞き返した。
「お前も聞いたことくらいあるだろ?世界最高の金属 ミスリルのことくらい」
「はい。実物は見たことありませんが」
聞いたことくらいなら何度もある。この世界じゃなくて地球でならファンタジー物のラノベやゲームの定番と言っていいほど、よく目にした金属の名前だ。
ダンジョンや特殊な環境下でなければ生成されず、アダマンタイト、オリハルコンなどと並ぶ世界最高峰の金属だ。
記憶では二十年程前の金属の製法が解明され、錬金術による人工精製が可能になったそうだが握りこぶし程度の大きさで白金貨が飛ぶと言われる高級品だ。
平民であるスレイたちではおいそれと目にする機会はない。
「その剣は天然物のミスリルをふんだんに使った剣ってわけだ」
天然物のミスリルその名を聞いた瞬間、スレイ、ユフィ、ノクトの三人の手が止まり一斉視線が部屋の隅に置かれた一本の剣に集まった。
仮にこれが人工ミスリルで打たれた剣だけでも一財産になる。それが天然物のミスリルで打たれた剣ならいったい幾らになるのか、考えるだけでも恐ろしくなった。
そんな中ハッと我に返ったノクトがアレクシスに問いかけた。
「まっ、待ってください!ミスリルって言ったら、羽みたいに軽くい金属だって聞いたことがあるんですが、それが何でこんなに重くなってるんですか?」
それを聞いてスレイもユフィもそう言えば、と昔クレイアルラの魔法抗議時に雑学として教えてもらったミスリルについての説明で、そんなような話を聞いたような気がした。
「それはだな、純粋なミスリルのみで打たれた場合だな。他の素材、特に魔物の素材を芯にすると重量なんざも変わってくる」
「そ、そうなんですか?」
アレクシスの説明にノクトはなぜかスレイとユフィの方に視線を向けられたが、二人共揃って首を横に振った。
「ボクらだって知らないことはあるし」
「先生から聞いたような気もするけど、あんまり覚えていないかな」
二人共、錬金術で金属は何度もあつかったことはあるので、いくつかの金属に調べることもあった。
だが、ミスリルなど簡単には手に入らない上に希少金属を扱う著書自体少ない。
この先も扱うことはないだろうと思っていたので詳しく調べることこしなかった。
「それで、この剣には何が混ぜてあるんですか?」
大きな木片を撤去し終えたユフィは風魔法で小さなつむじ風を作り出し、壊れた衝撃で散らばった小さな木片と木屑を集め、ゴミ箱の中にいていく。
「あぁ。この剣はな、竜の牙が混ぜられてるんだ」
「竜って、それ一つでも一財産じゃないですか!?」
返せと言われても返す気はなかったが、この剣一本にどれだの金がかかっているのか、もはや聞くのも恐ろしくなったスレイはそっと目を逸らした。
「ただの竜じゃなく、大昔に死んだ伝説の黒龍の牙なんだと、まっ、ホントかどうかは知らんがな」
三人は肩をすくめて笑ってしまった。
一番大事な場所があやふやではいけないだろ、っと内心でツッコミを入れてしまった。
掃除も終わりスレイは部屋の端に置かれていた剣のところに歩み寄る。床に置かれている剣に手を伸ばし剣を掴む直前、伸ばされた手が止まり、そっと差し出した手を引き戻した
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
先程テーブルを片付けるために移動させたときには感じなかった不思議な感覚、まるで目の前にある剣がスレイを呼んでいるようにな、そんな不思議な感覚が身体に流れてきた。
意を決して床に置かれていた剣を掴みそして持ち上げると、手に伝わってくる重さは確かに重かった。
