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世界の真実

タイトル通りこの世界についてのお話です。ようやくここまで来ました。

それからも本作品をよろしくお願いします。

 ギルドからに帰り夜の闇の中を一人歩くスレイは、先程の戦いで壊したはずの場所に立ち寄っていた。


「あれだけの被害を再生させ、人の記憶を消すか……ホントに神様っているんだな」


 その場から身を翻しユフィとノクト、そして女神アストライアの待っている宿へと戻る道を歩き始めた。


「いらっしゃい、あら久しぶりじゃないかい元気だったかい?」


 宿の扉を開けてスレイに声をかけてきたのはこの宿の女将である熊の獣人だった。


「お久しぶりです。ユフィと後ノクトって戻ってきてますか?」

「あぁ、ユフィちゃんはノクトちゃんと二人部屋に移ってるよ」

「部屋の場所を教えてもらってもらえますか?」

「三階の一番端だよ。言っとくがうちは連れ込み宿じゃないからね。苦情が来たら途中でも追い出すよ?」

「やりませんっての!」


 久しぶりに宿に戻ってきたスレイは女将への挨拶もそこそこに、自分の泊まっている部屋に入り上着を置いてから先程聞いた部屋の前にやってきた。


「ユフィ、ノクト入ってもいい?」

「いいよぉ~」


 ノックしてすぐに返事が返ってきたのでノブを回して部屋の扉を開けて中に入ると、部屋着に着替えたユフィとノクト、そしてもう一人、正確には一柱、アストライアがスレイのことを出迎えてくれた。


「お帰り、どうだった?」

「あいつらはアレクさんが引き取ってくれたよ。まぁ反省はみれなかったけど」

「お兄さん、あの人といったい何があったんですか?すごくお兄さんのことを恨んでましたけど」

「バカな奴をこらしめただけ、恨まれるようなことはなにもしてないよ」

「そうなね。あれは完全にあっちが悪かったし、本当に恨まれるいわれは全くないんだよね」


 本日何度目かのジと目を受けたスレイは横を向いて視線をかわし、ジッとこちらのことを見ているアストライアの視線を見つけそちらに顔を向ける。


「すみません、こんな話をしてしまって」

『構いませんよ。私としては人が楽しそうにしている姿を見るのはうれしいことですからね』

「別に楽しい話しはしてませんでしたよね?」


 アストライアの言葉にユフィがツッコミを入れる。どちらかというと今の話はバカな奴に呆れた話と、スレイに対する面倒な巻き込まれ体質についての苦情だった。

 それを聞いていったいどこを楽しんでいると思ったのか


『私にとってはあなたたちの行うこと、そのすべてがいとおしい』


 そういうと胸に手を当てて語りだしたと同時に、ノクトが指を組み膝をついてアストライアに向けて祈りを捧げるように膝まずいた。

 その姿を見てノクトが元とはいえルーレシア神聖国、そこのシスターの見習いであったのを思いだし、どんな形であっても信仰の対象である神が目の前にいるという状況でこうしない理由がない。


『その様なことはしなくていいですよノクト』

「あぁ、女神さまわたしに名前を……感無量です」


 これは重症だと思いながら、女神にあって使い物にならなくなっているノクトを無視しアストライアに向けて話しかける。


「女神アストライア、あなたにお聞きしたい」

『どうぞ。私に話せることなら何なりと』

「それでは、あの牛頭の化け物……あれはなんなのですか?あなたはあの化け物のことを使徒と呼んでいまよね?あれはあなたの仲間ではないんですか」


 一番気になっていたことはもう一つあるが、今のこの状況でもっとも優先順位高い重要事項はあの化け物についてのことだ。

 ただでさえノクトが狙われていただけでなく、スレイもユフィもあの化け物に殺されかけたのだ。それも手も足も出ずにただ一方的にだ。


『使徒とは、神が作り出し、世界をより良いものへとするべく監理するもののことです』

「ならどうしてあの使徒はあなたを消し去ろうとしていたんですか?あなたは言わば、あの使徒の産みの親ともいってもいい存在だ。なのにそれを消そうとする理由が全くわからない」


