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新たな剣

お久しぶりです。前の投稿から一週間くらい空いてしまいました。

ブクマ登録、作品評価ありがとうございました。

 あの日、使徒との戦いに破れてから三日日。

 その間にスレイとユフィはギルドには顔を出さずに宿屋に籠り続けていたが、なにも使徒から身を隠している訳ではない。

 もといアストライア曰く、あの使徒が復活するには最低でも五日はかかると言われているのと、どこにいようが一度目を付けられているので、復活したら全力で潰しに来るであろうとのことだった。


「ユフィ……今日でなん徹目だっけ?」


 真っ暗な部屋の中、カリカリと必死に魔道具に回路を設計するためにペンを走らせているスレイが、後ろで魔方陣の調整をしているユフィに向かって訊ねる。


「多分三日目……ヤバいよスレイくん、頭痛い」

「それはボクも同じだから、ってか今何時?」

「ん~、朝の八時……あれ、今日ってなにかなかったっけ?」

「なにもないよ。ってか、あの力の使徒復活予定まで後二日、一日休むためにも今日と明日しか時間ないんだ、休んじゃダメだ」


 スレイがぼぉ~っとする頭でユフィに訴え掛けるが、それは自分自身に言っていることは同じように頭がぼぉ~っとしているユフィも同じだ。


「あぁ~そういや、腹も減ったね」

「干し肉ならあるよぉ~」

「いらない。この三日で食べ飽きた」

「そうだねぇ~、ってかノクトちゃん忙しそうだよねぇ~」

「少しでもボクたちに追い付くって言って、依頼受けにいってるからね」

「アストライアさまもついていったんだっけ」

「ついていったって言うより、ノクトにあげたゴーレムに取り憑いていった、ってのが正しいんだよね」

「だねぇ~。後私たちのオウルとレイヴンが声を出したのって、アストライアさまのせいだったの本当にビックリしたよね」


 目に生気はなく抑揚のない声で話し続けるスレイとユフィは、表情と声とは裏腹に手だけは止めていない。

 ちなみに霊体状態のアストライアは何かに取り付くことが出来るらしく、その状態では力の消費も無いそうなのでスレイがずっと空間収納に納めておいたレイヴンとオウルの兄弟機の燕型生体ゴーレム スワローを与えその中に入ってもらった。

 その際にアストライアがこんなことを言った。


『やはりあなた方が作ったゴーレムは使いやすいですね』


 そんなことを言い出したので二人が問い詰めたところ、前々からスレイとユフィが作ったゴーレムを自分の使徒化させ、この世界の神に見つからないために隠蔽させていたらしい。


「まぁ、リーシャとミーニャを守ってくれたらしいからいいんだけどさ」

「そうだよねぇ~でもちゃんと言ってくださいっての」

「だよなぁ~、後、アラクネにゴーレムを造らせてたとき、たまに素材が足りないと思ってたけど、まさかアラクネまで使徒化させられてたとは………」


 呆れながら最後の魔道具の回路を確認をし終えたスレイはユフィにその紙を見せると、今度はユフィが持っていた魔方陣のかかれた紙ををスレイに渡した。

 二人はお互いの作った紙を見ながら泣いた。

 ついにこの徹夜と呼ばれる長い苦しい戦いが終わる。

 それを知った二人の目には自然と大きな涙をため、感極まった二人は勢いに任せて暑い暑い包容を交わしあった。


「やったぞユフィ、これで後は一つ作って確認して後はアラクネに任せれば休めるんだ」

「やった、私たちついにやったんだねスレイくん!後少しなんだね!」

「あぁ!やるぞユフィ!」

「うん!スレイくん!」


 徹夜のせいでおかしなテンションになりかけている、というよりも完全に壊れたテンションになっている二人のことを、ドアのところで見ている人物がいた。


「お姉さん、なにうらやましい──じゃなかった、お兄さんと二人部屋になったには魔道具を作るためであってイチャイチャするためじゃないですよね?」

『あらあら、愛と言う感情はいつ見てもいいものですね』


 抱き合っている二人にジと目を送るノクトとその肩に止まって微笑んでいる一羽、もとい一柱の神がこちらをジッと見ていたのだ。

 それを知った二人は徹夜テンションが一気に冷め、二人?に見られていた気恥ずかしさから顔を赤くしながら離れる。


「あれ、ノクトちゃん、それにアストライアさまもギルドに行ってたんじゃ?」

「アレクシスさんに頼まれてお二人を呼びに来たんです」

「悪いけど今忙しいから依頼なら別の人に」

「そうじゃなくて剣と杖が出来たから取りに来いっていってましたよ?忘れてたんですか?」


 ノクトの話を聞いてスレイとユフィはお互いの顔を見合わせて、いったいノクトは何をいっているのかと思い、そして三日前にスレイ経由でアレクシスに言われたことを思い出した。