だが持ち上げられないわけもなく、とても手に馴染む、長い間この手の中で握られていたようなとても心地よい重さで手の中に収まっていた。
スレイがみんなのことを見ると、全員が驚いた表情でスレイのことを見ていた。
「開けてみていいですか?」
「お、おう」
布を縛っていた紐をとき、露出した漆黒の柄と鍔の美しさを見てスレイはハッと息を飲む。遅れて露わになった柄を握り、手に力を込め一息に鞘から剣を抜き放った。
⚔⚔⚔
振り向きざまに放たれた一閃によって上半身と下半身に分かたれた使徒は、傷口に燃え盛る黒い炎を忌々しそうに睨みつける。
「ハァアアアァァァァッ!」
「クッ」
とどめを刺すべく駆け抜けるスレイを前に忌々しそうに力の使徒がうねる中、使徒は残された左腕で未だに燃え盛る腹部の傷口、その少し上に当てた。
そして剣を引くように自ら自身の身体を切り裂く。
あからさまな自傷行為、だがスレイはやられたと思いながらも剣を振り抜こうとしたその時、白い槍がスレイめがけて伸びる。
回避は間に合わないと踏み込もうとした足を止め身体を倒したスレイだったが、一手遅かった。
「グッ!?」
右肩を深々と突き刺した白い槍の正体は、力の使徒の骨だった。
再生によって生えてきた骨は鋭い刃となりスレイの身体を突き刺すほどの殺傷力を得た。
肩を刺されたスレイは即座に魔道銃で骨の槍を撃ち抜くと、後ろに下がりながら肩に刺さった骨を抜き取る。
「お兄さん!?───ライト・ヒールッ!」
ノクトの杖から放たれた治癒魔法の光がスレイを包み込むと、肩の傷が瞬く間に塞がっていった。
傷が完全に塞がったのを確認したスレイは、僅かに肌が引きつる感覚はあったが戦闘を継続することが出来ることを確認してから、改めてノクトの方を見る。
治癒魔法は術者と対象者との距離が離れすぎるとうまく作用しない。広範囲以外の対象を絞るヒールを遠距離で使う場合一般的な術者で約一メートルほど、それ以上離れてしまえば失敗や誤って敵を回復してしまうこともある。
距離的にノクトとの距離は二メートルほど、それを難なく成功させる当たりノクトの技量の高さを伺わせた。
「ありがとう、ノクト」
お礼を言って立ち上がったスレイは全身を再生した力の使徒を一瞥してから、背後にいるユフィに視線を送るとその意味を察してくれたのかコクリと頷いてくれた。
剣に業火の炎を宿したスレイは、再び使徒へと向かっていく。
スレイと使徒の戦いが再開されるとユフィはすぐにノクトの方を見た。
「ねぇノクトちゃん。今みたいなヒール、どれくらいの距離で可能かな?」
「えっ、多分三メートルくらいなら」
「それじゃあね、今のスレイくんに的確に回復できる?」
「えっと……無理です」
そうだよねと、ユフィは小さく呟いた。
いくら遠距離から治癒魔法を使えるからといって、高速で動かれてたら当たるはずもない。
「よぉ~しぃ、ノクトちゃん。お姉さんに併せて魔法をお願い」
「はっ、はい……でも、お兄さんは」
「大丈夫、スレイくんからのオーダーだからね」
どういうことだとノクトが小首を傾げると、目の前にいるユフィの目が鋭く二人の戦いを見据えている。
まるで何かの合図を見逃さないようにジッと見据え、そしてその時が来た。
「今だよノクトちゃん。──ライトニング・アローッ!」
「はっ、はい!───ウィンド・ジャベリン」
放たれた紫電の矢と風の槍が同じ軌道を沿ってスレイの背後に向けて放たれたが、ノクトはしまったと思った。
完全に同士討ち、なのにどうしてユフィは魔法を討ったのかがわからない。魔法を撃ってしまったノクトは自分の犯した失敗の結果をみるのが耐えきれず、キュッと目を閉じた 。
「ノクトちゃん、大丈夫だよ」