 本来は不可視であるはずの神、そして世界を管理する者であるはずの使徒がこうして姿を表している。

 何が起きているのか、それともなにかがこの世界に起きようとしているのか、それを今この世界で生きる二人には知る権利が有る気がした。


『あの使徒を産み出したのは私ではありません』

「……それじゃあ、あなた以外の神がいるとでも言うんですか?」

『はい、います……私はその者に力を奪われ、長い間封じられていました』


 スレイとユフィ、そしてノクトはアストライアのことをジッと見つめる。その訳は、なぜかアストライアの表情が何かを思いだし、とても切なく、そして悲しみに溢れていた、そんなことを感じてしまったからである。


「いったい、何があったんですか?」

「力を封じられて閉じ込められるって相当なことですよ」

『なにも、ただ間違っていることを正そうとしただけです』

「なにを正そうとなさったんですか?」


 ノクトの問いかけにアストライアは真っ直ぐ見つめ返し、その言葉に息を飲んだ。


『世界を破滅から守るためです』


 アストライアが話し出した事を聞いたスレイたちは、その全てをすぐに納得することも受け入れることも出来なかった。


 ⚔⚔⚔


 宿の外、正確には港の防波堤のような場所に腰を下ろしたスレイは星を見ていた。


『こんなところにいては風邪を引いてしまいますよ?』

「あなたこそ、あの使徒から取り戻した力を使いきっても知りませんよ」


 霊体のような姿で現れたアストライアはスレイの横に腰を下ろした。


「さっきの話し、本当なんですね」

『えぇ』

「そうか……地球はもう」


 スレイは先程のアストライアの話を思い出す。


『かつて、私ともう一人の神はある世界を管理していました……ですがある時、その神は世界を破壊し何もない無の世界にしてしまったのです』


 それを聞いたときスレイたちは一様に息を飲んでアストライアの話しに聞き入ってしまった。


『その世界には地球と呼ばれる星があり、長い歴史を紡いでいました』

『『───ッ!?』』


 地球がもうないそれを聞いてスレイとユフィは目の前が真っ暗になるように錯覚したが、その事をノクトに悟られないように必死にこらえた。


『私はなんとしてもこの世界を守りたい。どうか力を貸してください』


 それがアストライアの話だった。


「ノクトに神託を与えたの転生者であるボクとユフィを探すためですね?」

『えぇ。あなた方には私の声を届けることができませんからね』

「……なら、なんでこうして話せてるんですか?」

『今は力を取り戻し一時的ですが力を取り戻し半実体化してますからね。力を取り戻していなければ、そうですね……あなたの世界であった地縛霊などと言ったところでしょうか?』