「「あ!」」


 声を揃えて叫ぶスレイとユフィ、それを見てノクトが呆れる。


「二人とも忘れてたんですか?」

「あのビビりや使徒のことがあってつい」

「その後も忙しかったもんね」


 あの使徒と戦うなら剣も杖も新しくしなければならない。


「取りに行くしかないか」

「製作はどうするの?」

「アラクネに任せる」

「一つ目は私たちが作って確かめないといけないけど、時間もないしね」

「なわけで、アラクネよろしく」


 錬金術を付与してある製作専用アラクネを起動させ一つ目の製作を任せる。

 これで後は待つだけだ。


「よし行こう」


 簡単な身支度だけを済ました二人と、既に出かける準備はできていたノクトが宿を出たのだが、三日ぶりに明るい世界に出た二人には目をやられしばらく悶絶してしまったのだった。


 ⚔⚔⚔


 寝不足と久しぶりの日の当たる世界を歩くせいで、なにもしていないのにダメージを受けてふらふらと覚束無い足取りで何とかギルドにやって来たスレイとユフィ、そして依頼を受けるために戻ってきたノクトだが、


「それじゃあわたしはいつもの依頼を受けてきますね」


 いつもの依頼とは道具屋のポーション作りの依頼なのだが、ユフィがそれを止めた。


「なにいってるのノクトちゃんの分もあるから、一緒に来なきゃ」

「えっ、でもアレ本気だったんですか?」


 前に杖を作ったとき、要らなければ受け取らなくていいと言われたがきっと冗談か何かだと思っていたノクトだったが、二人共本気で言っていたのだ。


「せっかく作ってもらったんだからもらっておきなよ」

「でも、オーダーメイドの杖は高いんじゃ」

「宝珠の素材はボクら持ちだし、お金はギルドが出したんだから気にしない。それにほぼ慰謝料みたいなもんだから」


 ギルドの問題を片付けさせられたことに関する慰謝料だといい切るスレイに、ユフィは苦い顔をしていた。


「それに、ノクトも使徒と戦うんでしょ?」


 スレイとユフィはもちろん戦う。

 地球の次はこの世界を破壊しようとしている神をぶっ飛ばす、その想いはユフィも同じだ。

 ノクトもこの世界を守るためにと戦うことを誓ったのではないか、そうスレイが尋ねるとノクトは大きく頭を振って答えた。


「当たり前です!アストライアさまに頼まれたからじゃありません、この世界に生きている一人の人間として、そんな神さまなんて間違ってるって否定してやるんです!」


 それがノクトの想いだった。


「なら一緒に行くぞ」

「はい!」


 新しい武器を受け取りに行くためにギルド、そこのギルドマスターであるアレクシスの元にやって来ていた。


「三日ぶりか、ギルドにも顔出さなかったからもう出ていっちまったかとおもったぞ?」


 部屋の中央に置かれていたソファに三人並んで座り、対面する形でだ。


「いやいや~町を出るんなら一言声をかけますって~、アレクさんにはお世話になったんですからぁ~」

「それにまだ私たちの杖も剣も受け取ってませんからぁ~」

「ユフィはいいが、スレイお前なんかキャラ変じゃね?」

「実はここ最近徹夜続きでして、テンション壊れてます」


 目元に深い隈を作って笑っているスレイ、その笑顔を少し引いた様子で見ているアレクシスだった。


「徹夜っていったいなにやってるんだ?あ、まさか若いからって徹夜でヤってる」

「アレクシスさん、その口焼いていいですか?」

「すみません、調子乗りました」


 ユフィの笑顔だけどなぜだか妙な気迫を感じさせる睨み付けと、親指と人差し指の間でバチバチとスパークをあげる雷の魔力を見て全力で頭を下げた。

 ちなみにいっておくと徹夜明けのユフィはかなりキレやすいのご注意を。


「まぁ世間話はこれくらいにして、おい、アレ持ってきてくれ」


 アレクシスが外に控えていたギルドの職員に声をかけると、布に包まれた細長い物を三つ持ってきたのだが、なぜだか一本だけ数人掛りで運んで着たときにはさすがに目を疑ってしまった。