ユフィの声に目を開いたノクトが見たのは、何事もないように使徒を打ち倒すスレイの姿であった。
いったいどうして、背後から撃たれたはずの魔法をどうして避けれたのか、まさか後ろの目でもついているのかとノクトが疑った。
「ノクトちゃん。私がスレイくんとどれだけの戦いを経験したと思ってるの?」
「えっ、あっ……それは」
「うふふっ。スレイくんの動きは完璧に把握できるし、何を言おうとしてるかも分かるよ」
完璧に、そういい切るユフィの姿に偽りはない。
「良いですね。ちょっと、焼けちゃいますけど」
拗ねたようにそっぽを向けるノクトに笑みを浮かべたユフィは、発動待機していた紫電の矢で力の使徒の肩を射貫きその隙にスレイの剣が使徒の腕を切り落とした。
⚔⚔⚔
密着した状態から振るわれるスレイの黒い剣を力の使徒はその身に受け続ける。
斬り裂かれ黒い炎によって燃やされ再生することも構わない。加えてスレイの猛攻を受けて肉体を切り落とす隙を与えられないことに力の使徒は苛立ちを隠せない。
「ナンダ、ソノ剣……我ヲ苛立タセル!!」
「はっ、それはなんともいい気分ですねッ!」
踏み込みと同時にスレイの黒い剣が振るわれたが、力の使徒がそれを許さずに真横からの蹴りが放たれる。
横から振り抜かれた鋭い蹴りを受けてスレイの身体が宙に浮き、そして吹き飛ばされる。
「ゥグッ!?」
蹴り飛ばされながらも魔道銃を持ち上げ力の使徒の目へと弾丸を撃ち抜いたスレイは、受け身を取ることも叶わず木の幹に叩きつけられた。
「ガハッ……!?」
激しく打ち付け地面に伏せたスレイの身体は酷い激痛を訴えるが、今はそんな痛みに構っている暇はない。
「いっ、いまだっ、ユフィッ!」
「了解ッ!───ライトニング・スピアッ!!」
スレイに要望に答えるようにユフィの放った紫電の槍は、真っ直ぐ力の使徒の頭部を撃ち抜いた。
「ゥォオオオァァァァッァァァアアアァッァァッァァ――――――ッ!?」
静寂な森に響き渡る力の使徒の絶叫が鳴り響く。
いくら身体の防御力が高かろうが目玉などという柔らかな部分はそう簡単に守れない。更にそこ追い打ちをかける如く雷撃が炸裂し、目に撃ち込まれた弾丸を通して内部からその肉体を焼く。
いくら自己治癒能力が高かろうが、体内を直接焼かれればどんな相手だろうと関係ない。雷撃がやみ、全身から白い煙を上げた力の使徒はようやく膝をついた。
使徒が動かなくなるのを見たノクトは呆然となりながら立ち尽くした。
「もしかして……倒し、ました?」
「ノクトちゃん、それフラグって言って倒せてないときの常套句だよ」
「えっ、あっ!わっ、わたしそんなつもりじゃ」
「分かってるよ……それと、アストライアさまから言われてるでしょ。あれじゃあ倒しきれてないよ」
ユフィの言葉でハッとしたノクトは改めて杖を握り直した。
力の使徒と戦うにあたり事前にアストライアから使徒と戦う上で守らなければならないことを教わった。
まず大前提として使徒と戦うときは、人で言うところの心臓に相当する部位を破壊しなければ、どれだけ肉体を破壊しようが使徒は蘇り続ける。
力の使徒が意識を失っているうちに肉体を削り使徒を倒そうと考えた二人は、そろって魔法を放とうとしたがそれよりも速く使徒に向かっていく人物がいた。
「ハァアアアアァァァ―――――ッ!!」
それは黒い剣に炎を宿したスレイだった。
狙うは力の使徒の首、少しずつ動けないようにしてその体内にある使徒の心臓──コアを破壊する。
振りかぶられた剣を振り下ろすスレイ、これで終わらせるとその想いを乗せて振るわれる黒い剣が使徒の首へとその刃を突きつけた。