 そういって笑うアストライアのことをスレイはまじまじと見る。

 輝くようなプラチナブロンドの髪に黄金の瞳、そして整った顔立ちに完璧と言っても過言でないほどのプロポーション、

 なるほど確かに神がかった容姿だと納得すると、アストライアがスレイの視線に気がついた。


『あらあら、見とれるのはいいですが、ユフィに叱られますよ?』

「それはご勘弁を……さて、真面目な話をしますが、なぜボクとミユだったんですか?」


 自分で言うのもなんだが、地球にいた頃から自分は特別なことは何もなかった。

 この世界では周りに恵まれ、どうにかこの世界で生きていけるだけの力を得ることが出来た。そんななんでもない自分たちがこの世界に送られた理由をスレイは知りたかった。


『理由はありません。ただ……あの世界が消える寸前、私は強く寄り添う二つの魂を見つけ保護することが出来た。それだけです』

「……それがボクとミユだった」


 アストライアが小さくうなずく。

 スレイはこの世界で目が覚める直前、誰かの声を聞いた気がしたが、今思い返してみればその声はこの女神の物だったのかもしれないと思った。


「アストライアさま、ボクはこの身体に入るために本当のスレイを殺したんですか?」

『いいえ、元々あなた方に与えた身体に魂はありませんでした』

「どうしてですか?」

『本来ならあなた方は病気で死ぬはずだったのです。そこに私はあなたとミユの魂を与えて生き返らせました』


 それを聞いたスレイは安堵の息をついた。

 今までずっとその事が気がかりだった。


 ──ボクは、スレイを殺した訳じゃなかったんだ


 本来いるべきであった本当のスレイを殺し与えられた生なのだとしたら、一生後悔しただろうがそれを聞いて長い間の胸のつっかえが取れた気がした。


「それを聞けて良かった。ボクは誰かの命を奪って生きてきた訳じゃないんだ」


 涙が出るほど嬉しかった。

 袖で無造作に涙をぬぐっているスレイにアストライアは優しく声を掛ける。


『あなたは優しいんですね』

「優しくなんてないよ、人を殺しても罪悪感が持てない」


 目元を拭いながらスレイはアストライアの方へと視線を向け、ずっと胸のうちに秘めていた言葉を告げた。


「生きていくためにはしかたない、なんていっちゃダメなんだろうけど、地球で生きてた頃なら絶対に後悔したことだってのに」

『ここは地球ではありません。ですがこれだけは言わせてもらいます。あなたは優しい、誰でもない人のために怒れる、闘えるそんな心の優しい人間なのです』

「…………ありがとうございます」


 神に誉められるとはなんともむず痒い思いがしたスレイは、頭をかきながら立ち上がった。


「さてと、やることも決まったし今日はもう寝ますかね」

『決まったとは、いったいなにが……?』


 アストライアは不思議そうにスレイのことを見ていると、ニヤリと笑って見せたスレイが答える。


「そりゃ、あなたに手を貸して、地球を消し去った神様をぶっ飛ばす!に、決まってるじゃないでしか?」


 そう、スレイは決めた。

 長いこと迷っていたことだったが、ようやく全ての想いが繋がった。


「ボクはこの世界が好きなんです。父さんや母さんに出会えた、ミーニャにリーシャみたいなかわいい妹たちに出会えた。おじさんやおばさんも出会えて、優しいルラ先生におっかなくて鬼畜な師匠、大切な友達も出来た」


 スレイは目を閉じながら今までに出会ってきた、心のそこから大切だと思える人々の顔を頭に浮かべていった。


「それに、ユフィとノクトと出会えたこの世界が大切なんです」

『スレイ……あなたは……』

「だから、ボクは戦いますよ。例えこの身が無くなろうとも、あなたに頂いた二度目のこの人生をかけて、神をぶっ飛ばす」


 アストライアに向けてそう宣言したスレイ……だったが直ぐに表情を崩し大きく落胆してみせた。


「まぁ、そんな大事を言う前に使徒をどうにかできるまで強くならないといけないので、前途多難ですけどね」


 神と戦う前に手も足も出なかった使徒をどうにかして倒すために、もっと力を付けなければならない。そう思っているとアストライアから想いもよらない言葉がかけられた。


『少なくとも、あの使徒でなければあなたは勝利していたと思いますよ』

「えっ、ウソですよね?」

『嘘ではありません。特に最後のあの一撃……何というのですかあの魔法』

「名称未定です」


 使い手までも魔法の名前を知らない一撃だ。


『なるほど、決まっていないのですね。ではそれは置いておくとして、あれの一撃であの使徒は確実に一度死にました』

「死んでいたって………あいつ、あの光の中を平然と歩いていましたよ」


 思い出しただけでもゾッとする光景にスレイの体が震える。人だけでなく並の魔物ならない骨まで残らないはずの超高温の光の柱の中をあの使徒は歩いていた。

 アレで死んでいるのなら、あの時のやつはなんだったのかとスレイが問いかけた。


『ですから、相手が悪かった。使徒には一つ特殊な力があるのです』

「力………まさか、あいつの力は強力な再生能力ですか?」

『惜しいですね。あの使徒の能力は純粋な力なのです』


 そう言われスレイはどこか納得してしまった。

 力とは言葉通りの意味だろう、圧倒的なまでのあの膂力に攻撃を全て防ぐ圧倒的な防御力、そしてスレイを上回るあのスピードにどんな攻撃を受けても癒してしまう回復力、その全てが使徒の能力だった。

 言われてしまえば納得の一言だった。


「力か、だからあのとき………」

『……スレイ?』

「あのときのアレがもし治癒力なら……いや、もし再生能力もあるのだとしたら………いや、でも、それなら……」


 顎に手を当てブツブツと呟き始めたスレイを見て、アストライアは自然と笑みがこぼれた。


『なにか思い付いたんですか?』

「もしかしたら……出来るのかは分からないけど……あの使徒に勝てるかもしれません」


 スレイが使徒との戦いに対する秘策を思い付いたのを見て、アストライアが小さく微笑んだ。


 その日からスレイとユフィによる、対使徒専用魔道具の開発にいそしんでいるのであった。

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