 ついでに言うと目の前に置いたときにもコトンではなくゴトンとものすごく重そうな音が聞こえてきた。


「まずはユフィとノクトのだったな」


 そういってアレクシスが手に取ったのは細長い方の物だった。

 それを見てユフィとノクトが安心しきったように深い息を吐いて胸を撫で下ろしていた。女の子が大の男数人掛りで持ってきた物を渡されたらさすがに泣きたくなるだろう。


「ありがとうございますアレクさん」

「あの………本当にわたしも良かったんですか?」

「構わん構わん、スレイへの迷惑料、代わりだ。金についてもあいつの実家が贈ってきた金を使ったからギルド側も痛くねぇからな」


 それはそれで嫌だなッとノクトは思ってしまった。


「何も関係ねぇお前さんを巻き込んじまった負い目もあるんだ。素直に受け取ってくれねぇか?」

「それでは、ありがたく受け取らせてもらいます」


 これ以上言うのはアレクシスにも、提案してくれたスレイにも失礼に当たると思いノクトは素直に受け取ることにした。

 二人は自分の名前が書かれたタグのついた布にくるまれた杖を渡され、手に取ったユフィとノクトは手元の杖を見ながらアレクシスの方を見た。


「あの……これって、今開けてもいいんですよね?」

「おう、いいぞ開けろ開けろ」


 アレクシスの返答を聞いて、待ってましたといわんばかりに早速固く締められた紐をはずし、布の中に納められていた杖をゆっくりと取り出した。


「わぁーすごい」

「きれいな杖」


 露わになった二人の新しい杖はどちらも長いロングスタッフだった。

 杖にはめられている宝珠は室内の明かりを反射し七色の輝きを放ち、柄は二つの杖でそれぞれ素材が違うのかわずかに色合いが異なっていた。

 ユフィの杖は白に薄く黄色が混ざっており、ノクトのは白亜のような色をしていた。

 一目でそれが一流の職人によって作られた杖だと分かり、ユフィもノクトも声がでなかった。


「宝珠にはリヴァイアサンのコアと七つの魔石を合わせ、ユフィの柄にはサンダーバードの骨を、ノクトのにはエルダートレントの枝を使ってあるそうだ」


 それを聞きどちらもかなり強力な魔物も素材が使われていることを知った二人は杖を握りしめる。


「アレクシスさんありがとうございます!」

「絶対に大事にします!」


 二人が深々と頭を下げてアレクシスにお礼を言うと、自分が杖を作った訳じゃない等と言ってはいたものの、顔が照れているのが分かった。

 それが照れ隠しであることが分かったようで、ユフィとノクトが顔を見合いながら笑っていた。

 少女二人に見透かされたことに少し気恥ずかしさを感じたのか、頬をかきながら今度はスレイの方を見る。


「さて……次はお前なんだが……ちょっとばかし言いづらいことがあってだな」

「あの、なんとなく言わんとすることはわかります……ですがあえてその前に言わせてください」


 スレイは足は細く天板自体も細い板張りの卓上に置かれている剣を指さす。

 今にもその細い足と天板を砕きテーブルの上に落ちた勢いで床にめり込んでしまいそうな剣、その証拠に剣が中央に置かれているのにも関わらず、四隅で重さを分散し支えているはずなのにギシギシと変な音を立てていつ限界が来てもおかしく無さそうな状況になっている。

 そんな原因を作っているそれを指差しながらアレクシス訊ねる。


「いったいなにをどう作ったらこんなに重そうな剣が出来るんですか!?」


 スレイのツッコミが炸裂するとほぼ同時にテーブルの足が限界を迎えたらしく、バシッドスンッと大きな音と衝撃を与えたのだった。

次からはいよいよ使途との再戦です。どうかよろしくお願いいたします。

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