その時、虚ろだった使徒の目に生気が宿りスレイと視線がかち合った。
マズイ、そう思ったスレイだったが振り抜かれた剣は止めることは出来ない、このまま振り抜くと握りしめる剣に力を込めた。
「なっ!?」
振り抜かれた剣に対して力の使徒は、腕を犠牲にして剣を受け止めていた。
驚きの声を上げるスレイに対して動き出した使徒の拳が、スレイの腹部に叩き込まれ衝撃が全身を駆け抜ける。
「ガハッ!?」
内臓を傷つけられたのか吐き出された血の塊が地面を濡らすなか、起き上がった使徒の攻撃はそこで終わらなかった。
浮かび上がったスレイの身体を真上から殴りつけ地面に叩きつける。
「ッ───グハッ!?」
打ち付けられたスレイの口から再び血が吐き出され、身体が地面にめり込み陥没を作った。
全身の骨が軋み痛みがスレイの意識を容赦なく刈り取ろうとするも、既のところで意識を繋ぎ止める。
「グッ……この……ッ」
全身が悲鳴を上げ血を吐きながらも立ち上がろうするスレイの上に影が差す。
虚ろな使徒の目がスレイを見据える。
「おい、おい……あんた、意識……無しで……たたか、てたの……かよ……っ」
意識がない状態で降り注ぐ攻撃に対して反撃し、動けないスレイに対して最後の一撃を放とうとしている。
動けない、魔法を使って守ろうとしての間に合わないだろう。
「スレイくん!そのまま伏せてッ!」
突如降り注いだユフィの声に従いスレイが動きを止めると、カーンッと何かが地面を打ちつける音が鳴り響いた。
動けないスレイに向かって力の使徒が拳を振り下ろそうとしたのを見たユフィは、スレイに声をかけてすぐ杖の宝珠に魔力を流すと両手で握りしめた杖の石突きで地面を叩いた。
「殺らせないッ!───グランド・ウェーブッ!!」
突き立てられた杖を中心として地面に広がった巨大な魔法陣は、スレイと力の使徒がいる場所にもまで到達すると、使徒の立つ地面が盛り上がり波のように使徒を飲み込み押し流した。
「──ゲート・シェルッ!」
使徒が遠ざかったと同時にユフィが杖を振りながらその名を呼ぶと、なにもないところからゲートが出現しスレイを直ぐ側にできません移動させた。
"ゲート・シェル"ユフィが作り出した新たなシェルは、リンクしたシェル同士を使って遠隔でゲートを開くことが出来る。
先程、スレイのソード・シェルをどこからともなく出現させたのもこのシェルであり、本来なら小型のゲートしか発動できないところを複数のシェルそ無理矢理組み合わせ人の通れるサイズにしたのだ。
ゲートで目の前に連れてきたスレイの姿を一瞥したユフィは顔をしかめる。
「酷い怪我……ノクトちゃん。治療をお願いッ」
「はっ、はい!」
駆け寄ったノクトがスレイに治癒魔法をかけようとしたが、スレイはその手を遮った。
「ひつよう、ない」
「必要ないって、何言ってるんですかその怪我でッ!」
ノクトが無理にでも治療を行おうとしたが、懐からポーションを取り出したスレイがそれを立ち上がった。
「へいき、ポーションで、足りる……それよりも」
スレイの視線の先にはこちらに近づいてくる使徒の姿が映る。
手持ちのポーションの中で最上位のポーションを全て飲み干し、黒い剣に業火の炎を宿した。
もう一度あの使徒を斬り今度こそ終わらせるために向かっていこうとしたその時、ユフィが杖を振ってスレイの行動を止めた。
「スレイくん。作戦変更、例の作戦でいこう」
「………わかった。準備するから足止めお願い」
「うん。任されした」
ユフィが二人の側から離れると向かってくる使徒に向けて杖の宝珠を向ける。
大きく息を吐いたユフィは自分の体内の魔力を極限にまで高めると、渦巻く魔力が木々を揺らし近くにいたノクトが恐れおののいた。
「うっ、すごい魔力……」
「大丈夫、ノクト?」
「はっ、はい」
底しれぬユフィの魔力量にノクトが驚くなか、スレイは平然とした顔でポツリと呟いた。
「ユフィのやつ、ここらを更地にする気か?」
そんな言葉が届いたのかユフィがニヤリと口元を釣り上げながらこちらに向かってくる力の使徒を見据える。
「悪いけど、全力で行かせてもらうね」
向けられた杖の宝珠に描かれた魔法陣は複雑で、幾重いにも織り込まれた無数の魔法陣が合わさって描かれた。
明らかに一般的な魔法陣とは違うより高位の魔法であるとノクトは理解したが、それ以上のことがわからない。理解しようにも複雑な構築術式に、知識が追いつかない。
「吹き飛んで──テンペスター・ユピテールノ!」
魔法の名を叫ぶと同時に魔法陣から放たれた雷撃を伴った暴風が、地面をえぐり木々をなぎ倒しながら使徒を飲み込んでいく。
まさに天災、自然の猛威を具現化したような魔法を前にしてノクトは唖然とした。
「お兄さんあの魔法、なんですか?」
「あれはね………ユフィのオリジナル魔法だ」
オリジナル魔法、一般的な魔法と違い魔法使いが自分の手で作り上げた魔法のことだ。
既存の魔法とも違う完全なオリジナルの魔法を作るのには、膨大な知識が必要になり魔法使いのほとんどは一生をかけても完成させられない人もいる。
「風魔法であるテンペストをベースに、雷、水、土の三属性を織り交ぜたのがあの魔法だ」
あの風の牢獄に飲み込まれた物は、吹き荒れる暴風がその身を削り、弾丸の如き雨粒に石弾に撃ち抜かれ、絶え間なく鳴り響く雷撃がその身を焦がす。
故にユフィは暴風雨を思わせるあの魔法をそう名付けたのだ。
魔法の効力が切れ風が止むと辺りは見事に更地とかしていた。
「ちょっとやりすぎちゃったかな」
などと言っているユフィの顔の反省の色はない。それどころか、その表情は険しく額からは汗が一雫零れ落ちる。
「ヨクモヤッテクレタナ、人間ガ!」
更地とかしたその場所で両腕を失った力の使徒がユフィを睨んでいた。
「範囲を広めにしてたけど、アレを受けても生きてるの反則だよ!」
あわよくば削り切れるのではと思っていたユフィも使徒の頑丈さそう侮っていた。
失った両腕の再生が始まったのを視認しなが、らもう一撃を与えようとユフィが魔力を練り始める。
「ユフィ、交代だ」
その声に振り返ったユフィはスレイの姿を見て小さく微笑んだ。
「りょ~かい。後お願いね」
「任せて」
入れ替わるように後ろに下がったユフィはノクトにシールドを張るように指示を出すなか、スレイは真っ向から使徒と対峙する。
「マダ、立チ向カウノカ?」
「おや、意識戻ったんですね」
「モウ諦メロ人間。貴様ラニ勝機ハナイ」
「あははっ、面白いこと言いますね」
笑ってみせたスレイはそっと剣を向ける。
「使徒、あなたは無敵なんかじゃない。現に、あなたの身体は再生能力が落ちてきている。気づいてましたか?」
スレイの指摘を受けた力の使徒の表情がわずかに歪んだ。
「ダッタラ、ナンダト言ウンダ」
「無敵じゃな、不死身じゃないならボクたちはあなたを殺せる」
その時、使徒は不思議なものを見た。
スレイたちの足元、そこにある影二重にぶれている。何かがおかしい、そう思い顔を上げた使徒の目には驚くべきものが映った。
「ナンダ、太陽ガ二ツ有ル?」
天高く燦々と輝く太陽、それがもう一つ存在していた。
「これが最後の切り札だ──イルミネイテッド・ヘリオースッ!」
スレイが手を振り下ろした瞬間、視界を白く染め上げるほどの光の柱が降り注いだ。
使徒戦はあと一話で終わります。これからもよろしくお願いします。




